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ECサイトが陥りがちな「間違いだらけのアクセス解析」

前回の記事ではGA4(Googleアナリティクス4)について取り上げましたが、今回は逆の視点として、
「アクセス解析のデータを見すぎることで、ネットショップにとって逆効果になってしまうこともあるよ!」
という事例も、お伝えしておきたいな、と思います。

実際これまでもいろいろなショップさんを見てきて、このパターンに陥ってしまうケースは、とてもとても!よくよく!あったからなのです。

例えるなら「デイトレーダーでもないのに、毎日株価チャートを見て、一喜一憂してしまう」というのに似ているかもしれません。

売れているショップさんは、このあたりの「データとの付き合い方」がとても上手いんですよね。

それでは実際、
どのような間違いをしてしまうのでしょうか?
どこを改善すれば良いのでしょうか?

少し事例を見てみましょう。


「離脱率」「コンバージョン率」を気にしすぎ。

「アクセス解析のデータを読み間違ってしまうショップさん」のほとんどが、このパターンです。

アクセス解析をやりだすと、
最初はページビューなどのアクセス数が伸びてくることに喜びを感じてどんどんデータを見てしまいます。

そして、次に気になってくるのが「離脱率」や「コンバージョン率」(ECサイトでいうと購入率)になってくるでしょう。

「なぜ、すぐにページを閉じられてしまうんだろう?」
「なぜ、購入してくれないんだろう?」

ここまでは良いのですが、その原因を読み間違えて、
「サイトの作りが悪いのでは?」
「ボタンが目立っていないのでは?」
「入力フォームが使いづらいのでは?」
といったように、細かいところばかりが気になってしまいがちです。

その結果、
「訪問者を逃がしてはならない!」
「ページに来たら早く購入させねば!」
といった強迫観念に変わり、過剰に売り煽ったりしがちです。

セール!セール!ワンクリック!カウントダウン!
やってませんか?

あまりやりすぎると、
一時的に売れたとしてもブランディング性や信頼感、リピーター顧客の獲得、本来得れるはずだった利益率などを犠牲にしてしまいます。


実際のところ、今やECサイトの作りなんてどのサイトも同じですし、お客さんもネットショッピングの操作には慣れています。

商品ページ → カートボタン → 住所やメールアドレスを入力 → クレジットカード番号の入力 → 確認・完了!

僕のような制作者が言うのもなんですが、
作りなんて、どこもこんな感じですよね。


10年前ならまだしも、今のサイトでは、

  • 操作方法が分からない

  • 入力フォームが分かりづらい

  • ページの遷移数が長い

  • カートボタンの色が悪い

こういったことが根本的な問題になっているケースは、ほぼ無いかと思います。
(ですが、たまにごく一部のユーザーからそんな意見もクレームとして届いてしまうので、さらに過剰に反応してしまいがち・・・)

では、「サイトの作り」が本質的な問題でないのだとしたら、いったい何が問題なのでしょう?


顧客と売り手の"ミスコミュニケーション"

いろんなショップさんの成功や失敗を見てきた結果、
離脱の要因の多くは「顧客が求めているもの」と「売り手が伝えていること」がアンマッチしている。
ということに尽きました。

ですので、単純に顧客の知りたいこと、見たいもの、買いたいものを、丁寧にコンテンツとしていくだけで、閲覧時間や離脱率は大きく向上していったのです。

コンテンツ=コミュニケーション
だったのですね。
僕自身、これがようやく理解できるようになってきました。


他にも、サイトに来た時点で、ミスコミュニケーションとなっているケースもあります。


離脱率:集客方法から見直してみる

たとえばサイト離脱について考えてみましょう。

商品ページにはアクセスされているけど、すぐに離脱してしまう場合は、もしかすると「売っている商品にまったく興味のない人」からアクセスされてしまっているのかもしれません。

たとえば「広告の見せ方と、実際の商品とがアンマッチ」していれば、当然すぐに離脱してしまいます。

極端な例ですが、
「大人もハマるパズルゲーム」
という広告に興味を持った大学生がクリック。

その先の商品ページが、

「2~3歳児向けの知育玩具」であったとすると、
さすがに違うわー!ってなりますよね。

ここまでではないにしろ、実際にページを見てみると
「思ってたんと違う・・・」
という状態になってしまうとダメですよね。

同じように、集客経路となっている検索キーワードと実際の商品がミスマッチしていたり、
SNSのユーザー属性が違っていたり、といったことはよくあります。


あるいは、そもそも商品ページじたいが「きちんと読み込むほど、詳しく商品說明がされていない」のかもしれません。
離脱率が高く、サイトやページの滞在時間が短い場合は、この傾向にあるかと思います。

そもそも読むものがなければ、
そりゃすぐページを閉じますよね。

Amazonや楽天市場で販売する場合だと、あまり説明がなくても買ってもらえるかもしれませんが、
自社サイトを運営する場合には丁寧な説明や表現がされているかどうかで、結果は大きく違ってきます。


以前の記事にも書きましたが、
ECサイトは自動販売機ではありません。

  • その商品の何が良いのか?

  • どれくらいの大きさなのか?

  • どんな素材なのか?

  • 使い方は?

  • 耐久性は?

  • アフターケアは?

  • いつ、どのように商品が配送されるのか?

など、お客さんを買う気にさせる、買いたくなるような
店員さんの役割こそがECサイトだと思っていただくと良いのではないでしょうか。

これらが言葉ではなく、
視覚的に伝わるとよりスマートですね。


コンバージョン率:悲観せずに丁寧な後押しを。

上記の離脱率とも関わりますが、
「サイト滞在時間は長いのに購入に至らない」
「カートに入れているのに購入に至らない」
というケースもよくある事例です。

これらは一見、ネガティブに見れば悪い数字に見えるかもしれませんが、ポジティブに見れば「ユーザーはその商品が気になっている」という状態とも言えます。

  • 気になっているけど、価格で迷っている。

  • 気になっているけど、まだ決めかねている。

  • 気になっているけど、不安点がある。

こんな状態かと思います。

もし価格で迷っているのであれば、もしかすると
「値決めが上手く行っている」ことの裏返しかもしれません。

なぜなら、
顧客にとってべらぼうに高すぎて手が出せない金額なら、とっととあきらめてすぐにページは閉じられているでしょうし、

逆に、顧客にとってすぐ買える金額なら、
離脱せすにさっさと買っていることでしょう。

ということは、
「迷ってしまうギリギリの値決め」
「利益率が高くなる絶妙な値決め」
ができているとも言えるのかもしれませんよね。

その後にご利用ガイドのページを見られていたら、
購入意欲はがかなり高いということです。


また、カートに入れたまま購入しない状態だと、
単純にカートを「お気に入りリスト」の代わりに使っているだけなのかもしれません。

そうだとすれば、

  • ユーザーの事例を紹介する

  • 期間限定クーポンを発行する

  • 在庫わずかの状態になる

など、「あとひと押しの理由」があれば購入に至るかもしれません。

そっと背中を押してあげましょう。


アクセス解析には、想像力が必要。

こんなふうに、アクセス解析のデータというのは、一見無機質なただの数字に見えてしまいがちなのですが、やはりその向こうには、ひとりひとりの「人」がいます。

だからこそ、
アクセス解析を行う時には、ユーザーのことを想像する気持ちがとても大切になってきますし、
「そのページが何回見られたか?」よりも、
「どういった経路をたどり、どういったアクションが行われているか?」
というストーリーで捉える(カスタマージャーニーと言われたりします)ほうが重要だったりします。


時には、ユーザーの気持ちになって、

  • 広告や検索のようなサイトを訪れる前の段階からアクセスしてみる。

  • お気に入りに登録してみる。

  • カートに入れて注文してみる。

  • 実際に商品が届けてもらって、箱を開けてみる。

  • 実際に商品を使ってみる。

といったように、ご自身で試してみるのも、すごく良いかと思います。


その際にはぜひ、
「何も予備知識のない初回ユーザー」になりきってみたり、
「1回買った人が、なんらかのきっかけで再購入を検討している状態」をシミュレートしてみたり、
「頻繁にサイトチェックをしているヘビーユーザー」を想定してみたりしてみてください。

できるだけまっさらな気持ちで、
ユーザー目線・お客さん目線になってサイトを触ってみると、また違ったものが見えてくるものかと思います。


アクセス解析は、仮説と検証のワンセットで。

また、何か特殊なイベントがあった時などは、アクセス解析のベストタイミングだと言えます。

  • 新商品が発売された時

  • 新広告を出した時

  • バナーを変えた時

  • ニュースリリースを出した時

  • メルマガやLINEを送信した時

  • メディアやSNSで紹介された時

などなど、ショップ側からアクションを行った後にはアクセス解析のチャンスです。

そういった時にはみなさんも、

  • その前後でデータがどう変わったか?

  • 結果、認知度や売上に繋がったか?

を解析されていると思いますが、
その時に大事なのは、まず解析前に「仮説」を立てることです。


  • おそらくアクセス数はこのくらい上がっているんpではないか?

  • 最初にアクセスされているのはこのページではないか?

  • 以前よりもこのページが見られるようになったのではないか?

  • 初回客が増えたのではないか?

  • 離脱する場合、このページまでは見られているのではないか?

などなど、あらかじめ仮説を立ててからアナリティクスのデータを見てみると、思ったより反応がなかったとか、想定とは別のページが読み込まれているとか、いろんなことに気づくはずです。


最強のテコ入れとは?

ここまでいくつかの間違いケースや解決法を見てきましたが、元も子もないことを言うと、

極端な話、ECサイトなんて
「とにかく欲しい!!!」
と強く思わせることができれば良いわけです。

それこそがシンプルかつ最強の解決策です。

そしてそれは、

  • 商品の画像

  • 商品の說明文

  • 商品やブランドの動画

  • レビュー

  • 広告、紹介

といったコンテンツでしか実現できません。

SEOの世界でもGoogleが公式に言っていることですが、結局はインターネット上での最強テクニックとは「コンテンツ・イズ・キング」なのです。


極端なことを言うと、
どれだけサイトのデザインが悪かろうが、
使い勝手が悪かろうが、
決済方法の種類が少なかろうが、
電話注文しか受け付けていなかろうが、

「どうしても欲しい!」とユーザーが思えば、
どれだけ不便でも購入されてしまいます。

実際に、そういうサイトはいくらでもあって、
我々からしても衝撃を受けることが多々あります。

イメージしやすく極端な例を出してしまうと、
たとえば、地元の隠れた名店がなにかの拍子にTVでたまたま紹介されたとしたら、

その場合は、みんなが「欲しい!行きたい!食べたい!」となり、
ネットショップをやっていなくても、たとえ電話がつながらなくても、問い合わせが殺到したりすることってありますよね。


それと同じで、きちんとブランディングできているショップは売り急ぐ必要もありません。

代引きしか対応していなくても、受注生産しか受け付けていなくても、そのように売れているショップはたくさんあるのです。

不便なことと、買う買わない、
ということは、
必ずしも関連しないのです。


すべては、「欲しい!!」と思わせれるかどうか。

ユーザーの「欲しい」の状態を知る手がかりとして、
アクセス解析はきっと、強力なツールになってくれるはずです。


まとめ

Googleアナリティクスは、ECサイト運営において非常に重要なツールです。しかし、データを読み間違えてしまうと、ビジネスにマイナスの影響を与えることにもなります。

特に、短期の指標にばかり囚われすぎると、
以下のようなリスクがあることを理解しておく必要があります。

  • 売り煽りがち

  • 薄利多売になりがち

  • ブランディング忘れがち

Googleアナリティクスのデータを有効に活用しながらも、長期的な視点を持って、ビジネスの成長に繋がる戦略を展開していくことが重要です。

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