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カレー休み
欲しいなぁ
「カレー休みが欲しいなぁ」
窓の外をぼんやりと眺めながら、私はつぶやいた。灰色の空の下、街はせわしなく動いている。心にはぽっかりと穴が開いたような虚無感が広がっていた。
「頬を伝う涙は乾かない。一握りの砂を見せてくれた人を忘れない」
啄木の詩がふと頭をよぎる。手の中の砂のように、私の時間も指の間からこぼれ落ちていく。毎日、仕事に追われ、自分を見失っている気がした。
「気持ちよく、自分に合った仕事があれば、それをやり遂げて死にたいと思う」
本当にやりたいことは何だろう。カレーを作ること? それとも、ただ休息を求めているだけなのか。
「砂山の砂に腹ばいになって、初恋の痛みを遠く思い出す日」
学生時代、友人たちと一緒にカレーを作って食べた日のことを思い出す。笑い合い、語り合い、時間が無限にあるように感じられたあの頃。
「ふざけて母をおんぶして、そのあまりの軽さに泣いて、三歩も歩けなかった」
長い間帰っていない実家の母が作ってくれたカレーの味が恋しい。温かくて、優しい味。
「死ぬことを、常備薬を飲むように思う。心が痛むと」
疲れた心と体を癒すために、カレー休みが欲しい。スパイスの香りに包まれて、ゆっくりと自分を取り戻したい。
明日は思い切って休みを取ろう。そして、自分のためにカレーを作ろう。心の栄養を取り戻すために。
「気持ちよく、春の眠りをむさぼる。目に柔らかな庭の草かな」
窓の外では、新緑が風に揺れている。明日はきっと、良い一日になるだろう。
深呼吸をして、立ち上がった。キッチンに向かい、スパイスの瓶を手に取る。カレーの香りが部屋に広がり、心が少しずつ軽くなっていくのを感じた。
「いのちなき砂の悲しさよ、さらさらと、握れば指の間から落ちる」
でも、砂を握りしめるのではなく、自分の手で何かを作り出すことができる。そのことに気づいたとき、私は少しだけ前向きになれた。
カレーが出来上がる頃、窓の外には夕焼けが広がっていた。オレンジ色の光が部屋を包み込み、心地よい疲れが体を満たしていく。
「こころよく、我にはたらく仕事あれ。それを仕遂げて死なむと思ふ」
自分のための時間を大切にしよう。そう心に決めて、私は一口カレーを味わった。懐かしい味が口の中に広がり、自然と笑みがこぼれた。
明日からも頑張れそうな気がする。カレー休みは、私にとって小さな再生の時間だった。