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「人狼ゲームで初日の夜に追放される」:探偵に憧れた男の悲しき運命

みなさんは人狼ゲームをご存じでしょうか。

10年くらい前から流行り始めたパーティーゲームであり、2つの陣営に分かれて主に心理戦によって勝敗を決するようなゲームです。

人狼ゲームの概要

 人狼のプレイヤーは「村人」と「村人に成りすました狼=人狼」の2つの陣営に分かれ、議論を通じて他プレイヤーの正体を探ります。
 人狼は夜になると村人を食べてしまうため、村人は早急に人狼を追放(処刑)する必要があります。夜になる前に皆で集まって議論、その内容を踏まえて投票を行い、人狼と思われる人を追放します。
 一方の人狼は村人に正体がバレると追放されてしまうため、自分が人狼であることを悟られないように振舞いながら村人を食べて減らさなくてはいけません。

この村人と人狼の心理戦がこのゲームの醍醐味であり、人気になった要因と言えます。

 さて、少し話は変わりますが私は子供の頃に探偵に憧れていた時期があり、推理もとい推論が好きです。

ここで言う推論とは数学的な推論ではなく、物事の因果関係や文脈を読むといったことを指すものとします。
起こった事象に対して原因を特定するために仮説を立てて、その因果関係を検証する。そういった因果関係をあれこれ想像するのが探偵っぽくて、堪らなく好きなのです。

 今回の記事では探偵に憧れた故に、人狼ゲームで毎回真っ先に追放されてしまうという悲しい運命を辿った男の話を書きたいと思います。
娯楽と思ってお付き合いいただけたら幸いです。

初日の夜に真っ先に追放される

 そんな人狼ゲームですが、私の学生時代に流行が始まりました。ピークの時にはゼミやサークルの至る所で人狼ゲームが開催されているような状況です。私も例に漏れず、研究の息抜きとしてゼミやサークルでの人狼ゲームに興じました。

 しかしそこで不遇な扱いを受けます。なんとゲーム開始直後、最初の追放者を決める投票で、なぜか私が真っ先に選ばれてしまうのです。追放された私は傍観者となり、以降のゲームの成り行きを見守るしかありません。

 ゲームのルールによっては初日に追放を行わない場合もありますが、そういった場合、私は大抵人狼の餌食となってやっぱり次の日の朝を迎えることができないのでした。

 なぜ私は真っ先に追放されてしまうのか?
議論の場で他のプレイヤーが口々に言うのは、

「とりあえずあいつを追放しておこう」

です。

私が村人だろうと人狼だろうとお構いなしなので、もはや議論ですらありません。映画やドラマで真っ先に死んでしまう人がいますが、まさか自分がそうなるとは思ってもみませんでした。

「理不尽(りふじん)」

この一言に尽きます。

追放される要因を考えてみる

 さて、普段の私の振る舞い、そして人狼ゲームでの私の振る舞いを振り返りながらなぜ真っ先に追放されてしまうのかを考えてたとき、要因が主に2つ挙げられます。

①普段の人柄から追放しても軋轢を生まないと思われる
②普段の言動がゲームでは胡散臭さに繋がる

 まず①の「普段の人柄」の方ですが、これは普段から私は機嫌が悪くなるということがあまりないということに起因していると思います。人狼ゲームにおいては真っ先に追放されると以降のゲームは観戦になってしまい、あまり楽しむことができません。当然理不尽に追放された人によっては、不満を感じて怒る人も中にはいるでしょう。

 その点、私は怒る心配がないので安心して追放できます。私を排除したとしても特に空気が悪くなったりするということがないということは、ゲームの進行と普段の人付き合いにおいて遺恨を残さない、軋轢を生まないというメリットがあります。

 ②の「普段の言動がゲームでは胡散臭さに繋がる」の方ですが、私はこちらの方が主な要因だと考えています。

 これは私が小さい頃から推理小説:ミステリーを読み、探偵に憧れていたことに端を発すると思います。

 多くのミステリーを読んで鍛えられたのか、良くも悪くも私は推論の速度が常人よりも早いです。また因果関係を理論的に説明できるため、私の導き出した推論結果には「それっぽさ」も備わっています。
つまり、それっぽいことを瞬時に言うのが得意ということです。

 普段の人付き合いの中でもこの推論行為をしているため、人によっては「頭の回転が速い」と思われているかもしれません。と同時に、「それっぽいことであって正確性に欠ける」とも。日常生活の中ではこの推論結果によって話が盛り上がることが多々ありますが、人狼ゲームは別でした。

漂う胡散臭さ

 人狼ゲームにおいては、村人は「如何に人狼を排除するか」が目的であり、人狼は「如何に自分たちの正体に気づきそうな人を排除するか」が目的です。その趣旨の下、議論の場で私が推論を披露するとどうなるのか。

村人からは、「あいつ、議論を誘導しそうだな。」
人狼からは、「あいつ、人狼の正体分かっていそうだな。」

と双方から「胡散臭い」思われてしまい、結果として私は真っ先に排除=追放される事態を招いてしまっていたのではないでしょうか。

普段の推論、すなわち探偵行為が人狼ゲームでは仇になってしまう。人狼ゲームにおいては探偵行為はご法度。


こうして一人の探偵に憧れた男は、人狼ゲームという舞台から姿を消すことになってしまったのです。

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