うっかりさんがミイラ

ほとんどの人間もネコも、ひなたぼっこが好きだ。

古来から生きる原生類、人魚たちもおおむねこれが好きだった。

海から突き出た岩礁、そこに座ったり寝転んだり、まどろんだり。

じっくりと日を浴びて憩う。

しかし、不死身の人魚たちである。

日光浴は月光浴に変わり、朝が過ぎも夜が終わってものんびりすることがある。人魚に時間なんて関係ないから好きなだけ憩う。

なかには、うたたねして数百年が過ぎ、うつかりとヒラメの干物みたいに変性する人魚までいたりする。そんなうっかりさんの代表が、今現在、人間の博物館などで『人魚のミイラ』と公開されている人魚たちである。

だれか、親切な人外、妖怪、異界怪異やらがお湯でもかけてくれたら元通りになるのだけど。

博物館のミイラたちは(人魚たちは)そんな奇跡が起こるまで悠然、のんびり、うっかりと、まどろみを継続している。ミイラたち(人魚たち)にしてみれば、平和ないつもの日常のお昼寝のつづき、真っ最中である。
博物館のミイラは今日もうごかない。


END.

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海老ナビ
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