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2社目

 こっちの会社は訓練校で人気があった方の職種であるメンテナンス業務の募集だった。しかしビルメンテナンスではなく、工場の機械のメンテナンス。ご多分に埋もれていたっこともありこの時には第一希望の会社だった。規模的にはとても大きい繊維の有名企業で入ることができれば万々歳。求人票では給料は20万ちょいで残業代は別途支給。土日祝は休みで未経験でも応募は可能とのことだった。なかなかいい条件である。


 さてネットで検索して出てきたこの求人だが応募には別の会社の人材派遣会社の登録をしてからでないとできないという。そもそもそんなところに世話になるつもりなんてなかった私だったがとりあえず個人情報を登録した。登録が終わると面接をするので履歴書をメールで送ってほしいと連絡が来た。求人票には何次面接で決定などとも書いてなかったので個人情報登録しただけでもう面接始まるのかぁとタカをくくっていたが蓋をあければ人材派遣会社の面接であったので肩透かしを食らった気分になった。

 

 人材会社との面接はWEB面談だった。パソコンは彼女から借りたものが使えるが、音声を送る手段がなかったので前日にハンズフリーのマイクをコンビニに買いに行った。しかし面談当日になると途端に使えなくなる始末。しまいには電話面談になった。2500円のダメージを受けた。電話面談自体は今までの経歴と現在の活動状況と求人への志望動機を聞かれた。 


 次の日電話がかかってきた。昨日私を面接した女性とは違い男性だった。彼は自身のことを『転職エージェント』とは名乗らなかったのでなんの人かわからずたじろいだが、電話の内容はというと面接が決まったので時間のある日を教えてほしいとのことだった。
 仮にこの男性エージェントの名前をトヨサキとしよう。彼の名前は人材派遣会社の登録の際に『担当者』として記載されていた。ネットで彼の名前を調べたところ、人材派遣会社のブログが出できた。愛媛県出身で趣味は野球。何年か前までは愛媛で働いていて、大阪に転勤になったらしい。転職の相談相手として人柄が知りたかったのでこの辺の話を彼とのやり取りで出したところ『社会人的に打ち解けた』会話ができた。


 私もこれからの人生二回も三回も職を変えるつもりはない。ということで転職には慎重でいたい。そういう中での転職エージェントなのだからせめて信用できそうな人間に頼みたい。そんな中でネットに転がっていた彼についての情報を彼にぶつけて会話を試みたわけだがあまり印象はよくなかった。    先ほどの『社会人的に打ち解けた』を簡単に言い換えるとヘラヘラした印象だった。彼のこれまでの人生について何を知っているわけでもないが、上下関係が厳しくて怖い先輩がいっぱいいた環境にいたからとりあえずうなずいて笑うのだけはとても得意な人物という印象だった。とてもフランクな口調ではあるが私には彼の言っていることは全て箸にも棒にもかからない液体のような音だった。最初の求人は自分が選んだにしても、この人の職務上私にいろいろな働き口を紹介してくる仕事をしている人間ではあるわけで慎重にこれからの職を見つけるパートナーとしては良いとは思えなかった。
 しかしエージェントがいけ好かないのはあるが自分で選んだここに就職できればいいなとその時は思っていた。

 会社そのものの面接は一月の末の二時からだったと思う。十分前ほどに守衛のところに行き面接で来たと伝えると年老いた彼は聞こえなかったのか「撮影のスタッフさんですか?」と聞いてきた。まぁ元々そうではあるけどもそもそもこの工場で何を撮影するのだろうか。守衛にまで私の履歴書が回っていたのだろうか。

 少しすると入口まで人事部の人が迎えに来てくれて最初は待合室に通された。部屋で一人で待っている間カレンダーに目をやると一月のまんまだったので二月にめくり替えておいた。時間になると先ほどの人事部の人がやってきてやはり会議室に通された。


 最初から役員が人事部の人と合わせて5人いた。面接的には今までの経歴だったり前職を退職した理由だったり普通だった。しかし前職が不規則な生活リズムな上に休みも不定期で給料も安かったことなどをしゃべった後に向こうも私のバックボーンと体力のことで安心したためか求人票とは違うことを役員が言い出した。


 「メンテナンス部の仕事は生産部が休みの日に行うことがほとんどなので土日の出勤がほとんどですが大丈夫ですか?」


 あれ?書いてたのとちゃうやん。となった。もちろん代休はとらせてもらえるらしいがこれを聞いたときは騙されたように感じた。前の会社が前の会社なのでいい条件が書かれていたので余計に希望を抱いていたのもある。しかし考えてみるとたしかにそうで、機械が動いている現場にわざわざ出て行ってなんか作業をするのは邪魔よなと納得できた自分もいた。勉強不足だったなと思う。

 面接が終わるには終わったし第一希望だったのだが求人票に書いていることと休み方が違っていたためなんというか一抹の不安が生まれた。

 しかし何といってもその時は一月の末の方、一社目は内定を頂けたのだが二社目のの内定を待っていては期限には当然間に合わないので向こうの都合も考えて内定は辞退させていただいた。


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