岡田准一さん主演、映画「永遠の0(ゼロ)」を見た感想
先日「永遠の0」を借り、視聴しました。
「永遠の0」は観客動員数700万人、累計興行収入86億円を達成した大ヒット作です。
観客動員数700万人というのは凄い数字ですね。
当然2014年邦画興行収入第1位を記録しています。
あれだけヒットしたにもかかわらず、レンタル店の棚に並んでいる枚数はわずかでした。
多分、あの人が不祥事を起こした影響でしょう。
酷評は本当か?
この作品に関しては、著名人から「ラノベ」の映画化にすぎないとか、「右傾エンタメ」とか酷評されました。
実際鑑賞してみると、「当たらずと言えども遠からずだな。」と思いました。
まず各キャラクターがステレオタイプで深みがありません。
ミッドウェー、ラバウル、ガダルカナルなどの描写もあっさりしています。
ミッドウェー海戦の事を知りたければ、「血と海の伝説―ミッドウェー」がいいでしょう。
ラバウル、ガダルカナルの空戦に関しては、「大空のサムライ」が詳しいです。
そもそも特攻は拒否できたのか?
士官ならいざしらず、下士官は拒否できなかったでしょう。
宮部 久蔵は海軍兵学校を出ていないので下士官です。
よって命じられれば、特務士官であっても拒否するという選択肢は選べません。
下士官で特攻を命じられれば、行かざるを得なかっというのが当時の実情です。
なぜ特攻は成功率が低かったのか
特攻作戦に出撃した戦闘機は2500機前後です。
そのうち敵艦に到達し特攻作戦を遂行したのは約400機です。
つまり成功率は、およそ16%です。
100機の特攻機を繰り出して16機しか敵艦に到達できないわけですから、かなり厳しい作戦です。
しかも送り出した戦闘機と搭乗員は二度と戻ってきません。
なぜ特攻作戦は成功率が低かったのでしょうか。
自分なりに考えてみました。
マジックヒューズの登場
マジックヒューズとは、砲弾が命中しなくても、目標物が15mの範囲内に達すれば起爆する信管のことです。
マジックヒューズの登場以降、日本軍機相手の対空戦闘では猛威をふるいました。
従来の砲弾と比較し効果は数倍に跳ね上がったと言われています。
日本軍機の装甲のうすさも災いしました。
防弾装備がないため、ちょっとした被弾でも墜落していったのです。
レーダーの進歩
太平洋戦争後期、米軍はマーク12というレーダーとCIC (戦闘情報センター)を組み合わせた防空システムを構築していました。
マーク12は160km先の敵機を発見することができました。
マリアナ沖海戦では、400機にも及ぶF6F ヘルキャットを発艦させ、前方約80km、高度約4,200mで日本軍機を待ち受けました。
日本軍機のそのほとんどがF6Fヘルキャットに撃墜されました。
これがいわゆる「マリアナの七面鳥撃ち」です。
F6Fの迎撃をかいくぐったゼロ戦もそのほとんどが、米機動艦隊の対空砲火により撃墜されてしまいます。
日本海軍はこの戦いで主力空母3隻、艦載機約400機を失いました。
事実上、日本の機動部隊はマリアナ沖海戦で消滅します。
2000馬力級戦闘機の登場
2000馬力級のエンジンを積んだF6Fヘルキャットが、1943年から戦場に投入されるとゼロ戦は苦戦を強いられます。
武装は12.7mm機関銃を6丁(弾数計2,400発)装備しています。
防弾対策はさらに強力で、防弾フロントガラス、約100kgに及ぶ装甲が計器板の前方、操縦席の背面、更にエンジン下面とオイルクーラー前面に装備されました。
大馬力エンジンを積んでいるため、これだけの武装と防弾装備を施しても零戦に対しては時速にして40kmも優速でした。
特にゼロ戦の7.7mm機銃弾でF6Fを撃ち落とすのは至難であり、20mm機銃弾が当たらないと撃墜するのは難しかったようです。
機体を見てみるとわかるとおり内部に余裕があり、大量に燃料を搭載できました。
増槽を取り付けると航続距離は2000kmに達しました。
対して、ゼロ戦は劣勢を強いられます。
最新の52型でも、エンジンは1130馬力、7.7mm機銃2挺(弾数計1,400発)20mm機銃2挺(弾数計200発)と馬力でも武装でも劣っていました。
また搭乗員を守る防弾面の改良も皆無でした。
F6F は日本軍機に対してキルレシオ19:1という圧倒的な戦績を残しました。
この戦績は米軍発表のものなので多少眉ツバですが、10:1程度の差は確実にあったと予測できます。
つまり日本軍機は、ほとんどF6Fヘルキャットを撃墜できず太平洋から駆逐されていきました。
F6Fは終戦までに約5,000機の日本軍機を撃墜し、太平洋戦争の流れを変えてしまったのです。
F6Fヘルキャットは、ヨーロッパ戦線におけるP51と同じ役割を果たしたと言っていいでしょう。
搭乗員の資質
アメリカ海軍の戦闘機パイロットはそのほとんどが理系大学の出身者でした。
つまりメカに強い戦闘機乗りでした。
対して日本のパイロットは航空隊操縦練習生の出身者であり、機械に対する理解度は米軍パイロットに対して劣りました。
またF6Fのパイロットは、ゼロ戦の20mm機銃弾を被弾しない限り撃墜されることはなく、実戦で経験を積む事が出来ました。
対するゼロ戦は防弾対策がなされていなかったため、被弾すれば即炎上で経験を積めないまま撃墜される搭乗員がほとんどでした。
戦争後期、日本は機体や搭乗員の質でも大幅に劣り制空圏を完全に失ってしまいます。
永遠の0の評価
現代から過去を追想する設定はわかりますが、現代のシーンが多すぎるような気がします。
戦争映画としては軽すぎますが重くない分、気軽に視聴できます。
真剣に見るには尺が長すぎる感があるので、何かやりながら観るのがおすすめです。
ただゼロ戦搭乗員を真正面から描いた映画は貴重です。
VFX(特殊視覚効果)も非常に優秀です。
観る価値はあります。
注目して欲しいのは景浦役の田中泯(みん)さんです。
田中泯さんと言えば、「たそがれ清兵衛」の余吾善右衛門役で有名な方です。
この人が後半出てくる事で作品に厚みが増しています。
まとめ
もう太平洋戦争が終結して74年経ちます。
日本にとって不幸だったのは、2000馬力級のエンジンが作れなかったことです。
その当時の日本の科学・工業技術の限界でした。
しかし戦後、戦争で苦杯をなめた日本のエンジニアは身命を賭して内燃機関の開発に取り組みます。
その結果、日本は自動車大国になりましたし、F1ではホンダがメルセデスやフェラーリと内燃機関の完成度を競っています。
日本の国力は右肩下がりですが、内燃機関の技術だけは磨いていってほしいものです。
記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。