田舎町にできたロックバーで指詰め
今日は木曜日。
仲のいい高校時代の友人5人で夜の飲屋街へ。
金曜日に有給を入れて三連休の初日
平日の17時くらいから街を歩く感じ
ワクワクしちゃうよね。
私の住む街の田舎レベルを表現するなら
駅前聞いたことないカラオケと個人経営のデイリーヤマザキ
東京帰りっぽいお洒落夫婦が経営するカフェ
コンビニの駐車場にもう2つコンビニ作れる
って感じ
友達の1人が行きつけでおすすめだという
焼き鳥屋へ到着
廃れた駅前商店街の路地裏にあるお店
入ると、老夫婦が出迎えてくれ
「久しぶりだね!」
と仲間は常連のようだ。
お母さんのお任せで!
と頼んだ焼き鳥はどれも美味しく
ハイボールおかわり。とお酒も進んでいく。
最近の仕事の話
あいつは今なにしてるらしい
あいつはとうとう結婚した
あいつは子供が生まれたんだってさ。
気の知れた仲間との話は尽きないものだ。
時間はあっという間に過ぎ
無事終電を逃してしまった私
仲間達はそれぞれ
恋人の迎えや、ギリギリの終電に駆け込み
帰っていった。
気をつけて帰れよ〜。
と改札で仲間を見送る
私はもうベロベロな状態。
ホテルでも探すかーとふらふら歩いていると
ネオンの看板が怪しいバーにたどり着いた
普段だったら怪しくて入ることはないお店だったが
帰る場所に困っていたことと、酔いも相まって
気づいた時には、木製の重たい扉を開け入店していた。
店内は間接照明はあるものの薄暗く店には誰もいない
壁にはギターがいくつも飾られており
アメリカのロックバンドと思われるライブ映像が流れていた。
どうやら、ロックバーに入店していたと気づく。
こんな田舎にバーがある事にも驚いたが
爆音で流れるロックな音楽に圧倒されていると
カウンターの奥から、手首、首元までびっしりと
タトゥーの入った人物が現れた。
革ジャンに、皮のハンチング帽、薄暗い店内にとどめのサングラス
多分何も見えていない。
彼は、自分のことをマスターと呼んでくれと。
気さくに話してくれた。
そのままカウンターに座り話してみると、なんと彼は敬語だった。
この風貌で敬語はギャップで笑えるなんて思っていた
その時、後ろから「うぅぅぅぐぐ」と唸り声が聞こえた
誰もいないと思っていたので、ビクッと瞬時に振り返ると
テーブル席の、テーブルの下で人が倒れていることに気づく
正面を向き少し早口で伝える
「マスター、人が倒れてますよ!?」
すると、後ろに目をやり、呆れたような表情で
「ああ、そいつ酔っ払ったら寝にうち来るんです。気にしないで下さい」
100回くらい同じ質問に応えたみたいな表情に
私は、ツッコミを入れたい気持ちを噛み殺して
「そうなんですね。いい場所ですね。」
と、よく分からない返しをしていた。
その後、ハイボールとナッツを注文すると
お通しで生ピクルスが出てきた。
これがまあ絶品な訳だ。
好き嫌いが分かれるピクルスだが、これは本当に美味しいと
マスターに食い気味で伝えると。
嬉しそうな顔で
「この生ピクルスはこだわってて、うちの看板メニューの一つなんです」
と話されていた。
この類の店で、料理美味いんかいと感心していた。
マスターの風貌に最初こそビビっていた私だったが
お酒が進むにつれて、警戒心も解け、本当にいろんな話をした。
お店を持った経緯、刻まれたタトゥーの意味、ロックの魅力
バツイチのマスターの娘さんの話まで聞かせてくれていた。
気づいたら、朝の5時に、10杯以上ハイボールを飲み
もうベロベロを超えて、記憶も定かでない程だった。
始発を待って、電車に乗り帰路につく。
家につき風呂も入らずそのままベットに落ち眠りにつく
気持ち悪くて目が冷めたのは午後2時ころ
完全に二日酔いだ。正直昨日の記憶は断片的にしか覚えていない。
虚ろな視界のまま、風呂に入ろうと服を脱ぐ。
すると、ポケットに何かが入っていることに気づく
ポケットに手を突っ込み感じたことのない感触に、なんだか寒気を覚えた
その時、昨日の断片的な記憶が、繋がりフラッシュバックのように過ぎる。
田舎にぽつんとあるロックバー
全身タトゥーのオーナー
薄暗がりの店内でサングラス
倒れている客
手の感覚的に、、、、
え????指?????
と嫌な想像で、全身に緊張が走る。
そう思った瞬間、昨日の出来事が全て不気味で
気持ちの悪いものになっていた。
意を決して、ポケットの中身を出す。
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生ピクルスのラップ巻きだった。
自慢のお通しだった。
おねだりして持ち帰りさせてもらってた。
半年ほど経った頃に、またバーに行こうと店に行くと
残念なことに、閉店していた。
また、あのピクルス食べたいな〜。