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猫アレルギーのかなしみ

ペットを飼っている人とお酒が好きな人はそうでない人より人生2倍以上楽しめる気がしてならない。

極度のアレルギーで、大好きな犬猫が飼えない者の妬みが入った持論である。

ストレスや不安を和らげる効果がある通称、幸せホルモンの「オキシトシン」が動物と触れ合うことでも分泌されることをご存じだろうか。

フワフワした毛並みに触れたり、邪心の無い瞳を見つめることで、オキシトシンの濃度が劇的に高まるという。

赤ちゃんへのスキンシップでも、親と子双方の脳に分泌される。
愛着関係を深めたり、子どもにとっては記憶力が高まり学習効果やストレス耐性を強める効果もあるらしい。

Instagramで見るのは人様のネコちゃんワンちゃん(王貞治ではない)ばかり。
きっと行き場のない母性と愛玩願望を人様の犬猫様で満たそうとしているのだ。

そんな私も一度だけ大好きな猫ちゃんと生活を共にしたことがある。

ご近所の庭に産み落とされた真っ白綿毛みたいな子猫。
みーちゃんだ。(ヘッダー画像)

みーちゃん

庭の持ち主の山本さんはミニチュアシュナウザーを飼っており、猫は飼えないから預かって欲しいとうちに打診してきた。

姉も私も大の猫好きなのを知っていたからか、神経質で「動物なんて飼うもんじゃない」とずっと言っていた母が、みーちゃんを家に入れたのは意外だった。

みーちゃんは猫であり天使だった。
生後1か月も経たない子猫は日中遊び回っていたかと思えば、急に電池が切れたようにコロっと寝てしまう。

飛びつく、駆け回る、隙間に入る、ちょっと目を離せば何処に行ったか分からなくなってしまう。
何をしても可愛くてしょうがないみーちゃんから片時も目が離せなかった。

同時に極度の猫アレルギーの私は、身体に様々な症状が表れていた。

①目がゼリー状になる。

これは一度見ないことには理解出来ないと思う。勇気のある人は「結膜浮腫」で検索🔎してみて欲しい。

白目だけブヨブヨに飛び出し、黒目が沈んだ状態になる。
「目が!目がぁぁあああーーーーー!!!!」など言って遊んでいる余裕はない。

②呼吸が苦しくなる。

猫アレルギーの人は、猫の唾液に含まれるタンパク質にアレルギー反応を誘発する。
猫が毛づくろいをする際に唾液が被毛に付着し、その毛を吸引したり接触した場合に免疫が過剰反応を示す。
一般的にどうしても猫が飼いたければ「スフィンクス」という毛の無い猫を薦められるが、私にとって毛の無い猫は飛べない豚と同じである。

軌道が狭くなり胸が苦しくなっても、みーちゃんの可愛さ故に胸が苦しいんだと思い込むほかない。

③肺が痒くなる。

ここまで来ると終焉を意識する。
子猫のみーちゃんを独りぼっちにして寝るなんて出来ず、眠るときは自室に連れて行った。
みーちゃんはベッドに居る私の胸の上にチョコンと箱座りをし、スースーと間隔の短い息を立てて眠った。

猫の呼吸と重みを感じる至福の時間。
アレルギーさえ無ければ。
みーちゃんの立てる寝息にシンクロするように私の呼吸はゼーゼー鳴り出し、心臓がドクドクビートを打っていた。

シザーハンズ

大好きなものに触れられない悲しみといえばシザーハンズを彷彿とさせる。
シザーハンズ(特別編) [DVD]

手がハサミの彼は触れたものを傷つけてしまう。
恋した女性を抱くことが出来ない、やるせない愛しさと切なさと心強さを感じさせるハートフルムービーだ。(すみません、未見です)

みーちゃんを抱けば私の細胞が傷ついていく。
目の前に居る愛しいみーちゃんに触れられないこの悲しみ。

抱きしめることは自分の首を絞めることと同意であった。
そんな「愛してるのに、愛せない」(AAA)(すみません、未聞です)
間違いと間違いが交わり拗れていく日々を重ねていたある日、別れは急に訪れた。


さよなら天使

序章に登場した山本さんを覚えているだろうか。

シザーハンズの登場人物ではない。みーちゃんが産み落とされた庭の持ち主である。

みーちゃんと暮らし始めて1か月程経ったある日。

帰宅したらみーちゃんと布で出来た小さなハウス、いつも咥えていたお気に入りのチワワのぬいぐるみ、毛布もろとも綺麗に無くなっていた。

「み、みーちゃんは・・・?」

「出て行った」


面白い返答である。

まるでみーちゃんが自ら荷物をまとめて出て行ったかのような母の口ぶり。
私もいつか使ってみたい。

端的に言うと、山本さんはみーちゃんが庭に居るのを発見してすぐに保護し、動物病院に連れて行ったり数週間手を尽くして世話をしたが、やはり先住犬との同居は難しいということで我が家にみーちゃんを託した。

しかし数週間離れて暮らしてみて、みーちゃんの愛しさを痛感し、やっぱりみーちゃんと一緒に居たい!先住犬もろとも愛す!!と思ったので連れて帰ったとのこと。

私もアレルギーの症状が極限まで来ていた為、別れを泣く泣く受け入れた。

みーちゃんが人間だったら周囲のエゴに振り回されて歪んだ人格になっていたかもしれない。

暫くみーちゃんが私の胸の上に乗って寝ている感覚が離れず寂しかったが、きちんと呼吸が出来ることに内心安堵している自分が居た。

「ごめんね、みーちゃん…」
涙がこぼれた。

それから数か月後、去勢手術を終えたみーちゃんがうちに遊びに来た。

術後の傷のせいか、大人になったからか、みーちゃんはまさしく「借りてきた猫」のようにおとなしく、すっかり別猫になっていた。

山本さんにより名前は「バウ」と名付けられた。
色んな意味でそれに一番驚いた。


ハグ効果

先日Twitterで「癒されたい」と呟いたところ、あるフォロワーさんが
「動物飼えなくても、ぬいぐるみとかフワフワした大きいものを抱きしめるだけで効果があるらしいですよ」と教えてくれた。

すぐに巨大なぬいぐるみを抱きしめて満足する自分の姿を想像し、「それはダメ」と自分に警告を鳴らした。

アラフォーに差し掛かった独身女が夜な夜なぬいぐるみを抱いて悦に浸っているのは紛れもないホラーだ。

別の方には「自分で自分をハグして自分を鼓舞する言葉をかけてあげるといい」とも聞いた。
セルフハグというらしい。

「いつも頑張ってて偉いねぇ~~~~!!!」

自分に言いながら思い切り両腕を反対側の肩に回してギュッと力を込めた。
脱臼しそうになった。

アレルギーと分かってて猫を抱いたり、自分で自分抱いて脱臼したり。

ハサミも持っていないのに、自分で自分を傷つける。
シザーハンズもびっくりである。


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エバ@エグくて優しいエッセイスト
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