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あいえすえすちゅうかちゅう

知的障害のある長女のほかろんさんは、字が読めない。
だから、すべての言葉は耳から覚える。
歌なども、歌詞を読めないから、聞いて覚える。

しかし、障害のある人によっては、音が置き換えられたりする場合がある。
それと、独自の言い回しになってしまう言葉もある。
家族であれば、ああ、そういうことを言っているのねと、察することもできるが、他人に伝える場合は、伝わりにくい場合がたくさんある。

面白いのが、アニメの「スマーフ」
本人「スマーフ」のことを言っているのだが、
「スノーマンておもしろいね。」と言う。
スノーマンはまあ、面白いっちゃ面白いが、「歌って踊る」グループである。
だから最初は、何が面白いのかとわからなかったのだが、
「あおいこびとのスノーマン」と言うので、やっと、ああ、「スマーフ」のことかとわかった。

だからうちでは、「スマーフ」は「スノーマン」である。
その「スノーマン」の「ラウール」のことを、ほかろんさんは「らるーふ」と呼ぶ。
もう何年間もそう呼んでいるから、うちでは、「ラウール」は「ラルーフ」だ。

まあそういうわけで、こういう言い方は数限りなくあって、私はちゃんと言っているんだけど、ほかろんさんは、あくまで自分の言い方をしている。

さて、先日、ほかろんさんがどうも歌を歌っているらしいので、聞いてみた。
「あいえすえす、ちゅうかちゅう。あいえすえす、ちゅうかちゅう。」
なんだか、呪文のような、宇宙船を呼び出しおまじないみたいなことを繰り返している。
本人機嫌よく歌っている。
何回も何回も繰り返して楽しそうだ。

私は考える。
「ちゅうかちゅう」ってなんだろう。
中華学校の中等部のことだろうか。
それとも、おいしい中華そばのことだろうか。




しかし、よく聞いてみると、メロデイがしっかりとしている。
聞いたことがあるメロディ。

あ、わかった。
「ISS通過中」の歌だ。
Eテレの「0655」や「2355」でやってる
「ISS通過中」の歌だ。
ISSは地球の周りをまわっているけど、肉眼でも見ることができるんだそうだ。
ISSつうかちゅう、ISSつうかちゅう。と夜空に光が動いて通過していく映像にのせて、静かに歌うあの歌だ。
ちゅうかちゅうは、通過中だった。

意味が分かったので、私も一緒に歌ってみた。
ISS通過中、ISS通過中。

「あいえすえすってなあに?」という質問をほかろんさんがしてきた。
ちょっと難しいけど頑張って説明した。
この前、「宇宙でピタゴラスイッチ」というのを放送していたから、あのピタゴラ装置を作っていたところだよ。」と言ってみた。
難しいことは言わないで、空の上の上の宇宙というところを、飛んでいる宇宙ステーションなのだと伝えた。
うーん、説明するのが難しい。
ごまかしは聞かない。
こうやって、ほかろんさんの語彙は増えていく。


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