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今一番の巨大美少女ヒロインの生活が尊い!「ちっちゃい島のでっかいガール」

・はじめに


巨大美少女ヒロインについて近々に記事を書いたが、なかなか多くの人に読まれているようだ。

やはり巨大美少女ヒロインの認知は着実に進行しているようなのだ!

さて、そんな中で今回は巨大美少女の日常に特化した素晴らしい作品について紹介したい。

・タイトル


「ちっちゃい島のでっかいガール」(あおいましろう・講談社)


・あらすじ


「中学二年生の春、都合により読者モデルへの夢を捨てて、都会から母と小さな島の祖父の家に住むコトになった三輪しげる(女子)。


そんなしげるの前に現れたのは同い年の女の子、藤田みくるだった。

ブルーシートを纏ったみくるは身長15mOVERの巨人。物おじしないしげるはすぐにみくると仲良くなったが、軽はずみでみくるの動画を投稿してしまい、TV取材が来るハメに。

みくるの腕力ともうひとりの同級生である相川りんの機転と技術で取材や動画騒ぎは一時的には治まった。三年前に両親を事故で亡くしたみくるは島の秘密として隠され、島民たちに大事に育てられていたのである。

制服やジャージの仕立て直しが終わり、ブルーシート着用生活も終わったが、巨大なみくるは食事の用意もノートへの記述も、通常サイズの本を開くコトすら出来ない。トイレも無い。夜は倉庫で足を曲げて寝るみくる。

高校の無い島での三人一緒の生活はあと僅か。若い男だけを求めて島に赴任してきたが、教育者としては熱心な担任教師の一色、町会長であるしげるの祖父をはじめとした島の人々の援助でみくる達は出来る限りの普通の女子中学生生活を目指す。

みくるという島の秘密は隠しきれるのか、そして三人娘の進路は、将来はどうなるのか……」


・所感


巨大美少女ヒロイン設定の強味であるハズの、巨大な体での格闘や身長差を克服する恋愛成分を排除して、ただただ中学生らしい生活を求める日常マンガである。

もちろん島の秘密としての問題も背負っており、その設定は後にみくるの生活を激動させるのだが、そのほとんどは後半に集中させている。それよりもみくるの日常、日常への憧れを優先した作りに好感が持てるマンガなのだ。

都会少女で活動的(すぎ)なしげる。島の生活に馴染み過ぎてジャージ生活を送るややオタクのりん。巨大な体のコンプレックスを持ちつつも真っすぐ育っているみくる。島の住民を含めキャラクターの配置はばっちりだ。

絵はしっかりとみくるのサイズを伝えて読みやすい。背景もしっかり書き込まれ、島の配置や構図も考えられており、巨大美少女の存在感を上手く伝えられている。

巨人と小さな住民の差を一番伝えるアングルの模索と背景の描き込み。一部の巨大美少女マンガではここで手を抜いているものもあるのだが、それでは巨大にした意味が無くなってしまうのだが、この作品はそこがしっかりと丁寧に描かれている。

女の子たちも可愛く描けており、三人娘それぞれのキャラも絵にしっかり現れている。ちゃんと教師の一色というメガネキャラを配置しているのも個人的には好ましい。

後半、みくるという島の秘密は消失する。

だが、それと同時に実は世界で隠れていたみくると同じ悩みをもつ人々と世界が少しだけ変わる。援助が必要なマイノリティーの解放を伝えながら、しかし、作内ではそれよりも大切な大きな三人娘の未来のちょっと変わった日常を描いて物語は終わる。

とても爽やかな読後感を味わえる。


序盤のブルーシートへのこだわり、中学女子ならではの美への欲望など巨大美少女を使ったコメディである。でもそこを一歩踏み出した所で巨大美少女マンガのスタンダードとなった感がある、良いマンガなのだ。


・おわりに


連載はコミックDAYS。31話にて完結。単行本 既刊3巻(完結)

WEBマンガサイトから生まれた良作である。

ちえりの恋は8mやジャイアントお嬢様の存在も含め、巨大美少女ヒロインというニッチな分野がWEBマンガというマンガの場の広まりで掘り起こされているのは間違いない。

それがマイノリティーの解放であるならば喜ばしいコトである。

「ちっちゃい島のでっかいガール」の背骨が巨大美少女とその友達の日常と成長なのは間違いない。

だが、その後半で描かれるWEBからのマイノリティー解放の物語は、WEBマンガで世に出るマンガ家と作品、そしてニッチなジャンルのコトを描いているとも読めるのだ。

近々の巨大美少女ヒロインはWEBにて活躍の場を得たマンガの象徴のひとつなのである。


2022年の巨大美少女ヒロインマンガの代表として、是非読んで頂きたい一品。

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