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お隣の空き家 ジャスミン屋敷になる
それはいつだったか。
そう、もう、20年以上は前くらい。
テレビの旅番組で、モロッコのカスバの特集をしていた。
そして流れた一つのフレーズに心が止まった。
「ジャスミンの香りに溢れた街。」
ジャスミンの香り溢れる光景に、心惹かれた。
私もジャスミンの香り溢れる庭にしよう。
と思い立った。
そこで、鉢植えのジャスミンの花が終わりに近づいてきたので、庭に植えることにした。
場所は、台所口から出てすぐの、フェンスぎわ。
北側だけど、フェンスにジャスミンのつるが絡まって、いい感じになるんではないだろうか。
と思ったのだ。
あれから、20年。
ジャスミンはうちのフェンスに絡まりながら、ぐんぐん前進し、お隣の空き家に到着し、さらに、お隣のベランダの柱をずんずん上り詰め、お隣のベランダの柵を占拠したのだ。
だから、お隣のベランダには、ジャスミンの花が咲きこぼれ、いい香りを漂わせている。
私は、うちのフェンスに、ジャスミンが花を咲かせてくれたらいいと思ってたのに。
なのに、ジャスミンは、お隣の空き家をジャスミン屋敷にしてしまった。
まあ、よく考えれば、自分のうちから、よく見えるから、いいのかもしれない。
誰も住んでいないけど、ジャスミン屋敷。
ジャスミンの香り溢れて、夜中に妖精が踊りだすかもしれない。
いつか解体されるジャスミン屋敷。
私には、よくこういうことが起きる。
自分のために何かしようと思って努力すると、他の人を喜ばす結果になってしまったりすること。
今をよくしようと思ってたのに、ぐんぐん先に行ってしまったりすること。
ジャスミンの香りが嫌いな人がいたらごめんなさい。
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