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過剰なお母さんアゲが気持ち悪かった

小学校の授業参観が保健体育の授業だった。

参観日は子供の普段の様子を見られる貴重な機会。
今回はそれと同時に
「令和の保健体育はどんなもんかいな?」
「LGBTQについて説明するのかな?」
という個人的な興味もあった。

本来ならそれらは保護者が我が子に直接伝えるべきなのだろうが、自分達が親から教えてもらった経験がない。

家族でテレビを見ている時に男女の俳優がベッドの前で見つめ合いだすと親が無言でチャンネルを変えたものだ。
子も「どうして変えるの?」とは問いたださない。
昭和の多くの家庭がそうだった。

そんな家庭で育てられた私達がどうやって我が子に性教育できようか…。

変な教え方をして間違った風に興味を抱かせてもよろしくなかろう…。

できることならその辺りのことは学校で、清く正しく真っ直ぐに教えてもらってきて欲しい。



授業の前半はビデオ鑑賞。

卵子と精子が受精する顕微鏡映像から、胎内で育つ赤ちゃんの様子、そして大変な思いをして出産するお母さんの様子が、ある時は神秘的に、ある時はほのぼのとしたBGMで映しだされていた。


しかしその映像は昭和や平成で見たような既視感。
「令和」は感じられなかった。

精子と卵子の顕微鏡映像では人の営みはわからないし、LGBTQについて触れられることもなかった。
性の乱れや低年齢化、刺激的なスマホ広告が社会問題になっているが、小学校ではそこまで踏み込まないのかもしれない。
授業参観なので特に保守的な内容だったのかもしれない。

一つだけ令和だなぁと感じたのは、
「君達の中には人工授精で生まれた子もいると思います」
と先生がサラッと話していたことくらいか。


後半はビデオを見て感じたことを班ごとで話し合う時間に。

先生から
「保護者の皆さんからも、よかったら実際の体験を子供達に聞かせてやってください」
との声かけ。

子供達の間に混じって自身の体験を話す保護者もおれば、廊下や教室の後方で保護者同士が自身の妊娠出産話で盛り上がっている様子もあった。

私は出産に◯◯時間かかった、
妊娠中は絶対安静で寝たきり状態だった、
あのママは双子を出産したから凄い、
我が子は全然寝てくれなくて大変だった、
などなど…。

いつも思うのだが、こういう話になると大変な思いをした人ほどエライ、みたいな空気になるのは何故だろう…。
出産、子育ての苦労カースト。
大変な思いをした人ほど周りから一目置かれる世界。
大したエピソードもない人間の被害妄想だろうか…。
(私も人並みの痛みや辛さはあったと思うのだが…)

その話を神妙な顔つきで聞く子供達。
女の子は自分もいつか当事者になるかも?と思うのか、少し不安そうだ。

この授業、
少子化が更に進むんじゃなかろうか…?

最後に授業で感じた事を子供達が発表する時間に。
次々と手を上げて発言する子供達、素晴らしい。
(ちなみに我が子は手を上げていない…毎度のことなのでもう慣れている)

その中で賢そうな男の子が
「お母さんはこんな大変な思いをして僕たちを産んでくれたので凄いなぁと思いました!お母さんにありがとうと言いたいです!」
と発言した。

クラス中に大きな拍手が巻き起こる。
その場にいる保護者もみな満足そうに拍手している。

素晴らしい感想。
素晴らしい授業。

子供から自発的にそんな言葉が出てきたことに、先生も誇らしげだ。


…だけど…私その時、実は、

教室中に流れる空気がちょっと気持ち悪かったんです。
架空の新興宗教みたいで。

母は素晴ラシイ!
母を讃エヨ!
母に感謝セヨ!


たしかに妊娠出産は命懸けだし、多かれ少なかれ辛かったり痛いこともある。
それを多くの人に知ってもらうことは大事なこと。
そうすることで次の世代の女性が楽な出産、楽な育児ができる社会になればいいと思う。


でも、この授業の着地点が
「母親に感謝すること」
「母親の素晴らしさを讃えること」
になっていないだろうか?と。


偉い女性がお母さんになるんじゃない。
子供を産んだから母親になっただけ。

子供を産んでもモラルのない人はいるし、平気で人を傷つける人もいる。
自分の意思で産んだのに子供を愛せない人だっているし、
我が子が大事すぎて周りが見えなくなる人や、妬み僻みで頭の中が一杯な人もいる。

子供を産むだけで優れた人間になる訳じゃない。


過剰な感謝の言葉と拍手で変に勘違いする母親が現れてしまいそうで、気持ち悪くなってしまったのだ。

こんなことを書いたら非難轟々だろうか…。


母とは「子供達が産まれてくるためにお腹を貸す存在」くらいの気持ちで良いと私は思っている。
母になった途端にそれまでの人格が無かったことにされるのは気分が悪いし、人によってはそれでは都合が良すぎる。


むしろこちらが
「産ませてくれてありがとう」
と言いたいくらいじゃないの?と。

沢山の時間とお金をかけて不妊治療をしても子供に恵まれないことだってある。

子供は時々ニッコリ笑って甘えてくれたら、それで充分だ。


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