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むずかしいのは心の筋トレ

降り続いた雨は、4年もたたずにやんだことだし。
長女ほかろんも、元気に生活介護の通所に行ったことだし。
冷房の効いた部屋で、スタジオドラゴンの最新ドラマを見たりして、私は何と幸せ者か。

スタジオドラゴンもいいけれど、本も読みます。
葉真中顕さんの最新作「鼓動」は、ぎりぎりのところまで食い込んだ
8050問題がテーマです。
私は高齢者介護の仕事をしていたころ、人口ピラミッドの図を見て、介護保険制度の仕組みを理解したうえで、介護保険制度は数年で破綻すると予測しました。

数学の専門家でもない私が、すぐに見抜いたのだから、専門家はとっくにわかっていたのでしょうね。
もうこれから先は、介護士になる人が減少しているのだから、歳を取ろうが、障害者になろうが、これまでのようなケアサービスは受けにくいと考えられます。
じゃあ、どうしようかといえば、行政に頼りっぱなしはしないで、自分で道を切り開いていく覚悟で生きていくことです。

葉真中顕さんの作品は、「絶叫」「ロストケア」などほとんど読んでいますが、一番好きなのは、「凍てつく太陽」です。
「凍てつく太陽」は「ゴールデンカムイ」と被る部分のある明治時代の北海道が舞台で、アイヌの文化と、北海道開拓の歴史みたいな、壮大な作品です。

何でも書ける作者さんですが、「ロストケア」など、今この国で一番問題となっていることを、書斎からではなく、現場の立場から、現実を書いているところがすごいのです。

実は私、20年ほど前、特養で働いていたとき、寝たきりで発語もなく、胃瘻栄養の人が手厚い介護を受けているのを見て、うらやましくも、複雑な気持ちになりました。(手厚いケアを受けられるのはいいことです)

なにがって、私の長女のような「障害のある子どもや、若い人たち」が、その高齢者のような、それほどまでの手厚いケアを受けることができず、それも国家予算だとか、障害者差別だとかに阻まれて、未来のない暮らしを余儀なくされていることに。
そして、高齢者の家族は、経済的にも安定した中高年で、社会的立場もある人が多く、社会への発言権があることに。
そして何より、誰もが高齢者になるのだし、年上の人を尊重しようと、人権が守られていることに。
それに引き換え、障害者には人権も尊厳も、言葉だけしか与えられていないことに。(実態ではなく)
うらやましかったんですね。高齢者>障害者。福祉の格差です。

ところが、ここへ来て一気に、介護士の減少と高齢者の増加が加速して、もはや20年前のような高齢者介護は、期待できなくなりました。
高齢者の子ども世代も、介護離職や非正規労働など厳しい状況になりつつあります。
で、高齢者も障害者ケアと同じくらいの危機になっているはずなんですが、割とみんなおとなしい。
大丈夫なのかしら。(障害者の母は、厳しく発言し行動するので、おとなしくないから嫌がられる)

っていう時に、「葉真中顕さん」です。
「鼓動」は高齢者と引きこもり、母と子、ホームレス、などなど、今の世の中の様々な問題をからめとって、一つ一つのエピソードが、次々につながっていきます。
私と同じ団塊世代と、団塊ジュニア。
多摩川を挟んだ、多摩市と府中市。
わりと普通の東京郊外。一見平和な静かな町。
そこらじゅうで起きている、そしてこれからも、もっともっと起きるであろう数々の出来事。

こういう世の中ですから、自分の免疫力を高め、心の筋トレをして、メンタルを保って、もう何が起きたって、私は私で生きていく。
流されず、ぶれない自分を保ちます。
弱い柳の木のように。
踏まれても蹴られても、野に咲く白い花のように。
私とほかろんは永遠のビューティーペアです。

それにしたって、心の筋トレは難しいのです。

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ecco
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