八潮市の下水道管事故
いまだ救出されない人命を思ってとにかく安否が心配なのですが、全国の仲間や業界各方面より問い合わせがけっこうあり、私たちも自分たちなりに情報収集をしているので取り急ぎここでも共有しておこうと思います。
今回の事故現場、埼玉県の流域下水道幹線は、埼玉県下水道局(公営企業会計全部適用)のもとで、埼玉県下水道公社が点検管理などを行っています。下水道単独で公営企業管理者を置き、国が進める包括民間委託を積極的に行いながらも、公社のなかで業務コア部分の維持管理はいわゆる半直営体制を残すなど、現場スペシャリストも存在するような、上田前知事のもと行政組織としては基本論理を持ってしっかりやってきている印象でした。そんな下水道体制としては、全国の模範と言われるような地域で起きた幹線管渠の事故なので、正直言って「まさか」というのが第一報を受けた時の感想です。
ここ埼玉県では、管路の情報についてもGISシステム(地理情報システム)で公開されているというしっかりした公開状況で、それによるとこの事故現場を見れば布設年度は1983年、法定耐用年数(50年)未満管で、埋設深さ約10メートル、3,000ミリのシールド工事布設のセグメント管ということです。交通量も多く自然流下の人孔箇所でもあり、腐食しやすい環境下でもあるので一概に原因を推定できませんが、国の通知などに従って内部の定期点検も行っていたとすると、事業管理者側の瑕疵などと言われると「う~ん…」という印象です。ということでバッジのついた目立ちたがり屋さんたちや、ネットの情報を鵜呑みに信じることができる人々が短絡的に判断・行動し、やれ「知事が悪い」だの「管理者が悪い」だのという展開になることを心配します。こちら問題は組織の体制や形態ではなく、ルールを含む運営や運用ではないかと思っています。
技術的なことは、事実(現場)を見たうえで原因究明しない限り分かりませんが、このように管理がしっかりしている印象の埼玉県でこういうことが起こるということは、全国のどこでも起こり得るということだと、懸念・心配・思うばかりです。
記憶している人も多くいると思いますが、3年半前(2021年10月)に起こった和歌山市の水管橋事故と同様に(本質的にはいろいろ違いますが)、そんな感じで「どこでも起こり得る」という捉え方が概ね正しいのではないかと思っています。
これからどんどん老朽化していく水インフラです。国のお金がないというのは、予算の「配分」の問題ですから、皆さんが「蛇口の向こう」や「排水口の向こう」に問題意識を持つことで、少なからず解決(持続可能にすることが)できるものと思います。
人命の救助と現場で奮闘する方々の二次被害など事故がないことを祈るばかりです。