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編集部員が選ぶ、年末年始におすすめしたい本。

こんにちは。本日(2023年12月22日)はいつもゲラに埋もれた世界の編集部ですが編集部員一同で大掃除をしました。こころなしかいつもより爽やかな空気が漂っているような……?
 
イースト・プレスは神保町のとあるビルの7階と8階にあるのですが社員の中で密かに「9階」(階段の踊り場なんですけれどね……)と呼ばれている、お昼休みなどに外の空気を吸うスペースがあるのです。そんな9階で編集部の入社3年目のナカノと入社1年目のカナザワが年末年始におすすめしたい本を紹介しあっていたので皆さんにもお知らせします。

■ナカノのおすすめ

『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』
著者=枝廣淳子
定価=1,980円(税込)
ISBN=9784781621760
発売日=2023年2月25日
判型=四六判
ページ数=320ページ
発行=イースト・プレス

ネガティブ・ケイパビリティとは、一言で言うと、何かを「しないでおく」能力のこと。
たとえば、誰かに悩み相談をされたとき、相手の話をじれったく感じてしまって「だったらこうすればいいんじゃない?」とアドバイスしたことはないでしょうか。
相手のためを思った発言かもしれませんが、実際は自分自身の居心地の悪さを解消するために、話を終わらせたかっただけかもしれません。
 
積極的に「行動する」「介入する」「意思決定する」ポジティブ・ケイパビリティに比べ、ネガティブ・ケイパビリティは“弱い能力”に見えるかもしれません。でも、簡単に「反応しない」「結論を出さない」「思考停止しない」「切り捨てない」「不安や恐怖、非難にも屈しない」ことは、すぐに「行動する」よりも難しいんですよね……。
 
私自身も公私共に思い当たることが多々あったのであらためてこの本を読み返したら、年末年始の時間のあるときにぴったりな一冊だなと思い、おすすめします。



『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』
著者=麻布競馬場
定価=1,540円(税込)
ISBN= 9784087880830
発売日=2022年9月5日
判型=B6判
ページ数=192ページ
発行=集英社

ベストセラーなので、すでに読まれた方も多いかとは思いますが、「なんとなく一冊、本でも読んでみようかなぁ~」「XとInstagramを往復していたら数時間消費していた……」という方にはおすすめです。
 
「タワマン文学」「Twitter文学」と呼称されている20の短編を収録。「30まで独身だったら結婚しよ」という短編は、30歳になった主人公が、結婚した元・彼氏の新居を訪ねるのですが、その場所は、今この文章を書いている私の住んでいる街が舞台でして。主人公は、その街の住人を「二子玉マダム」の「ジェネリック品」だなと感じます。ネットで調べると、価格は主人公が清澄白河に買ったタワマンの半値くらいと見下す材料はたくさんなのですが、現代にいそうな人々、新しい情報ツールがもたらす失敗。他人との比較も自分の価値も数値化、可視化される時代の辛さが「軽快」に書かれています。



■カナザワのおすすめ

『字源の謎を解く』
著者=北嶋廣敏
定価=880円(税込)
ISBN=9784781680446
発売日=2018年5月8日
判型=新書判
ページ数=192ページ
発行=イースト・プレス

年末年始といえば、「今年の漢字」の発表や、年明け半月ほどしか世間に意識されない干支など、漢字に思いを馳せる機会が多いですよね。初詣で神社に行くと旧字体や見たことないうえに読み方の見当すらつかない漢字がたくさん見られて嬉しいです。私は毎年そのために初詣に行っています。
 
そんな時期にぜひおすすめしたい本が、イースト新書Qの『字源の謎を解く』。
小学校で習って以来当たり前の存在である常用漢字たちですが、実は意外な出身な子たちが多いんです。
 
例えば2024年の干支である「」は、「ハマグリが貝殻から足をだして動いているさま」から生まれて「うごめく様子」を意味しています。(『字源の謎を解く』102ページ「唇」より)
 
思い返せば他にも、振・震・娠・賑など辰がつく漢字は動いているイメージがありますね。だんだんかわいく見えてきました。
他にも「『』のなかにはなぜ『』がいるの?」「『』って『』が過剰じゃない?」など、言われてみれば!な疑問を次々に投げつけられてはテンポよく解決してくれる一冊です。


さて、東洋の文字を扱った書籍を紹介したので、次は西洋に行ってみます。


『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』
著者=セシリア・ワトソン
訳者=萩澤大輝/倉林秀男
定価=2,420円(税込)
ISBN=9784865283839
発売日=2023年9月6日
判型=四六判変
ページ数=192ページ
発行=左右社

、みなさんはご存じでしょうか。
日本語では泣いているときくらいしか使われない、悲しい子です(;ω;)
いわゆる句読点に分類される記号なのですが、意味を調べると「ピリオドとコンマの間くらいのニュアンス」と、ふんわりした説明が出てきます。
 
本書はそんなセミコロンが巻き起こした大事件をおもしろおかしく紹介する文化史の本です。
大事件というと大げさに聞こえますが、実際にセミコロンのせいで終身刑が死刑になった人がいたり、突然禁酒法が発令されたりしています。ちゃんと大事件です。
 
「はじめに」を開くと書き始めから「セミコロンはあまりにも不快」だとか「最恐の句読点」だとか「意味があるとすれば、せいぜい大卒アピールになる程度」など、本書の主人公がボロクソにディスられています。(いずれも書き出し1ページ目、著者の主張ではありません)
 
本筋にはあまり関係ないのですが、読んでいたらおもしろいことが知れたので紹介します。
古文でよく見る、「反語」を表す記号があるらしいです。(「○○だろうか?いや、ない」ってやつですね)
クエスチョンマークを左右反転させたもので、
どうしてそんなことが言えようか؟
みたいな使い方をします。
 
そしてなんとこの子の名前、「プンクトゥス・ペルコンタティウス」っていうらしいです。かわいい!


カナザワ「以上二冊を紹介しました。読まない理由なんてあるでしょうか؟
ナカノ「あれ、でも、カナザワくん、『字源の謎を解く』は在庫僅少かも……?」
カナザワ「あっ!申し訳ございません!それではぜひ電子でお求めを…!代わりと言ってはなんですが、イースト・プレスで2023年に出た中で紹介を諦めきれなかった個人的に推したい本を三冊挙げておきます!」



眺めているだけでも楽しい
『本能スイッチ』(博報堂 ヒット習慣メーカーズ・著)


街歩きに革命が起きる
『パブリックアート入門』(浦島茂世・著)


Part7での伏線回収はもはやミステリー小説
『AIに意識は生まれるか』(金井 良太・著、佐藤 喬・構成)



(おまけ・今年を振り返ってみる)


Q.今年、楽しかった思い出や嬉しかった経験は?
ナカノ「the dadadadysのライブを何度か観れたことと、フジロック・フェスティバルで観た思い出野郎Aチームがすごくよかったなぁ。
あと、編集を担当した『本能スイッチ』が、テレビ東京の報道番組で特集してもらったこと! すごく不思議な気持ちになった。」

※映像はこちらです。再生回数も10,000回を超えました!

カナザワ「やっぱり4月にイースト・プレスの内定を知らせるメールをもらったときですね。電車に乗っているときだったので感情の矛先が分からず、とりあえずいったん降車した記憶があります。」
 
Q.今年いちばんドキッとしたことは?
カナザワ「昨日、寝転がっていたら飼い猫が顔に向かって飛んできたときです。」
ナカノ「昨日! タイムリーやな~。私はつい先日、完璧なかたちで入稿したと思ったら奥付が存在してなかったことですね……印刷会社さんに感謝……!」
カナザワ「ナカノ先輩でもそんなことがあるんですね……初心忘れるべからず」
 
Q.「仕事・プライベート」を問わず何冊くらい本を読みましたか?
カナザワ「感覚ですがざっと150冊くらいかと思います。じっくり読んだのは40~50冊くらいかと。」
ナカノ「ええっ!すごっ!と思ったけれど、なんだかんだでわたしも月10冊は読んでることに気づいた……。仕事として読む本と個人の趣味で読む本の境目はあえてはっきりさせてるかも。」
 
 
Q.今年、時間やパワー、お金を費やしたことは?
カナザワ「マンガをたくさん読んだことですね。Kindle見たら今年はマンガだけでも300冊以上買っていて自分でドン引きしました。流行っている作品をちゃんと読もうと『呪術廻戦』とか『僕のヒーローアカデミア』とかまとめ買いしてしまい……」
ナカノ「300冊!すごい。わたしは『コミックDAYS(講談社が運営する漫画アプリおよびウェブコミック配信サイト。)』の単話課金がどうしてもやめられない……お酒飲んだ夜の帰りの電車とか、大変なことになる……。今年時間やパワーお金を費やしたことは、“臆せず人に会う”だったかな。著者さんやライターさんや他社の版元さんや書店さんや取次さんともいろいろと情報交換できた年だった。あと、立ち飲み屋さんで初めて会った人との会話で企画が生まれたりもしたね。」
カナザワ「えっ、なんの企画なんだろう……」
 
Q.今年、いちばん大きく変化したことは?
カナザワ「無意識逆張りをやめようと頑張っています。流行りを追っています。」
ナカノ「おおお!それは確かに大きな変化。でもカナザワくんの逆張りも好きなので臨機応変にやってほしい。わたしは息子(10歳)がスマホを持ち出したことでしょうか。LINEと通話しかできない設定なんだけど、めちゃくちゃ便利……宿題やったとか、〇〇公園に●●君といるよ、とか安心するんだよね」
 
Q.今年やりたかったけど、できなかったことは?
カナザワ「知らない駅で降りて散歩をしたかったのですが、気づいたら寒くなっていたのでまだしていません。来年暖かくなったらやります。」
ナカノ「内定したときに思わず降車した駅を探ってほしいな~。わたしはZINEを発行する予定だったのですが、かなわず……。来年は文学フリマに出店したいなと。」
カナザワ「おお!買いに行きます!」
ナカノ「NO!」
 
Q.最後に、神保町で好きな場所(飲食店)は?
ナカノ「わたしは『無用の用』という書店さんにいりびたっています。
店内のスペースでコーヒーやお酒も飲めるし、いつまでも本が読めるし、店主さんや他社の版元さんともよくおしゃべりしてます。
ランチは会社の近くにあるスリランカ料理のタップロボーン一択!
好きすぎてなるべく月に一回のルールにしてます」
カナザワ「僕は神保町ブックセンターです。岩波文庫に囲まれてコーヒーを飲んでいる時間は生きてるなあ~って感じします。……というのは表向きの回答で、実際にはすき屋かマックしか行かないですね。牛丼チェーンの新商品なら僕に任せてください。……かなしい。」
ナカノ「今度ランチ行こうか……!」
 
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今年もイースト・プレスの本を読んでいただいた皆さん、ありがとうございます!

2024年も好奇心を刺激する本との出会いを!



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