ゾンビなる不死なるナニカかな
マーメイドをゾンビの見本としようとする、海の怪異たちの動きがあった。マーメイドが寿命によって死ぬ場面をだれも見たことがない。マーメイドの天寿の永さは、いまだに地球と比例しているのである。
ふと、ある怪異が言った。
「ソレってもうゾンビではないか」
「たしかに」
「ゾンビの噂はニンゲンがしているが、我々とて知らない奴らだ。ゾンビは」
「ニンゲンの夢想家かリビングデッドなる映画で創作した生きものね」
「空想。アタシらでさえ知らない」
「「「ならさ?」」」
人魚たちは、お姫様ほどかれんに可愛らしく愛らしく、骸骨ほどに真っ白な面持ちをうすく笑わせて怪異たちの集合を眺めていた。
人魚をどこぞのナニカが人魚姫と呼ぶから、からかい、怖さ、恐れ、畏怖、感情をごちゃまぜにして今は彼女たちはお姫様として、怪異たちにも距離を置かれている。
人魚姫は、さながら地球という母なる命に保護された、姫たちであった。
しかし、
「ゾンビ……」
「これが、ゾンビの姿か」
「そう思えば気味悪さがちょっとはマシね」
怪異たちは、そう結論を結んだ。
ゾンビなるものはだれを見たことがない。しかし、寿命を感じさせないバケモノのなかの異界人ならば、目の前にいるのだ。
ゾンビ。ぞんび。ZOMBIE!!
今から人魚姫はゾンビという種族も兼ねていると決めておこうか。集合した怪異たち、嗤うマーメイドのお姫様たち、遠巻きにして見つめあうソレらの距離はちぢまない。
ニンゲンが、知らないものを自分とちがう異界のものと決めて、村八分にするみたいにして人魚姫ゾンビたちは産まれた。
彼女たちの寿命の永さは、まだ、わからない。
END.
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