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日本半導体の希望ラピダス2nm立ち上げは必ず迷走する【更新】

ラピダス立ち上げの成功条件が、競合する韓国Samsungの2nmGAA プロセス陣営(米国IBMプラットホーム)と顧客受注状況を見ればほぼ未来予測が出来ます。
私が日本経済新聞にコメントを出し、週刊エコノミストに寄稿した通りです。

【最新のラピダスリスク】
~引用~
政府が、次世代半導体の量産を目指すラピダスの支援を念頭に置く関連法案について、年内の臨時国会での提出を断念する方向で調整に入ったことが19日分かった。複数の政府関係者が明らかにした。自民党総裁選後に早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰されており、審議時間を十分に確保するのは難しいと判断した。2027年の量産開始計画に影響を及ぼす可能性もあり、経済産業省は年明けの通常国会で成立させたい考えだ。  
政府はラピダスに対し総額9200億円の助成を既に決定。同社は北海道千歳市に工場を建て、25年に試作ラインが稼働する。量産実現には5兆円の資金が必要だと見積もるが、トヨタ自動車やNTTなど民間企業からの出資は計73億円にとどまり、残り4兆円余りのめどが立っていない。  
このため、政府は民間の融資促進を目的に金融機関の融資が焦げ付いた場合に保証する案を検討している。政府が出資したり、さらなる助成の財源を確保したりすることも想定する。

岸田文雄首相は今年7月、「量産などに必要な法案を早期に国会提出したい」と表明した。

【日本経済新聞コメント】
半導体の技術動向に詳しいアーキテクトグランドデザイン(東京・港)の豊崎禎久氏は「自社ビジネスの命運を決める半導体チップの量産を、実績のないラピダスに委託する海外大手は現れないだろう」と指摘する。

【筆者の週刊エコノミスト寄稿記事】
経済・企業日本経済総予測2024
国策ファウンドリー「ラピダス」の危うさ 設計や後工程のリソース不足も懸念 豊崎禎久
2023年12月11日有料記事


最先端ファウンドリで製造されるAP群

【2nm競合企業Samsungはラピダスのデジャブとなる未来】
Samsung Electronicsが、現在建設中の韓国・平澤と米国テキサス州テイラーの先端ロジックファウンドリ用ファブの建設計画の見直しを検討していると複数の韓国と台湾のメディアが報じている。
それらの話をまとめると、平澤の第4製造棟(P4)はファウンドリではなくDRAMへ転用する可能性があり、テキサスファブの設備投資は延期され、2024年後半の稼働予定から2026年以降に延期される見込みだという。
韓国業界筋の話では、Samsungが開発中の最先端3/2nm GAAプロセスの歩留まりが上がらず、主要顧客からの受注が確保できなくなることを懸念しているためだという。

先端プロセスでの歩留まりが低迷
韓国メディアによると、Samsungが試作を進める2nmの歩留まりは低迷したままで、歩留まり向上のめどが立たないことからテイラーファブから量産準備のための技術者を撤退させる模様だという。また、3nmについても歩留まりが2024年第1四半期の1桁台から第2四半期に10%台まで伸びたが、20%には届かず、量産開始基準である60%には程遠い状態だとする向きもあり、その結果として自社のExynos 2500チップセットのエンジニアリングサンプルの供給が遅れたという。

対するTSMCの先端プロセスは、すでに60~70%ほどに達しており、受注に差が付き、両社の売上高にも差が生じていることから、Samsungはテイラーファブへ最少人数しか残さないなど、戦略の見直しを進めているとする。
同社は米国のCHIPS法に基づく補助金需給に向けた予備協定を米商務省と結んでいるが、この補助金を受け取るには工場労働者を雇用し工場を稼働するという前提条件を満たす必要があることから、現在の状況は協定を満たす状態にないという。李在鎔会長は、ASMLなどの大手装置メーカーを自ら訪問し、歩留まり改善の突破口を探ろうとしているが、目立った成果は出ていない模様である。


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