イーストショア

実話と作り話が配合されたお話を書き連ねたりします🖋️

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マガジン

  • 〇〇、な、小説たち

    片道通勤2時間の、最も有効な活用方法を見つけました。

  • 流離と意馬心猿

    さすらいといばしんえん 無計画な旅エッセイ

  • 煙の行方

    ばあちゃんに寂しい思いは絶対にさせない。

最近の記事

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煙の行方①

ばあちゃんが死んだ。 知るという点では、一瞬だった。 家族からの連絡にその場で泣き崩れたり、一人で悲しみに打ちひしがれたり、電話を無言で握りしめたり、映画やドラマの様な非日常的シーンを想像していた私はというと、それを知った時一人ではなかった。 土曜働いた代わりに月曜休みを取って、一泊二日、高校時代の親友と旅行し、その帰りの足でまだお付き合いを始めて日の浅い彼の家に帰った。お土産を一緒に食べて、海の塩でパサついた髪を撫でてもらいながら深く寝入り、二人分のアラームに目をこすって

    • 大きな麦わら帽子が入った大きなポリプロピレンのバッグと、ずっしり重そうなリュックを背負った女性が、二度、三度と座席を振り返った後電車を降りてゆく その路線に乗り慣れた人がするより慎重なその確認の仕方は彼女の旅の終わりを象徴するようでもあって、なぜだか見ている私が切なさを覚える。

      • 烏の目、雨の朝

        TV消した、電気消した、 家を出る直前の指差し確認に今週からは クーラー消した、 も追加されることになりそうだ。 玄関を出ると目より耳に先に、「雨」という情報が伝わる。この時期の天気予報はね難しいですよね、「今日は昼過ぎ夕方から雨が降り出すでしょう」と差し棒で雨雲レーダーを追っていた天気予報士さんに勝手に同情し、ウンウンと頷きながらやけに大きなビニール傘を開く。玄関先の小さな屋根から足を踏み出す。 今日は朝から雨が降っている。 駅までの10分弱、最初の役目を終えた傘の、

        • 流離と意馬心猿(4)「ミーハー、未来を縫う」

          M-1ファイナリストのネタのツッコミ1フレーズから作り話を書くと意気込んだものの2組目真空ジェシカで満足した内に次の王者が決まってしまったではないか。頭の中の伊東四朗さんの頭を、モヤっとボールが直撃する。この継続力のなさは意志の弱さの表れだということを、noteを開くたびに自分に念押しするのである。ではいってみよう、旅4日目。 カメラロールを遡る。記憶と紐づいて感情が湧いてくる。かと思いきや、無機質な風景の写真が続く。だけだったりする、が、こうして脚色していくとその無機質た

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        • 流離と意馬心猿(4)「ミーハー、未来を縫う」

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        記事

          流離と意馬心猿(3)「機能不全 あちこち」

          先日夢に、2週間で浮気された人が出てきました。お互いyoutuberの設定でした。夢の中の私たちはカフェでばったり遭遇するや否や、お互い「緊急で動画を回し」始めました。先方は私をヒステリックだと揶揄し、別れた原因をなすりつけてくるような内容を視聴者に主張して、さながらちびまる子ちゃんの藤木君のように、ねちねちニヤニヤと私に近づいてきました。夢の中の私はというと、怒りを堪えカメラを構えるしかできず、しかし隣にいた友人が、先方のライブ動画のコメントを印籠のごとく私に突き付けてくれ

          流離と意馬心猿(3)「機能不全 あちこち」

          流離と意馬心猿(2)「旅先ないない」

          1時間12分、あえて乗ったこの各駅停車の電車の中で絶対に書き終えてやる。自分にリミットを課すことができない怠惰な人間の追い込み方は実に物理的であり、依存的である。車掌さん、通過待ち、ゆっくりしてくれていいよ。あるあるの反対語に「それないないすぎる(笑)」という会話のやり取りが個人的にツボで、この題名になりました、急にちょっとダサいね。 ではいってみよう。旅2日目。 無職旅2日目の朝は「珈琲館 麗(うらら)」のモーニングから始まった。 4日目に奈良駅で母と叔母と合流し、介護

          流離と意馬心猿(2)「旅先ないない」

          流離と意馬心猿(1)「相槌、記憶と春」

          言い訳はよそう。 怠惰でしかない。ここまで一人旅の記録を放置していたのは。 残念な特技のひとつに、 それっぽい言い訳と相手を怒らせないへらへら笑顔 というのがある。悪い方の愛嬌と呼ぶのがいいかもしれない。 だけどnoteで話を書くことにだけはその特技を使ってはいけないというのは、どうやら私の取扱説明書の、何頁かはわからないが確実に油性ペンで書きこまれているようだ。もはやこれも言い訳めいていて情けないが、だからここまで放置していた理由とか、読んでくれてる人少ないけど居てくれ

          流離と意馬心猿(1)「相槌、記憶と春」

          タオルケットは穏やかな ひとりでに、ドタバタ雑記

          電気代の高騰が実家の食卓の話題にのぼる今日、 無職が、好き好んで、この夜中部屋の電気をつけ夜更かししているなど 自転車乗れるようになりたての坊主が、親の前で、 幼稚園からの帰りに見かけたピスト気だるげ運転青年を真似して、 両手放し運転を披露するくらいに質の悪い嫌がらせだ。 デスクランプ代わりに灯していたアロマキャンドルが、 こんな日に限って(!!!!) 燃え尽きてしまった。質の悪い神様の悪戯とおもうことにする。 こんな日に限って、を強調したのはほかでもない、数時間前に カ

          タオルケットは穏やかな ひとりでに、ドタバタ雑記

          流離と意馬心猿(0)「カネコアヤノは無職にだって優しい」

          無計画で能天気な人間の旅に出た記録を残そうって試み。 ほんまは旅先の喫茶店でその日に起きたことをリアルタイムで記していく予定やってんけど、 すでに旅から帰って3日が経過しようとしている。 今日これを書けてるんも、「明日note書くわ、さすがに」と友達に電話で宣言したからであって。 自分で決めるより他人に決めてもらうことで、義務感から自分を動かすしかない、まあでも書き始めたからいっか リアルの友人で読んでくれてる人も、note上で初めましての人も、ここまで読めばだいぶ分か

          流離と意馬心猿(0)「カネコアヤノは無職にだって優しい」

          感情成仏記「家系ラーメンとHelsinki Lambda Club」

          ひとりラーメン、ひとりカラオケ、ひとり焼肉。ソロキャンプ。キャンプだけ、ソロ、キャンプ。ひとりキャンプでよくない?ひとりキャンプ、ソロキャンプ。うーん。 汗臭い中年男性に挟まれ肩を縮ませながらラーメンをすする。ずるずると、すする。ティッシュケースを机の上でなく頭上に取り付けるという目から鱗の工夫を凝らす店内で流れる、どこか懐かしい音楽をシャザムする。Helsinki Lambda Club の「友達に戻ろう」というEPの「しゃれこうべ しゃれこうべ」という曲らしい。下北吉祥

          感情成仏記「家系ラーメンとHelsinki Lambda Club」

          真空ジェシカ「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」

          「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」 にっこり笑って、彼はあの時、私の身体を抱き寄せ、引き上げたのだった。 なにもないのに涙が出るとか、生理が来ないとか、食欲が湧かないとか、そういういわゆる不調、みたいなことは無かった。 大丈夫。 晴れた日にはカネコアヤノとネバヤンを聴いて、雨の日は小袋成彬とyonawoが多めのプレイリストを聴く。 久々に会う友達との約束にはお笑いラジオを聞き、思わず笑ってしまわぬように気を付けて電車に揺られながら向かう。 映画を1日1本ペースで観る。部屋を

          真空ジェシカ「俺でなきゃ、見逃しちゃうね」

          カベポスター「愛してるぞゆりあッ!」

          「2番いただきまーす」「お、仲良しコンビ、いってらっしゃいー」 小声で売り場から見送られ、水咲とゆりあは近くの商業ビルの7Fのお洒落ランチ、ではなくその隣の2F奥に潜むベローチェに向かう。 ゆりあは女の子らしいその名前のイメージと違わず、恋愛話が大好物な職場の後輩だ。昼休憩(2番)が被り売り場を出るこの瞬間から、ゆりあの恋愛事情アップデートが始まる。 「それでね確か、模様替えしよ!て思い立って部屋の整理してたときだったんすよ、もうほんと、いつ思い出しても笑うしかねえ」

          カベポスター「愛してるぞゆりあッ!」

          針の穴を通すようなこと、早織の朝

          小さいころ、秒針が進んでいくのを見るのはなんだか怖くて嫌いだった。でも、1秒1秒刻む針の音を、ぼーっとしながら聞いてるのは好きだった。心臓の音はその位置に触れないと気づけないけど、目を閉じて耳を傾ければ、秒針の音は聞こえる。進んでいく音。時間とともに自分もこの世界に揺られ流れているような、不思議な心地よさがあった。 耳がいいと、よく褒められた。 地元のふれあいプールに行っては、スイミングスクールで習ったばかりの泳ぎを母に披露するような小学生だった。その日のお披露目はひたす

          針の穴を通すようなこと、早織の朝

          煙の行方②

          ばあちゃんが死んでから、100日が経った。 2022年10月18日 ばあちゃんの百箇日 2022年10月18日 私、24歳の誕生日 今日の朝までの、私の誕生日という未来とばあちゃんの死という過去が交わった瞬間の断片を残しておきたくて書く記録。 2022年7月14日(木)通夜式後、奈良にて 正体も所以も分からずじまいな、でもとにかく厳かな恰好で、正体も所以もわからずじまいな、でもとにかく厳かなお経を読んでばあちゃんを向こうの住処に送り届けてくれたお坊さんが残していった

          フジファブリック「赤黄色の金木犀」

          意識的に、ではなく、気づいたら琉花は、深呼吸をしていた。 ―――あ、久しぶり。この香り。このにおい。 琉花の嗅覚とひとつの記憶を呼び起こしたのは、秋の到来を最もわかりやすく伝えてくれる風物詩筆頭にあがるだろう、キンモクセイの香りだった。 琉花は自分の名前に漢字が含まれていることをきっかけに、物心ついた頃から「花」に幾分かこだわりがあり、それは「花の名前は漢字で覚え、漢字で書く」という文学少女チックな一面に現れたりする(他には、何かを例えるときに花言葉や香りを引用する、日

          フジファブリック「赤黄色の金木犀」

          「追いかけるな、期待をするな」耳触りの悪い警告音。失敗を繰り返すのは、その失敗で負った傷をその度に浅くしたいから?あ、好き、と思った途端その人が急にキラキラして見えた、でもいつもその人には恋人が居た。学生時代の現実感のまるでなかった恋を思い出す。耳だけでなく口の中もざらり、苦い。

          「追いかけるな、期待をするな」耳触りの悪い警告音。失敗を繰り返すのは、その失敗で負った傷をその度に浅くしたいから?あ、好き、と思った途端その人が急にキラキラして見えた、でもいつもその人には恋人が居た。学生時代の現実感のまるでなかった恋を思い出す。耳だけでなく口の中もざらり、苦い。