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平均給料が上がらない理由

(スキしてくれたAlpakaさん、すみません。読み返したら支離滅裂だったのでちょっと内容書き換えました)
今思い出したんだが、久しぶりに純アメリカ企業で働いて見えたものがあった。そしてそれは今日こんにち日本で盛り上がっている賃金UPの話(103万の年収の壁とか初任給33万円越えとか)に繋がった。今後もうああいう仕事をする事はないかもしれない(あまりやりたくはない)けど、それがオレの能力だし、またこういう仕事の話があった時の為にメモっておこう。

よく言われている当たり前な事だけど、まずは企業が儲からなければ給料は上がらない。内需だけでガンガン儲ける事はかなり難しいので必然的に海外でいかに売り上げを伸ばすか、というのが課題になる。アメリカのハイテク業界(半導体やIT、AIに至るまで)での話に限るが日本企業(特に中小)が成功しずらい理由がふたつある。

1)ポリティクスに弱い。
2)本社が米国支社(アメリカ人社員)をマネージ出来ない。

先日4か月という短い期間で辞めた会社(米国企業)はその前に勤めていた会社(日本企業)の競合にあたる。拠ってお客様は同じだ。辞めた一番の理由はオレの「活躍する場が無かったから」とでも言おうか、、、。

オレの得意分野はPenetration(日本語だと「市場浸透」と訳すのか?)だ。営業やマーケティング、ビジネスデベロップメントという仕事をやっている人には分かると思うが、簡単に言ってしまえばゼロ⇒イチで全く何もない状態から顧客に入り込み、関係構築をし、自社製品のポジショニングを行う。例えるならドアをあけさせて片足を突っ込む仕事だ。色々あったのを端折ると、その能力を見込まれてその米国企業に引き抜かれた形だったが(リアリティを出す為にあえて言うと部下なしマネージャーのポジションながら年収140KUSD≒約2100万円+MBOボーナスだったので先方も雇う段階では比較的マジだった事は明らかだ)、いざ入ってみると顧客とその会社が完全に「出来ていた」ので、Penetrationするまでもなく、黙っていてもさばき切れない程の案件が勝手にお客の方からやってくる状態だった。

トランプが大統領になる前からアメリカの会社は基本America Firstだ。繰り返すが高等な技術を要する製品やサービスを念頭に置いた話だが、アメリカの客はアメリカのサプライヤーに優先的に発注する。仮に技術的にアメリカのサプライヤーの方が劣っていたとしても「距離がある」とか「オペレーションが見えない」とかテキトウな理由をつけてアメリカのサプライヤーに発注する。価格、納期、サービスレベルがどうの、と言う話の前に「アメリカでサプライチェーンを完結させたい」というドライブがあるので、アメリカのサプライヤーに優先的に発注する。

海外組は先ずそこを打破する為にありとあらゆる事をしなければならない。そんな中、オレの前々職の会社(日本企業)はどうだったかと言えば、スタートは新規参入でアメリカでの売り上げはほぼゼロ。それをオレが3年かけてようやく扉に片足突っ込んだところで、本社から意味不明な締め付けや人事的な嫌がらせが始まり、業務が滞り、遂にオレは退職の選択をする事になる。これは想定の範囲内、というか周りの同業者からもよく聞く事なので特段驚かなかったが、日本企業(JTC)のマネジメント層は物事が廻り始めると余計な口を出して来て、あわよくば自分たちの手柄にしようとする。当然それまでやってきた現地のメンバーと軋轢が生じる訳で、場合によっては人も辞めていく。まだ片足突っ込んばばかりでこれをやるとプロジェクトは往々にして頓挫する。

それでも一度ドアさえあければ単発で年に数件のビジネスはあるかもしれないが、それらは手間ばかりかかって利益率の低い、アメリカの会社がやらないような仕事がメインになるだろう。黙っていてもさばき切れない程の案件が勝手にお客の方からやってくる状態には程遠く圧倒的な売り上げをつくるには至らない。どうしてもここで泥臭い仕事を粘り強くやらなければならない期間が必要なのだ。圧倒的な売り上げで強固なビジネス基盤を持たなければ劇的に社員に還元させられるレベルの利益を生む事は出来ない。

オレの前々職の会社(日本企業)は、もしかしたら最初からオレにドアを開けるところまでをやらせておいて開いたところでプロパーな社員に引き継がせるという戦略だったのかもしれないが(そう考えると辻褄もあう)、それでも誰かがアメリカ国内で地道に顧客との関係強化を進め続けなければそういう状態には持っていけない。だって、アメリカのサプライヤーは皆そうしているんだから。ましてや日の丸ではなく星条旗を背負って。

日本の会社の9割が中小企業だと言われているが、この中小企業が海外で稼げるようにならないと総体的な日本人の給料は上がらない。にも拘わらず、中小企業の多くが海外での戦い方を分かっておらず、出だしから失敗を繰り返す。ユニクロなどと同じようなドラスティックな給与改革が出来る様な強い会社はそれ程無いので、政治家が何を言おうが近々に日本人の給料が物価上昇分を凌駕するレベルでアップする事は多分ない。オレが間違っている事を祈る。


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