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かわいい暮らし
76歳にもなって、かわいらしい暮らしなんてと思うのだが、私の暮らしはとてもかわいい。
なんでかわいいかっていうと、別に、私は「かわいいおばあちゃん」ではないのだけど、「かわいいおばあちゃん」っていうのは、「若い人」に愛される、都合のいいおばあちゃんてことだけども、私は都合のいいおばあちゃんではない。
なのだが、私の持ち物はとてもかわいい。
私の家の食器はとてもかわいい。
そして毎週図書館に絵本を7冊借りに行って、毎晩絵本を読んでいる。
なんでかっていうと、それは同居人が、永遠のかわいいワールドの住人のほかろんだからである。
ほかろんは51歳の長女で、毎日、知的障害者の生活介護に通っている。
小さいときは偏食で、がりがりに痩せていたものだが、年齢が上がるにつれて、丈夫になり、てんかん発作も、薬でコントロールできていて、今や、「ちいかわ」ならぬ、「でかかわ」になった。
でかくて、それでいて、かわいいものが好き。
しかし、足のサイズは25cm。
「かわいいくつ」ありませんかと、言うがなかなかない。
身長は160cm。
「かわいいふく」ありませんかと言うがなかなかない。
しかし、母は探してくる。
できるだけかわいい服だとか、靴だとか、かばんだとか、ハンカチだとか。
本人はキティラーなので、フェリシモ通販の「いつもいっしょねキティちゃん」を毎月購入している。
そして、ほかろんは、福祉系のイベントでは、必ずフリーマーケットに行って、10円とか、100円とかで、かわいいものグッズを買う。
とくにボールペンが大好きなので、100円ショップに行くと、キャラクターのボールペンを買う。
そして何より、大好きなのが袋物。
薬を入れる袋。その袋を入れる袋。
連絡帳を入れる袋。その袋を入れる袋。
リュックの中は袋だらけ。
袋に入れると安心するのだろう。
アイリスオーヤマの大きな衣装箱に袋物が収まっている。
そうこうして、我が家には、かわいいものが溢れかえる。
ほかろん一人では使いこなせないかわいいもの。
そういうわけで、私も使うかわいいもの。
高齢者の介護認定調査の仕事についていたとき、調査の前に自己紹介して、キティちゃんのボールペンなど取り出すと、
「まあ、かわいい。」なんて言われてその場の緊張がなごんだり。
大学院や、専門校の講義のとき、花模様のかわいいノートや、「ハチミツとクローバー」のファイルを取り出すと、
「先生かわいい。」と言われたり。
そういうわけで、お弁当箱も、お弁当包もなにもかもがかわいいのであって。
そして、私も、まあ、かわいいものは嫌いではないし、少女漫画も好きだし、メルヘンも好きだし、というわけで、なんだか、親子でかわいいものに囲まれて過ごしている。
ほかろんのお古の服も着ている私は、高齢者らしからぬカラフルな装いなので、交通事故に合いにくいのではないかと思う。
歳をとると、地味な色合いの服装になりがちで、「黄昏」時には、ドライバーさん泣かせになってしまうことも多い。
かわいいワールドは、ますます、盛り上がっていきそうな勢い。
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