2023年のマンガまとめ!
・はじめに
あっという間に2023年も終わりに。
年内の新刊はほぼ発売されたと思うので今年のマンガに思うコトをまとめてみた!!
※ タイトル絵はAI、Fooocus 2.1でStable Diffusion(SDXL)に描いてもらった車と女の子。どんどん日本のマンガっぽい絵を出してるのは脅威。すぐに将棋ソフトのように「元」の概念が無くなる時代が来てしまうのかも。まあ、それをつかいこなすのも、まだもう少しは人間だが……
・「令和のダラさん」優勝!
「令和のダラさん」が2023年個人的に一番面白かった気がする。内容については前回の記事にまとめたばかりだが、とにかく和風妖怪ホラーと現代日常マンガを綺麗に混ぜており、特にギャグは個人的にゴリゴリとツボにハマるものばかりだった。
過去のガチホラーでは陰惨な話が綴られるのに、日常パートではコメディの主役ど真ん中を走る妖怪のダラさん、無敵の設定と美貌と変顔を与えられた三十木谷薫、そして復活に奔走する往年の傑作、トムとジェリーのトムを思い起こす?谷跨斑(やまたぎまだら)。
もの凄いマンガである。作者と編集者にはノーブレーキで進んで欲しい。とにかく、お願いだから読んでみて!!
・解体屋ゲン20年、1000話、100巻突破!
週刊漫画TIMESに連載されている、お仕事マンガの頂点「解体屋ゲン」が大台の20年、1000話、100巻を突破。近々はコロナ禍に潰される市井の人々を描き、海外の大規模ビル爆破を描き、一時は遠ざかっていた日本国内での爆破を繁華街での爆破を描く、時事マンガの頂点としても輝いている。
実直に建設業の問題を描いていた中で、今年は現実世界でビルやトンネルの問題隠し・改ざん事件が続き、もはや預言書のような立ち位置になった感もある。まっとうな建設業を目指して描いているのに、ゲンの中では通り過ぎた後のハズの事案が復活している。
外国人技能実習制度も解体屋ゲンの骨のひとつとしてずっと描かれていたが、現実の2023年は良くも悪くもターニングポイントとなり「先進国から落ちぶれる日本」を認めない人々の問題となりつつある。
そして迎える2024年問題。建築業や運送業を中心にいままで虐げられてきたブルーカラーの仕事環境を整えるハズの手立てが、タイミングと現実を見失って最悪の人手不足状態に突入する。すでにバスなどでインフラ維持の限界突破とそれによる消失が発生しているのだ。
2023年の最後の発売号、2024年1/5・12合併号ではきたる2024年問題に不安を抱かえつつも、立ち向かおうとするゲンが描かれた。ゲンがポリアンナ症候群になってもおかしくない状況だが、きっと2024年問題に真正面から立ち向かうゲンたちが描かれるコトを期待したい。
あと、コロナ禍後の世界(と言っても5類になっただけでほぼ何も変わっていないのだが)を描くことと、コメディリリーフの映画やゲームシリーズ……いや、現状の実質ヒロインである変顔スペシャリスト野島秀美の活躍を楽しみに待つのである。
・メダリストが強すぎる件
第68回小学館漫画賞の一般向け部門を獲った「メダリスト」。作者が絶対にアニメ化するという信念で描いたそれは、作者の願いの声優でアニメ化されるコトとなった。
現在、スポ根でガシガシ進むアニメは大手週刊マンガ誌のわずか。現状現時点で異世界モノに圧されているスポ根アニメの救世主となるかもしれないのだ。
圧巻の構成力と画力で競技を描き切るメダリストはアニメ化しやすいマンガと言える。ただし、少しでも手を抜くとマンガとの力量差を追求されるコトになるのでアニメスタッフには覚悟して臨んで欲しい。
マンガ自体は本当にゴリゴリと進んでいる。競技だけでなく精神描写も増加するライバルたちも、もちろん真のライバルの圧倒的な強さもしっかりと描いているのにテンポがまるで落ちないまま次のステージのジュニア編に突入した。息する暇も与えないではなく、しっかりと抑揚の付いたままでテンポが落ちていない。とにかくどこかでグダる昨今のスポーツマンガとは明らかにレベルが違うのだ。恐るべし……
・ダンジョン飯完結!
剣と魔法の世界がニガ手である。どうもご都合主義に進むマンガが多く、流行っているのは読んでいてもどこか心が惹かれなかったのだ。
「ダンジョン飯」についても最初はそう思っていた。なので多々勧められていたのに4巻までは手にしてなかったのだ。
ただ、そこでの変化の噂を聞いてやっと読みだした。クソ面白い、なんだコレ!!
というワケでダンジョン飯は剣と魔法の世界を面白いと思わせてくれた作品なのである。ダンジョンでの飯と主人公の食欲を描き続けて、ついには食欲が……。
秀逸なのは中盤を過ぎてからの悪魔の描き方だ。それまで描いたダンジョン設定を巧みに使い、人が悪魔と呼ぶものをここまで露わに正確に定義・表現したのは素晴らしい。そしてその悪魔が悪魔のままコメディリリーフにもなっている。
主人公には悪いが、きっちりと満腹(正確には健康に気を使っての満腹)での完結は素晴らしかった。完結の13・14巻の同時発売、そしてその後には年明けすぐにアニメ開始である。
やるなぁハルタ編集部……
・コミカライズのオリジナリティで輝きだした?日本国召喚
日本が全部異世界に転移したら、異世界の国に狙われて外交官はとても大変、自衛隊は無双!
「日本国召喚」を簡単にまとめるとそんな話である(外交官の出番は多いが実際は群像劇であり、敵味方問わずの視点で描かれる)。小説になろうで人気となり、小説6巻(中断?)と外伝小説2巻が出版されている。
剣と魔法の国と自衛隊の戦いだが(のちにはもっと機械化された国にも狙われるが)、前述したとおりに敵側の視点や戦力もしっかり書かれているので、なろうの中でも読み応えはある小説であった。
そんな中で描かれるコミカライズ版は朴訥な形で描かれていた。自衛隊や日本の建築等が出ると無駄にキラキラ光る表現、敵がやられてもキラキラ光るが……
だが巻が進むうちにギャグ分が多くなる。朴訥に感じる絵はそのままだが、敵の無線機がどっかで見た鍵盤とモニターのついたアレになったり(残念だが音声通話の機能しかないが)、移動の表現が謎の動きになったり、決め絵のポーズもどっかで見た姿になったり、つくづく笑ってしまう謎作品となったのである。いや、もちろん本筋はきっちりと描いているのだが。
小説の時点でも敵のポンコツ分は滲み出ているのだけど、敵キャラはその中でそれなりに真面目に動いていたのだが、最近のコミカライズのやりたい放題はいい方向でポンコツ分を味変の調味料として使えている。個人的にツボなマンガである。
・めんつゆひとり飯と放課後ていぼう日誌の実写化と……
ゆるキャン△の実写ドラマの成功の影響もあるのかわからないが、手抜き料理のバイブルとなりつつある「めんつゆひとり飯」、釣りを楽しみ美味しく食べる女子高生を描いた「放課後ていぼう日誌」が実写ドラマとなった。
マンガの実写化が大半が失敗となる中で、双方とも中々しっかりといいドラマ化になった。
めんつゆひとり飯は元モーニング娘の鞘師里保さんを主役としたが、他の出演者を含めてとても配役が素晴らしく、唯一設定変更された(年齢を大幅に上げた)社長もふせえり氏の怪演で問題なく受け入れられた。「心の十越さん」「心の面堂さん」の表現も良い。
BS松竹東急とDMMでの放送・配信というニッチな展開であったが、配役と演技、そしてシナリオも映像もとても良かった。映像、特にライティングの巧みさと後半のやりたい放題なカメラワークは見事と言える出来で、コンパクトに作られているが印象に残る作品となった。おかげでめんつゆが北海道人の味「めんみ」だけでなく、ドラマとタイアップしていた「にんべん つゆの素ゴールド」も使うようになった(笑)
現在はAmazon prime videoの無料コンテンツとなって視聴しやすくなったので是非見て欲しい。
「放課後ていぼう日誌」はドコモが続けていたdTVの後継となったLeminoのオープニングオリジナルドラマとして製作された。
既に高質のアニメも作られているが、これも主役を演じた莉子さんをはじめ、なかなかの配役であり、安心して観られる作品となった。マンガ・アニメよりも魚の生々しさと美味しさが伝わるいいドラマとなった。
あと、たこひげやの店長役の赤星昇一郎さんが完璧だった。もう出た瞬間に笑いと感動で泣いたから。
撮影場所が千葉の勝浦で、原作のモデルである熊本県芦北町に近づけるためか、カラーグレーディングでやや独特の絵作りになっているが、馴染めば問題ない。
部長の方言が消えたのは残念だが、部長の裸足は(水着や体操服と違い)ナーフされるコトなくしっかりと撮ってあった。先日のボクシング、井上尚弥選手の試合でLeminoに入会したり興味の出た方にはぜひ見て欲しい。
実写ドラマ化では「波よ聞いてくれ」という超強力作品もあったのだが、舞台が札幌から千葉の架空の町に変更され「ギギギ」と悔しがるしかなかった。2023年社会問題となった熊、羆との戦いと胆振東部地震によるブラックアウトの対応なくしては「波よ聞いてくれ」ではないのだ、原作もアニメも好きな道民、札幌民としては。
・決戦は金曜日、そしてジャンプ+やばし
今年のWeb連載の漫画、個人的には金曜日が待ち遠しかった。もちろんCOMIC FUZの月額プランで天から落ちて来る週刊漫画TIMSの解体屋ゲンをはじめとした連載陣もあるが、COMIC FUZの絶対エースである「ゆるキャン△」、Mangacrossでガルパンリボンの騎士などのミリタリー系の野上武志先生が描く休日散策マンガの「はるかリセット」があった。日々疲れた生活を送っている人には是非、目つき悪いお姉さんこと小説家の春河童の休日を読んでみて欲しい。読むだけで少し身体が整うかも。
そんな中で今年の金曜日には月イチと隔週の2つの素晴らしいマンガが目に留まった。双方ともWebアクションに連載の「われわれは地球人だ!」と「「たま」という船に乗っていた」である。
「われわれは地球人だ!」は今年「こまけえコトはいいんだよ!肩ぐるしくない素敵なSFマンガ4作のご紹介」と題した記事の1作として取り上げたが、女子高校生3人が巨大ショッピングセンターで宇宙を旅するマンガである。
惜しくも12月15日に完結を迎えたが、すこしふしぎで実は王道の素晴らしいSFを読ませてくれた。
「「たま」という船に乗っていた」は三宅裕司のいかすバンド天国ことイカ天にて、とても独特だが物凄い心に残る歌で一気にメジャーとなったバンド「たま」のパーカッション奏者である石川浩司氏の自伝小説を原田高夕己先生がまんが道的にコミカライズしているものである。
今年度は「たま」のイカ天からメンバーの別れまでが描かれているが、本当に当時の音楽シーンを好きな音楽やっていただけで変えた「たま」の面白さと若者の冒険が素晴らしく描かれている。
さて、他の曜日というかWebマンガではやはりジャンプ+の強烈な攻撃が凄い。特にアニメ化。「推しの子」のヒット、「SPY×FAMILY」の放送と映画化が続く中、来期も「姫様拷問の時間です」「道産子ギャルはなまらめんこい」が、その後も「怪獣8号」に「株式会社マジルミエ」、そして圧倒的ドライヴ感が素晴らしい「ダンダダン」。息もつかせないラインナップである。恐るべし。
そして「ラーメン赤猫」である。担当のつかないインディーズ連載から通常連載、そしてツダケンことトップ声優のひとり津田健次郎を擁してのアニメ化という成り上がり。
どこか推しのアイドルが武道館目指して進んでいく様を見るような感じを抱かせるのはあざとく思えそうだが、猫のラーメン屋というファンタジーをどことなく朴訥な絵と、しっかりと作り込ませた世界観で魅せるそれは、マンガの素晴らしさを体感させてくれるのである。
・さらばミズグチ先生!
今年も沢山のマンガ家が無くなった。松本零士先生・聖悠紀先生・寺沢武一先生・土田よしこ先生・中条比紗也先生・佐野菜見先生などなど、多くの方が旅立ってしまった。
そんな中で長年EYE-COMや週刊アスキーでルポマンガ「カオスだもんね!」を描かれた水口幸広先生も旅立たれてしまった。若きパソコンオタクたちのバイブルの紙面の中、そんなオタクの趣味とともに世にある他の遊びや仕事などを編集ふたり(たまに増えたり減ったり)と一緒に体験取材(一部遊び)して伝え続けてくれたミズグチ先生。
56歳という若さで旅立たれたミズグチ先生だけど、一緒に苦楽を共にした編集ふたり、アカザー氏・シャクライ氏が単行本未収録の作品を「続 カオスだもんね!PLUS」として電子書籍で現在発行してくれている。パソコン、いやもうマイコン時代の皆様もあの頃のままで今!なカオスを読んで欲しい。現在0~4号まで発売中。
・おわりに
とにかく「令和のダラさん」を知るのが遅かったと歯ぎしりした2023年、悔しい。なかなかアンテナを磨くのは難しい。
既にWebマンガの形が固定されてきた2023年であるが。一部の出版社はサイトを整理しきれずに使いにくいままである。大手出版社がブランドの維持に努めたいのはわかるが、月額のプランがブランド別だったり、とても使いにくいCMシステムを使ったりしていると、電子専門の会社に喰われるだけな気がする。
2024年は日本没落の真の始まりになる年になる可能性がある。2024年問題だけでなく、他国にアドバンテージを持っていたマンガ・アニメのコンテンツすらリードを失い始めている。もう日本は全ての面で先進国から堕ちていくのだ。どうしよう……
まだ個の力は強い。せめてマンガというコンテンツだけでも日本がリード出来るように出版・編集者は上手くリードして欲しい。もちろん日本ガーばかりでなく、マンガが好きな海外の漫画家もしっかり育てて、読者が楽しめるようにだ。
近々で一番心を掴まれたWebマンガがFEEL Webの「走り出す花びら」である。マンガの為に日本に来た中国人留学生の話。国のゴタゴタと個人は関係ない。できれば日本は彼らに選んで来てもらえる国であって欲しい。
解体屋ゲンで描かれているように他の分野の外国人労働者問題は八方塞がりなのだから。
「走り出す花びら」はあと13日で公開を終えるようなので、是非一読して頂きたい。
あと、お願いだからサンデーうえぶりは「ジャイアントお嬢様」をアニメ化して。もう巨大美少女ヒロインの未来の為にどうしても必要な仕事だからな!!
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