中華料理を食べた
「私そんなのほんとに嫌だわ」
カウンターで餃子を食べていたら、後ろから聴こえてきた。振り返ったらお店のおばさんが私の隣に座っている23歳くらいのカップルに話しかけている。
「さっきからお互いに話もせずに携帯ばっかりいじって、それなら早く帰りなさいよ。せっかく一緒にいるんだからもっと愛を語り合いなさい。」
笑いながらではあるが、結構強い言い方だった。そのカップルは苦笑い。もしかしたらこれから告白を考えているとかずるずると付き合ってるとかなのか。それか普通に友達同士か。どれにしても言われてみれば15分くらいは隣から声が聞こえてこなかった気がした。それは確かにおかしな光景だ。でもだからって『愛を語り合いなさい』は極端すぎる気がする。
『愛を語り合う』は一体どうやるの?おばさんに聞きたかった。私の中に思い浮かんだのはお互い永遠に「好きだよ」「愛してるよ」と言い合うものだけだった。想像したら面白かった。しかし私はまだまだ浅い人間だな。
そんな中、私たちはというと一台のスマートフォンを見て、お互いに次に行きたい中華料理屋の話をしていた。中華料理屋にて中華料理を食べながら次に行きたい中華料理屋で食べたい中華料理の話。そう、中華料理への愛の語り合いをしていたのである。
「おばさん、これは合ってるの?」
なんて、もちろん馬鹿らしすぎて聞けなかった。