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曲芸少女、キテイちゃん。
毎朝の長女の儀式は、起床時の二人お化けではとどまらない。
着替えを終えて、2階から、パタパタ、どしどし降りてくると、始まるのが、ハローキティのぬいぐるみの曲芸である。
長女は寝るときに、部屋にたくさん物を持っていく。
時計、ファイテンのネックレス、明日着る服、靴下などなど。
その荷物一つ一つを袋に入れるので、袋もたくさん。
ああ、まるで、サンタさんのようだ。
たくさんの袋をどっしんっと置くと、ニカニカあやしげな笑いを浮かべて、曲芸に取り掛かる。
私はふざけて、
「怖いから見ないよ。」と後ろを向く。
まずキッチンのワゴンの上の食パンケースに、マイボトル(ハローキテイ柄)を置く。
その上に、バンビの大判ハンカチに包まれた、保冷剤を置く。
冬でも、枕カバーの下に大判の保冷剤を入れて眠るのだ。
頭が過活動で、熱を持つのだろうか。
寒いのに。
風邪ひかないからいいとしている。
保冷材の上に、一緒に寝ていたハローキティのぬいぐるみを置く。
しかし、これは無理な話で、ぬいぐるみもボトルも、ガラガラと落っこちる。
でも、たまあにだけど、ほんとにたまになんだけど、ほんの数秒、ぬいぐるみが乗っかることがある。
そうすると、拍手喝さい。
「やったあ、やったあ。」と大喜びする。
でもたいていの場合は、落っこちるから、私がぬいぐるみを拾い、ボトルを拾い、
「ああ、かわいそうに、かわいそうに。」と大げさに、ハローキティを抱きしめて幕となる。
毎日の過酷な曲芸の失敗により、ハローキティの耳は薄汚れてきた。
ばかばかしくもあり、悲しくもあり。
いつまで続くのだろうか。
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