かわちいユートピアなる世界
パクリか? いや、いや。日本語の配列にパクリはないだろう。しかし、よく似た名前の有名作品があるから、警戒心は芽生えるのだった。
これはいい、そう思えば、それは伝染病となって人々を侵略する。
さるクリエイターがやっとの思いで練り上げたデザイン製品は、インディーズからはじまり、商品化されてヒットを飛ばした。しかしあるところから売上がさがって、コンビニで見かける方のよく似た製品は、そのクリエイターの手を離れて他人がしかもさらっと改良点まで加えて模倣した低価格にしてデザイン性のある工業品だ。
それは、同じ国の中で起こることもあれば、国をまたいでクリエイター本人が知らぬままにすべてを乗っ取られていたりする。
ああ、有名になった。うれしい。
そう祝うものもあれば、ちくしょう、やられた、そう憎むものもいる。元ネタのクリエイターなんて路頭に迷ったり廃業したりするなか、元ネタを使い倒した大企業は次なるエサを探しにインディーズ市場にお客さんの顔をして、ノコノコ歩いたりする。
それがまかり通る、それがこの世の理になってしまった。
ある者が、病気にかかった。
しかし、それは、あらゆる病に免疫をもつというハイパー病であった。しかも感染力があった。その者は、世界中に祝われて、その者から喜んで世界中の皆が病気をもらった。なんの病にもかからない、病。人魚の肉を食べたみたいな、不死の肉体に限りなく近づける病!
こぞってハイパー人間と化した人間たちは、その後も仲良く、病で死なぬ肉体を満喫して……。
とは、いかなかった。
なにせ、誰も死なない。
死ににくい世の中になった。
伝染病は行き渡り、今や赤ん坊を産むのにどの国でも高額な税金を要求される。
地球がパンクしたのである。
もう、踏める大地が残っていないのだ。
不毛な地面に追いやられた人々は貧しい者たちで、彼らはやがて武器を手にして住みやすい地面のうえにいる人間たちを襲うようになった。戦争を超えて、個人と個人が常に争う、足の踏み場の奪い合いになった。
人間が毎日焼かれて、避妊手術もしょっちゅう行われて、これがユートピアの姿とはもはや誰も思ってはいない。これは、ディストピアとか、そう呼ぶやつ。
だけれど、病の不幸は根絶された、夢の世界なのである。
夢は、そんなに多くは同時には、叶わない。
END.
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