冷めない茶碗(パラレルワールド)
僕は、彼女と一緒に街をぶらついた。
何故だろう?
吸い寄せられるように、悪魔にでも魅入られたかのように、僕は彼女と一緒に、おかしな雑貨店へと入っていった。
いかにも商売上手な店主が揉み手でやって来た。
「お客様、今日はどのような物をお探しで?」
「特には別に。あ、彼女との仲がずっと冷めないグッズとかあれば」
我ながら、おかしなリクエストをしてしまったが、店主はしばらく考えた後でこう、応えた。
「お客様が気に入るかどうか分かりませんが、お茶が冷めない茶碗ならございます。茶碗がパラレルワールドに移行し続けて、いつまでも熱いお茶をお楽しみいただけます。お二人の仲を象徴するかのように、記念品としていかがでしょう?」
「じゃあ、それをペアで」
「かしこまりました」
僕は半ば頭がボーッとしていた。
彼女といる時の多幸感とも違う、この店の独特な引力のせいなのか?
「お待たせ致しました。お品物でございます」
「有難うございます」
僕は、彼女と手を繋いで店を出た。
秋風が当たった為か、僕の頭は冴え渡った。
その瞬間、思った。
「オレ、そういや、猫舌だった」
おかしな買い物をしたものだ。
僕は振り返って、雑貨店を見た。
「ユニシロ」と言うお店らしい。
その後も何度も足を運んでしまう羽目になるとは、この時はまだ思いもよらなかった。
「ユニシロ」は、会長さんの許可を得て書いています。
会長さん、有難うございました🙇
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