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加齢について

加齢に伴う組織機能不全について

 加齢は私たちの体に様々な変化をもたらします。この記事では、年齢を重ねるにつれて体の組織や器官の機能が徐々に低下していく現象、いわゆる「加齢に伴う組織機能不全」について解説します。

 まず、細胞レベルでの変化から見ていきましょう。加齢に伴い、テロメアの短縮により細胞分裂能力が低下します。また、ミトコンドリアの機能低下により活性酸素種(ROS)の産生が増加し、リソソーム活性の変化により細胞内老廃物の蓄積が起こります。

 組織幹細胞の機能低下も重要な要素です。これにより、組織の再生・修復能力が低下します。例えば、皮膚では表皮幹細胞の機能低下により皮膚の再生能力が低下することが知られています。

 加齢に伴い、低レベルの慢性炎症状態(インフラメイジング)が誘導されることも特徴的です。これにより様々な組織で炎症性サイトカインの産生が増加します。

 代謝機能の変化も見られます。脂肪細胞では、オートファジーの過剰亢進により機能低下が起こり、これが原因で生活習慣病のリスクが高まります。

 組織構造の変化も顕著です。皮膚では、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生低下により、弾力性が失われます。また、筋肉量や骨密度の低下も起こります。

 最後に、免疫機能の低下も重要な点です。T細胞やB細胞の機能低下により、感染症や癌に対する抵抗力が弱まります。

 これらの変化は複合的に作用し、組織の恒常性維持能力を低下させ、様々な加齢関連疾患のリスクを高めます。しかし、適切な生活習慣や医学的介入により、ある程度の機能低下は予防または遅延させることができる可能性があります。

加齢に伴う変化を理解し、適切な対策を講じることで、より健康的な高齢期を過ごすことができるでしょう。

https://www.cellsignal.jp/science-resources/overview-of-cellular-senescence
真鍋一郎. "慢性炎症と加齢関連疾患." 日本老年医学会雑誌 54.2 (2017): 105-113.

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