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【読書感想】 「おしごとそうだんセンター」 ヨシタケシンスケ
親子でヨシタケシンスケさんの本が好きで、自宅に何冊かある。
ヨシタケシンスケさんの本は年齢を問わない。
私の入り口は子供向けの絵本「もうぬげない」だった。
(厳密には二十年近く前に出会っているのだが、そのことは後半に…)
小児科の待合室に置いてあった本。
子供が「読んでほしい」と持ってきた本だった。
読む前からハードルを上げるのは良くないのだが、読後もふとした時に思い出し笑いしてしまうほど面白い絵本だった。
興味のある方は人目につかない場所で読んでみてほしい、人によっては声を出して笑ってしまうと思うから。
子供だましではないレベルの笑いがそこにある。
どうしても手元に置いておきたくて、すぐ本屋に買いに行った。
他の本も、可愛らしい表紙で一見子供向けの本に見えるのだが、大人が読んでもなかなか面白い。
笑えるという点では「もうぬげない」が私の中で一番だが。
ヨシタケシンスケさんの絵本は一見すると子供向けの本なのだが、よく読んでみると大人の方が胸に響いたりすることがあるのだ。
今回の「おしごとそうたんセンター」もそんな本の一つだった。
宇宙船が壊れて地球に不時着した宇宙人が、地球で生活するために仕事を探すところから物語が始まる。
おしごとそうだんセンターの職員は、色々な珍し
いお仕事(架空の)を紹介してくれるというストーリー。
人生の節目を祝ってくれるプロの胴上げ師集団『胴上げ屋』、
真実をうやむやにする仕事『隠ぺい屋』、
他人の人生を五分間だけ覗くことができる『誰かの人生のぞき見屋』などなど…
実際には存在しないのだけど存在したら面白いだろうなと思うような仕事の数々。
よくこれだけ色々発想できるものだと感心する。子供達はおそらくこのお仕事紹介ページに飛びつくだろう。
絵もカラフルでほのぼのしていて、クスッと笑ってしまう言葉も添えられている。
そして大人の私が響いてしまう部分は、そのお仕事紹介の合間にある宇宙人と職員の対話のページ。
エッセイのような、コラムのような。
そのテーマの一部を紹介。
おしごとって、何?
なりたいおしごとになれなかったら?
向いてるおしごと?たのしいおしごと?
…
テーマだけで大人は読みたくならないだろうか?
言葉は違えど新書コーナーに同じようなテーマの本が並んでいるはずだ。
子供向けのファンタジーな本と見せかけて、大人のリアルな悩みとしっかり向き合っている。
将来、社会に出て色々な悩みにぶつかるであろう子供達に心の在り方をさりげなく示してくれているのかもしれない。
苦しまなくても良いよ、悩まなくてもいいよ、みんなそんなもんだから…と。
図書館で借りてきた本なのだが、また近々本屋に行って蔵書にお迎えしようかと思っている。
ヨシタケシンスケさんが実際どんな方なのか存じ上げないが、色んな人の心に寄り添える優しい方なんだろうなぁと思う。
優しすぎて心配になるくらい優しい方なんだろうなぁ、と。
実は二十年近く前、ヨシタケシンスケさんの「しかもフタが無い」という本を「面白かったから」とプレゼントしてくれた友人がいた。
ヴィレッジヴァンガードで売っていたらしい。
ヨシタケシンスケさんがこんなに話題になるずっと前の話だ。
落書きのような絵が沢山載っている本で、少しブラックな要素もあり、面白いことは面白いのだが2〜3度読んでから本棚の肥やしになっていた。
そして私は結婚を機に古本屋に売却してしまったのだ…。
それがまさかこんなに話題の作家さんになられるとは…。
その友人の先見の明に驚かされる。
そして私の先見の明の無さにも!
いつの間にかヨシタケシンスケさんが時の人となり、急に惜しくなり「しかもフタが無い」も数年前に本屋で改めて購入した。
子供も面白いなぁと言いながら読んでいた。
ヨシタケシンスケさんの作品はやはり年齢を問わないのだ。