自然豊かな西条市丹原でつながった縁 夫婦二人で始めた小さな果樹園が育てるもの
2022年11月 の「地元を愛す。」プレゼントの賞品にセレクトしたのは 、西条市丹原町の輝らり果樹園の「レインボーレッド®キウイ」。愛媛県内でもほとんど流通しておらず 、知る人ぞ知るという希少品種の栽培に夫婦で取り組む、輝らり果樹園の金光史さんにお話を伺いました。
―西条市丹原の「輝らり果樹園」は、今治市出身の金光祐二さんと岡山県倉敷市出身の妻・史さんが2012年に立ち上げた農園。夫婦どちらの出身地でもない西条市丹原町で果樹農家を始めたきっかけは?
(金光史さん)
私は鳥取県の大学を卒業後、鳥取県内で営農指導員をしていました。「愛媛の柿の栽培を見たい」という農家さんの視察に同行した際に夫と出会い、結婚後は夫とともにこちらの東予園芸農協で指導員をしていました。私も夫も農家の出身ではないのですが、夫はおじいちゃんが育てている畑や田んぼの手伝いをよくしていたそうです。私はもともと環境問題に興味があって農学部に進学し、農業に携わりたいなと思うようになりました。二人ともこちらの出身ではないので、もちろん農地も持っていませんでしたから、指導員をしていた時にお付き合いのあった地元の農家さんからキウイと柿の畑を借りて自分たちの果樹園を立ち上げることができました。その後も高齢で辞めてしまう方の農地をお借りするなどして順調に栽培面積を増やし、現在はブドウとキウイ、柿を作っています。
-果樹園を立ち上げて10年が経ちますが、これまでで一番大変だったことは?
2014年にキウイのかいよう病が発生した時ですね。ゼスプリゴールドがダメになってしまい、方向転換を迫られました。かいよう病に感染すると、ゴールドの品種は木が枯れてしまうため、ゴールドからグリーンキウイに変更する農家が多くなりました。希少品種であるレインボーレッド®キウイ も かいよう病でやめてしまった農家が多く、今、西条市内で作っているのはうちくらいです。かいよう病に一番感染しやすいので、うちでは雨に当たらないように屋根掛け栽培(ハウス栽培)をしてるんですよ。ハウスでキウイを栽培しているところは県下では他にないと思います。
-レインボーレッド®キウイは店頭ではあまり見かけない珍しい品種ですが、どんな特徴がありますか?
一言で言うと、「キウイが苦手な人が好きになるキウイ」です。キウイはアクチニジンという成分の働きで舌がピリピリしたり喉がイガイガすることがあって、そのためにキウイが苦手という人が結構多いんです。でもレインボーレッドはそれがないので、グリーンキウイより食べやすい。酸味が少なく、糖度が高いのも特徴です。南国系のフルーツだねという人もいます。スーパーなどにはほとんど流通していなくて、うちでもオンラインでお歳暮などのギフトとして販売しているのですが、一度食べた人はリピートしてくれる人が多いですね。
ー「輝らり果樹園」では、畑を開放して親子を対象としたイベントなども実施されていますね。
私が自然の中に身を置くのが好きなんですよ。夫は栽培が好きなんですけど、私は畑にいること自体が好き。子育てをしながら畑仕事をずっとやってきたので、子どもと一緒に畑にいる時間もちょいちょいありまして。新型コロナが流行しだしてから、遊びに行く場所がないという話も聞いたりしたので、果物がなっていない時期に畑を遊び場として活用できたら、皆さんにも喜んでもらえるんじゃないかと思ったのがきっかけです。この辺は移住してきて自分で事業をしている同世代の人も結構多いので、何か一緒にコラボしようかという話にもなりますね。
-子育てをしながら農業をしていて、一番楽しいなと感じることは?
農業のいいところは家族で仕事をやっていけることじゃないでしょうか。私の父はサラリーマンだったので、父が仕事をしているところは見たことがなかったんですが、子どもたちは私たちが仕事をしているところを日常的に見ていて、一緒に成長できるというのが農業のいいところだと思います。
-今後の目標や新たに挑戦したいことはありますか?
果物作りに関して言えば、おいしいものを作り続けるのが大前提で、今の味を守り続けていくことが大事だと考えています。そして、私の新たな挑戦というと、来年の春にゲストハウスをオープンする予定なんです。1棟貸し切りで、家族が気兼ねなく泊まれるようなイメージで、今、小さな平屋を改修工事中です。そこで宿泊者に農業体験をしてもらったり、サイクリングや散策などを通して丹原の自然を体験してもらう。丹原っていいところがいっぱいあるんですけど、あまり注目されないし、立ち止まってもらえないんです。うちだけじゃなくて観光農園もいろいろあるし、移住してきた人のカフェとかもあるので、丹原のいいところを発信できるゲストハウスを目指したいと思っています。