福岡県朝倉市発のアグリコールラム
ゑびす酒造が2022年にスタートさせたラム酒造り。
ようやく2024年夏からホワイトラムの販売を始めたばかりですが、
商品をご紹介していく過程で、「なんでラム酒なの⁉」といった質問をされる場面が多くなってきました。
南国のイメージが強いのか、北部九州の福岡県朝倉市でとなると不思議に思われる方も少なくないようです。
そんなこともあり、ラムを造り始めた理由や想いについてここに記すことで
少しでも皆様のご理解につながればいいなと思います。
理由その① さとうきびの生産地
福岡県朝倉市は、江戸時代後期、福岡藩の特産品として砂糖の製造が奨励されました。最盛期には、12台のサトウキビ搾り用の水車が稼働していたといわれ、三奈木地区を中心にかなり広い面積でサトウキビの栽培が行なわれていたようです。時代が進むにつれ、安価な輸入砂糖などに押され、次第に生産量は減少していきました。1970年ころには商業的な砂糖の生産が一度途絶えてしまいますが、地元の菓子店を中心とした有志により復活し、現在も三奈木砂糖の製造販売が続けられています。三奈木地区の他、コミュニティ単位での小規模な砂糖作りが継承されていて、朝倉市におけるさとうきび生産の伝統を垣間見ることができます。
ゑびす酒造がある朝倉市杷木新浜区の隣、上池田区でも、砂糖作りが続けられていて、かけがえのない地域の親睦事業にもなっています。
このように身近にさとうきびが栽培されている環境がラム造りを始めるにあたって一番の動機となりました。
理由その② 蒸留酒であること
ゑびす酒造では、1885年の創業以来、焼酎を作り続けていますが、焼酎とラムは酒類の中でも同じ蒸留酒に分類される近い存在です。
蒸留酒は、他にウイスキーやブランデーなどがあり、それぞれ原料や発酵のさせ方などに違いはありますが、アルコール発酵した液体または固体を蒸留して精製するという点で共通する、比較的アルコール濃度の高いお酒の種類です。
焼酎の製造では、アルコール発酵する液体を得るために、原料(米や麦)を蒸し、麴(こうじ)をつくる工程があります。これに対してラムの場合は、さとうきびを搾ったジュースがそのまま発酵する液体になります。
そのため、さとうきびを搾る設備を導入し、発酵以降の工程は焼酎造りの設備と兼用することで、ラムを製造することが可能になるわけです。
既にスピリッツ類製造免許を取得していたこともあり、ラム造りを始めるための条件が比較的整っていました。
理由その③ 熟成酒としての魅力
蔵の代表銘柄「らんびき」は、オーク樽で長期間貯蔵、熟成させた麦焼酎です。1969年に発売以来、55年にわたりお客様にご愛顧いただいている理由として、最も大きいのは「熟成」による味わいです。もちろん原酒の造りが重要ではありますが、貯蔵熟成させることで、味の幅、深みが増し、より魅力的な焼酎に成長していきます。このように「熟成」による効果を実感する過程で貯蔵熟成のプロセスは、蔵にとって年々重要なものとなっていきました。その結果、現在蔵出しする焼酎は全て3年以上貯蔵熟成したものとなっています。
「熟成」にこだわる蔵にとってラムの熟成も当然ながら興味深く、強く心を惹かれることです。ラム特有の甘みと芳香は、熟成すると穀類を原料とする焼酎とは異なる魅力を持つことでしょう。
理由その④ 地域資源の活用
福岡県朝倉市では、九州一の大河である筑後川沿いに広がる平野と英彦山を背にした山間部において様々な種類の農作物が生産されています。
今の日本における農業の継承問題は、朝倉市も例外ではありません。少しずつ耕作放棄地が増えています。また、2017年7月の九州北部豪雨で被害に遭った地域の復旧工事が進み、元々は田んぼや畑だった土地の姿が少しずつ甦ってきましたが、せっかく復旧した田畑で何を耕作するのか?という課題も見え始めています。そんな環境下において、サトウキビ栽培は一つの有望な作物となりえるのではないか?また、果樹生産が盛んな地域特性を活かし、フルーツの香りをまとったフレーバーラムの開発など、地域の農業と連携したものづくりに発展させられるかもしれないと考えました。
ここまでラム造りを志した理由を述べてきましたが、ラム造りに必要な条件と蒸留酒への熱い想いが重なり動き始めた事業は、多くの方のご協力のおかげで少しずつ形が見えてきた段階にあります。サトウキビ栽培から貯蔵熟成に至るまで、目指す味わいを実現するためにはまだまだ整えるべき条件が多くありますが、一つ一つの結果を検証しながら、進化、成長していきたいと思っています。
次回以降は、ラムと焼酎造りにまつわる様々なテーマを掘り下げてお伝えしていければと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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