音楽レビューです。(加藤いづみさん)
〽️すきになって、よかった・・
加藤いづみさんの大ヒット曲です。この曲は1993年にリリースされた『Sweet Love Songs』というアルバムに収録されています。
この大ヒットアルバムがリマスターされ、さらに新規録音トラック追加されて、今年(2023)の8月に新譜として発売されております。
*新譜の内容は。
1993年にリリースされたオリジナル録音の11曲を全面的にリマスター。そして代表曲『好きになって、よかった』の新録バージョンが追加されています。だから新譜のタイトルは『Sweet Love Songs +』。
お色直しされた名曲たちを改めて堪能できます。そして30年越しに新旧の『好きになって、よかった』を行ったり来たりして楽しめるという企画。
この新録バージョンをプロデュースしたのは御大、武部聡志さん。自らピアノでオケ演奏もなさっています。レコーディングエンジニアは、あの川崎義博さん!(3編前の投稿をご参照ください)
歌手、ミュージシャン、プロデューサー、エンジニアともに一流布陣です。
*1993年といいますと。
計算が間違っていなければ、当時のワタシは横浜の某CDショップで番を張っていた25歳。バブルが崩壊してしまって、これから色々とどうなるのだろ?と世の中がワラワラしていたけど、今思えばまだまだ経済の調子は悪くなかった。音楽産業も今よりは活況でした。
1982年にCDという音源フォーマットが登場してすでに10年を経過していたけど、オーディオ業界は益々デジタル化にまっしぐらな世情でしたね。
で、今回入手した新譜もCDフォーマットです。
なんかちょっとホッとするのですよCDって。出自ゆえ、ワタシがその取扱いに慣れ親しんでいるからなのでしょう。でもそれだけではなく、収録可能なデータの量(曲数とかね)も関係していると思うのです。一般的にCDに収めることができる音源データ量は74分(650MB)と言われています。
いま主流のストリーミングサービスは、途切れることなく素敵な音楽を届けてくれるけれど、収録尺に制限があって再生が終わると音が無くなるというこのフォーマットは、人間の集中力持続時間に沿った形態だと思うのです。
購入したCDのラッピングを剥いで、プレイヤーのトレイに盤を乗せて再生ボタンを押す。音楽を大切に聴かなきゃって気持ちになります。
あ、このアルバムはストリーミングでも聴けますからね。念の為。
*Sweet Love Songs +というアルバム。
ということで30年前のJ-POPを56歳のオジサンが聴く、という図が展開されました。正直にいうとファーストトラックで『んぐっ』って唸ってしまった。コレを聴いているオジサンの図って、どんなふうに見えるのだろ?
アルバムの内容は本当に素晴らしい。コリャ売れるワケだよな。ちょっと照れ気味だった試聴中のワタシは、次のトラックが再生される頃『気持ちは25歳』に戻っていました。オジサン、この時点で恥じらい滅却です。
なんせね、いづみさんが可愛いのです。声も歌い方も。
ちょっと斬り方が独自すぎるかもしれないけど、大好きなRickie Lee Jonesさんと同じフィールド。もしこんな声を眼前で聴いてしまったら、そりゃもうメロメロだよな。1993年、本気で加藤いづみさんに恋をした少年は相当数いたでしょう。
いわゆるSing Like Talkingなのですね。
女の子が楽しい気持ち、切ない気持ちをお喋りしているみたい。日記に書いているようにも思える。あ、勝手なオジサンの解釈ですよ。
楽曲も演奏も素晴らしい。
ほとんどの曲が高橋 研さんによって書かれていますが、やっぱり多くのヒット曲を生み出している作家の底力ってスゴいです。
そして人間の演奏じゃなきゃ出てこないニュアンスって、絶対にあります。このアルバムの録音に参加しているミュージシャンはみなさん一流です。残念ながらもう亡くなってしまった方もクレジットに記載されています。ワタシごときが語るのは烏滸がましいのですが、みなさん本当に演奏が上手だし楽曲がよく練り込まれています。
んむ、実に良いアルバムです。
*新録の『好きになって、よかった』について。
大人な加藤いづみさんが、丁寧に歌っています。
自身の代表曲を、年齢を重ねてこんなふうに歌えるなんてとても素敵です。
90年代、いづみさんに恋をした少年達もすっかりオジサンになっているハズです。そんな当時の少年(オジサン)が、この新録バージョンを聴いたら泣いてしまうかもしれない。こんなに美しく大人ないづみさんの歌を聴いて、30年越しな自分の人生を振り返ってココロ洗われることでしょう。
だからこの音源、CDというフォーマットでもリリースしてくれてよかった。メディアとしては当時と同じなのですから。
*そうそう、せっかくの川崎さん録音ですから。音質についても少々。
11トラックまでのオリジナル音源リマスターも素晴らしいです。この仕事は小林さんというエンジニアが行っています。当時の匂いを変えることなく、今のオーディオ機器で聴いても『ああ、良い音だな』って思えます。
で、川崎さんが新たに録音した『好きになって、よかった』ですが。
歌っている『いづみさんの図』が、onでもoffでもない丁度よい塩梅。大人チャーミングな女性のSing Like Talkingが、適切な距離感で聴こえてくる。青紀ひかりさん、ウンサンさんの録音でもそう感じましたが、川崎さんって歌の解釈が優しい。そんな録り方で作品制作を進行させる武部さんも、きっと音楽愛に溢れる優しい人なんだろうなぁ。
新たな『好きになって、よかった』を聴いていると、いづみさんの音楽を好きになって、よかったって。きっとそう思えますよ。
*気づいたコトがあります。
この新譜、なんとカラオケが2トラックも収録されています。2023年バージョンと1993年バージョン。要するに武部さんと高橋さんの伴奏にスポットを当てて聴くことができる。コレね、スゴいことです。
先ほども書きましたが、どうしても人間の演奏でなければ出せないニュアンスってあるのです。このカラオケを聴くと、ピアノやアコギがどうやって歌を支えているのかよく分かります。
『嗚呼、ココでこういう音を使うんだ!こういうタッチなんだ!だからメロディとのアンサンブルってこうなっているんだ!』って、もの凄く勉強になると思います。DTMで楽曲制作をしている若い演奏家さん、このトラックはぜひ聴いてみてください。
そして当時の少年は、カラオケに合わせてどうぞ歌って下さい。
かく言うワタシも、気づいたら『ジェットプレインっ』とか『する する・・』とか口ずさんでおりました。マヂで可愛いです、いづみさん。
公式ページ、貼っておきます。
J-POPの名盤を改めてゆっくり大切に聴くってのも、オーディオ趣味の醍醐味です。音とか匂いっていうのは、ソノ時の情景と共にヒトの記憶に強く刷り込まれています。『Sweet Love Songs +』を聴いたなら、きっとアノ時の自分に戻ることができますよ。ほんの一瞬ですけどね。
2023年バージョンの『好きになって、良かった』を聴いたなら、オレも頑張らなくっちゃって思いますよ。この気持ちは持続させたいモンですな。
ぜひお楽しみ下さい。
ではまた。
2023.11.22