「オセロー」演出ノート
ギリシャ悲劇は、人々が生きていく上で回避できないようなあらゆる問題を、神の啓示や災いといった超越的な関係性の中で考える為の実践的な装置でした。シェイクスピアの書いた悲劇にも同様の機能をみることができますが、特筆すべきは、それが「人間にとって回避できないもの」に特化している点にあるというのが私の考えです。
『マクベス』は「暴力性と狂気性」、『ハムレット』は「内面の葛藤」、『リア王』は「老い」、『オセロー』は「嫉妬」といった、人間に備わっている簡単には揚棄できない性質のものをシェ