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カラーひよこ
昔はよく縁日の露店ではカラーひよこが売られていた。
赤や緑、ピンクのカラフルなひよこたちは私たちのような子供には愛らしく、お小遣いで買えるような値段であり露店のおじさんからよく買って帰った。
色が違えば、他のひよこも集めたくなるもので周りの友達は何羽も買っていて私はうらやましいと思った。私も露店では何匹か買ったことがあるのだが大体は直ぐに死んでしまった。だが一度だけ鶏になるまで育った雛がいた。
雛の成長は早く、三週間もすれば普通の鶏になる。化学染料で染められた羽は抜け落ち、新しく羽毛を生やし、立派な鶏冠を携える。私の雛も例外ではなくピンク色だったのは殆ど最初だけであった。
その鶏は気性が荒かったようで家にいた猫や犬とは馬が合わなかったようだった。庭を我が物顔で闊歩する鶏は孤高さながらで、私には近づきがたく世話はもっぱら父がしていた。
私の生まれ育った家は庭も広く隣家とも離れていたため、毎朝夜明けとともに鳴く鶏にも困らなかった。時代的にも鶏は身近だったこともある。庭に鶏小屋がある家も珍しくなかった。私のカラーひよこはかなり長生きした。最初は父は食べる気で育ててくれいていたようだが、いつしか情が移ったのか鶏は猫や犬と同じ様に庭で飼われていた。それに肉屋に行けば柔らかく美味しい鶏肉は手に入り、わざわざ私の鶏を〆る必要はなかった。私が大学に入ったくらいの時に鶏は死んだ。10年程生き、老衰で死んだ。死んだ鶏は父が庭に埋めてくれた。
時代は変わり、今の露店でカラーひよこを見ることはなくなった。カラーひよこの着色は繊維用の染料に浸けるか、スプレーで行われる。効率を求めるためにお世辞にも彼等は丁寧に扱われない。色を付けなければひよこは長生きする。だがそれでは1羽しか売れないだろう。
そもそもカラーひよこはどこから来るのだろう。
雛は孵化場で産まれる。排卵種として人口孵化させられた雛はまず雄と雌で分けられる。雌は排卵するため商品価値があるが雄はどうだろう。当たり前だが雄は卵は産まないし、食肉のブロイラーと比べて飼料効率に恵まれない。雄の雛は育てるメリットがない。なので雄の雛は殺処分される。殺処分された雄の雛は他の家畜の飼料や肥料、ペットの餌になる。だが一部は愛玩用として売られることになる。
それがカラーひよこだった。
近年動物愛護の概念からカラーひよこが売られているのは見なくなった。
カラーひよこがなくなっても孵化場から雛は産まれる。
雄と雌の両方が。
私達の生活に鶏は欠かせない。
私の買ったピンクのカラーひよこも雄だった。
立派な雄鶏に育った。
彼は運が良かったのだろうか。
鶏に感情があるのか私は知らない。
彼は私に買われて幸せだったのだろうか。