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個々の“生きづらさ”に社会がどうかかわるのか


ものすごい壮大なタイトルになってしまいました。

たいしたことは書いてませんが、ちょっとお付き合いいただければ幸いです。




私は今、社会福祉士の勉強をしているのですが、

“自分が住んでいる市町村の「地域福祉計画」の策定過程や背景について述べなさい。”

というレポート課題がありました。

地域福祉計画とは…

地域福祉計画は、平成12年6月の社会福祉事業法等の改正により、社会福祉法に新たに規定された事項であり、市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画からなります。

厚生労働省 地域福祉計画

地域福祉計画は、地域福祉推進の主体である地域住民等の参加を得て、地域生活課題を明らかにするとともに、その解決のために必要となる施策の内容や量、体制等について、庁内関係部局はもとより、多様な関係機関や専門職も含めて協議の上、目標を設定し、計画的に整備していくことを内容とするものです。

厚生労働省 地域福祉計画

ざっくりいうと、

『市町村や都道府県として、地域福祉の分野で目標を作るよ!それにむかって一致団結してがんばってこ!みんなも協力よろしくね☆』

みたいなものかなと思っているのですが、(※ちなみに策定は努力義務で、令和3年4月時点で、策定済みの市町村は全体の約83%、都道府県は100%でした。)

さっそく自分の住んでいる市町村の地域福祉計画を調べ、いったんレポートを書き、何日後かに改めて読み返してみました。


すると、レポートを書き上げた時にはなかった、なんともいえない違和感が。

うん、なんだろう、このなんともいえない違和感は…。

気持ち悪い、非常に気持ち悪い違和感なのですが、知識不足からなのか、その違和感を的確に表現できないのです。


私の住んでいる市の地域福祉計画に書かれていたワードは…

  • バブル経済

  • 景気の低迷の長期化

  • 地域コミュニティの希薄化

  • ホームレス

  • 孤立死

  • 自殺

  • 家庭内暴力・虐待

といったものでした。

もちろん、ホームレスや孤立死は重要で大切な問題です。

自殺も家庭内暴力・虐待も、だれにでも起こり得るものでとても深刻な問題です。

ただ、

“バブル経済崩壊後、景気が長期的に低迷する中で、地域コミュニティの希薄化などによりホームレスや孤立死、自殺や家庭内暴力・虐待などの問題も深刻化し…”

みたいな論調に、違和感を覚えるのです。





…え、社会って、もっと複雑じゃね?



そう思ってしまうのです。

問題を問題としてとらえるのは簡単ですが、その背景には複雑でさまざまな事情があり、十把一絡げに語れるものではありません。

元引きこもりとして、自死遺族として、何より今現在説明しようのない“生きづらさ”を抱える者として、

私の住む市の地域福祉計画に書かれたことが、全く心に響いてこないのです。コレジャナイ感がすごく強いのです。


自分の生きづらさの原因を、

“バブル経済が崩壊したから…”とか
“景気が長期的に低迷しているから…”とか
“地域のつながりが薄れているから…”とか

そんなふうに思えないのです。


おおまかな背景としては、もちろん存在しているかもしれません。

けれど、そうじゃないんです。

うまくいえないけれど、そうじゃない。


“バブル崩壊”とか“地域コミュニティの希薄化”とか、そんなん書いとけば社会を語っているように見えるよね、

みたいな感じで、うすっぺらいコメンテーターが話す内容みたいな、どっかで見たような言葉がならんだ文章にしか思えませんでした。



ということで、日本の中心都市である東京都23区の地域福祉計画はどうなんだろうと調べてみました。

すると、ざっくり調べていく中で、とても感動した地域福祉計画を発見しました。

ちょっと長いですが、引用します。

この計画は、困難に直面している一部の人を、それ以外の人、主に行政が援助するという、従来型の「福祉的」な発想だけに立脚していません。他者から必要とされ認められる実感をもち、「少しでも楽しく生きる」ための公式、非公式の人とひととの関わりを新たに紡ぎ出す、広義の福祉の概念を基盤にしています。支援する人と支援される人、のような二項対立で捉える時代は、過去のものです。自身の健康や暮らしぶりに、多くの人が不安や不調を抱える現代。多少はあれども、誰もが一定の「生きづらさ」を抱えて生きている時代だからこそ、弱い絆をつむぎ合い、それを幾重にも重ね合わせることで、 そこに生きる安心感を生み出すことができると考えています。その安心は、やりたいことに近づく一歩を踏み出す勇気を与えてくれると信じています。

千代田区地域福祉計画 2016

これよ、これ!!

なんともいえない爽快感があります。

表面上は孤立死や自殺にしかみえない問題も、その裏には

多少はあれども、誰もが一定の「生きづらさ」を抱えて生きている

千代田区地域福祉計画 2016

という背景があると思うのです。

今の時代、誰もが生きづらさを抱えるという視点を持つことが、地域福祉を考える上で前提となってくるのではないでしょうか。

地域福祉計画の策定と実施の主体は、第一には行政としての千代田区役所です。しかしながら、地域の皆さんには、この計画に賛同いただける範囲で、近くの人のことを気にかけ、声をかけるところから一歩を踏み出してください。

千代田区地域福祉計画 2016

…ブラボー。(拍手)千代田区、すごすぎます。

そんなんキレイごとじゃない?と思われるかもしれませんが、たとえキレイごとだとしても、掲げなくては始まらないと思うのです。

地域福祉は住民参加が必要不可欠というのは、他の地域福祉計画にも記載されていることから、その重要性がよくわかります。

(2022.5.21追記)
※2000年の社会福祉法の改正に、地域福祉の推進に努めなければならない主体として、「地域住民」「社会福祉を目的とする事業を経営する者」「社会福祉に関する活動を行う者」とあり、地域住民が明記されていました。


特に、地域における生活課題について、区民自らが積極的に関わり、地域の一員としてのつながりを大切にしながら、「支え手」と「受け手」が固定化されることなく、共に支えあいながら点から面への取組みを通じて「丸ごと」受け止めることが重要といえます。

北区地域保健福祉計画

地域福祉には、こうした手助けや支援を必要とする人たちが抱える⽣活上の様々な課題に対し、高齢者や障害者、子どもといった対象者ごとでなく、自分たちが住んでいる地域で、一人ひとりがその人らしい⽣活を送れるように地域住⺠や事業者、 ⾏政が協⼒し、支え合う取り組みが求められています。

品川区地域福祉計画

本区では、高齢者、障害者、子ども、外国人といった個別の対象にとらわれることなくすべての人々が安心して共生できるよう、連携と協働により継続的に支える仕組みの構築をめざし、福祉・保健分野の関連計画すべてを包含した、豊島区における保健福祉の総合計画として、平成17年3月に「豊島区地域保健福祉計画」を策定しました。

豊島区地域保健福祉計画



私の市の地域福祉計画には、この

“多少はあれども、誰もが一定の「生きづらさ」を抱えて生きている”

“地域住⺠や事業者、 ⾏政が協⼒し、支え合う”

という視点を見つけることが、できませんでした。

だから、何ともいえない違和感があったのです。


もちろん地域によるバラつきはあって当然だし、

私が住む市の職員の方々も一生懸命取り組まれているんだろうし、

何より私が社会復帰できたのは行政の支援があったからこそだし、

理想ばかりはいってられないとは思いますが、

私の市の地域福祉計画、もうちょっとなんとかならんかったんかい、と思ってしまいました。


けれど、あらためて、福祉ってなんだろうと考えるきっかけになりました。

個々の“生きづらさ”にどう社会が関わっていくのか。

結局、行政にも限界はあるわけで、

そうすると、一人一人が自分には何ができるのか考えていくことが、やっぱり大切になってくるんじゃないかなと思います。


はて、私にできることはなんだろうか。




ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました😊


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