うつわに宿るものがたりを継ぐ、うるしごとの面白さ|#NeighborhoodSustainability
割ってしまったうつわを直す手段として昨今注目を浴びている日本の伝統技術、金継ぎ。昨年、EATLABではじめた食卓まわりのワークショップ「おいしい学校」でも、本漆を使った“金継ぎ”の連続した講座を行いました。講師にお迎えしたのは、南加賀エリアで活動する漆芸家のなかおかようこさん。普段は、日常使いのうつわだけでなく、海外のコレクターなどが集めているような美術品レベルの漆芸品も修復されているなかおかさんですが、生徒さんと一緒に一般の暮らしで使われるうつわを直す中で見えてくるものがありました。本講座を主宰したEATLABのフードディレクター瀬尾裕樹子と、なかおかさんで講座を通した気づきについてお話ししたときに、日々使うものの繕いにこそ、EATLAB online のこの春夏の特集テーマ「Neighborhood Sustainability(身近な持続可能性)」のヒントが隠れているのでは…?と思い、今月の特集インタビューは、なかおかさんにお願いしました。
金継ぎ教室で見えてきた、文化の“つなぎ目”としてのあり方
瀬尾:
なかおかさん、もともと、高価な古美術の修復をやってきていて、あんまり金継ぎを積極的にやったり教えたりしたい感じじゃなかったじゃない? でも、講師の話を受けていただいて、実際に教室をやってみて何か心境の変化はあったのかな?
なかおか(敬称略):
もともと、修復をやりたいと思ったのは、自分がつなぎ目の一つになれたらいいなと思ったのがスタートだったのね。つなぎ目というのは先人の技術を次に繋いでいくために何かできないかなということで、一つは文化財保護のような道もあるだろうし、もう一つは自分で手を動かしてやっていく道もある中で、手を動かす方をやろうってなったの。
だから“文化を守るために伝える”ことをしたいという想いがスタートだったのだけど、技術が上がればそっちが面白くなってきてそっちをもっとやりたい、という気持ちが出てきて。
日常の器を継ぐっていうことよりももっとすごい蒔絵作品に取り組みたいというような、向上心と紙一重の変な意識を持ってしまっていたのだと思う。けれど、自分がどんなに頑張ってひとりで部屋に籠って技術を高めようとしても、他の人に伝えなかったらそもそものやりたいことを考えると、意味がないなと思って。
漆の話をしようとすると、みんな「漆ってなに?」みたいなところから始まるからね。
瀬尾:
そもそも文化財保護とか、未来につないでいくためにやりたいと思っていたけれど、技術を追い求めるうちにどんどん狭い世界に入ってしまって、ものは残るけど、伝わってるのかなっていうことを考えるようになったということ?
なかおか:
そうそう。じゃあどうしてそれを残すの? というところは周りの人には伝わらないまま「貴重なものだから」という風に済まされて溝が深くなってしまう。
金継ぎ(教室)をはじめたときに、
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