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ジョン・アーヴィング原作の映画 サイダーハウス・ルール
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ラッセ・ハルストレム監督 1999年
ジョン・アーヴィングの小説は多く、映画化されているものも多い。
監督自ら映画に出演しているので、映画化は嫌いではないのだろう。
サイダーハウス・ルールのファーストシーン、孤児院に行くために降りる、小さな駅の駅員さんの役で出ている。
寒々とした雪の駅。
駅から山に登ると見えてくるのは、ラーチ医師の孤児院。
ホーマーは孤児院で育ち、闇で堕胎をしているラーチ医師の手伝いをしている。
孤児院には、時々、子供を引き取りたいという里親志願の夫婦が訪れる。
小さい子は、貰われていくことが多いのだが、大きくなってしまった子は、なかなか貰い手がない。
貰い手が付かない子どもたちは、傷つき落ち込む。
ホーマーも貰い手がないまま、大きくなった。
ラーチ医師は、夜寝る前に子どもたちにこう声かける。
「おやすみ。メイン州の王子たち、ニューイングランドの王たちよ。」
子どもたちはかわいくて、二人の看護師は頼もしい。
ラーチ医師は麻酔薬依存症である。
閉鎖された世界で成長したホーマーは世界が見てみたくなり、ある日堕胎に訪れたカップルの車に乗って、孤児院を出ていく。
そして住み込みで働くことになったリンゴ園。
労働者の宿舎の壁には、サイダーハウスのルールが貼ってある。
だけど、ここに来る季節労働者は字が読めない人が多いので、だれもルールを読んでいない。
親方の娘は、父親から性的虐待を受けており、妊娠してしまう。娘を助けるため、ホーマーはラーチ医師に持たされた医療器具と、ラーチ医師に教えられた医療技術で、堕胎を行い、娘を助け父親から解放する。
そして、ホーマーもリンゴ園を去る。
ホーマーを孤児院から連れ出してくれたカップルの男性は戦争で負傷し障害者となって帰国する。
画像は明るく、美しいが、これでもか、これでもかと不幸が押し寄せてくる。
これが、ジョン・アービングの世界なのである。
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ジョージ・ロイ・ヒル監督 1983年
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トニー・リチャードソン監督 1984年
ありえないでしょ。
と思うほどの不幸が、一つの家族に押し寄せるホテル・ニューハンプシャー。
不幸が続くのだけど、映画は明るく続き、主人公はひたすら生き抜いていく。
それも気負うのでなく、淡々と生きていく。
その感じがなんとも言えなく素晴らしい。
まさに人生が続いていくのだ。
サイダーハウスルールの最後は、ラーチ医師が死亡し、ホーマーが孤児院に戻り、ラーチ医師の跡を継ぐ。
ラーチ医師が巧みに偽造した医師免許を持って、高校すら行っていないホーマーは、産婦人科医となる。
実の父子ではないが、ラーチ医師とホーマーの父親と息子の映画でもある。
一方、リンゴ園の親方は、自分のおかした虐待により実の娘を失う。
家族には、幸せよりも不幸がたくさん押し寄せるものかもしれない。
度重なる不幸の行く末に、幸せが待っているのかもしれない。
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