5社目
うだうだ言ってられない。細かく言えば7回目の応募になるがネット上での応募はカウントせずにタイトルをつけた。見つけたら応募するしかない。応募したくなる求人が出てくるだけまだマシである。
これもまたネットで見つけた求人だったが、地域の求人サイトが載せているものでそこに個人情報を登録するだけで応募することができたのですぐに応募した。
その会社は主に金属加工をしている会社で募集はそこの小さな部署の機器の組み立ての募集だった。あくまでも経験者の募集だったが主に手先を使う作業のようではんだごてやドライバーを使った作業が主とのこと。基本給は20万、手当としては家族手当、残業手当など。ほぼ土日祝休みで賞与は年に二回とのことだった。条件はまずまずいい。応募の手続きの連絡を済ませるとすぐにメールが来た。
今までの応募のスタイルとしては先に書類をメールなり、郵送なりで送って書類選考を受けてから連絡が来て面接を受けるのが常だった。しかしこの会社はそういうのをすっ飛ばして面接をするから履歴書を持ってきてほしいとのことだった。バシバシ段取りが取れていきなんだか気持ちがよかった。
面接に会社に向かうと初老の人事の人が迎えてくれた。むこうは開口一番「綺麗な頭やなぁ」だった。まぁそれは良い。やはり会議室に通されると次々に役員が入ってくる。また五対一だ。いつもの通りの面接、志望動機に退職理由を答えていく。未経験と履歴書を読むまでわからないのにちゃんと面接はしてくれた。向こうは訓練所で取得した資格について興味を抱いてくれていてなかなか好感触だなと思った。
面接の最後の「他に何か聞きたいことはありませんか?」が来たので
「賞与の実績について教えていただけますか?」
「基本的に原則年二回としているのですが、去年はコロナの影響もあって一回だけ支給しました。」
また書いてることと違うこと言いよる。というより実績が聞きたいので具体的に何か月分が出たのかが聞きたかったのだが、去年の業績が振るわなかった5人のお偉い方を相手を前にしてそれ以上詰めることもできず「ありがとうございます」とだけ言って面接は終わった。
合否は一週間後と社長は言っていたがその連絡のメールは2日後の木曜日に来た。結果としては内定をもらったのだが正直先ほどの賞与の件などあって悩ましかった。未経験でも内定もらったのだから喜でもいい方だとは思うのだがどうも気持ちよく快諾できなかった。さっさと決めてしまいたい気持ちはあるにしても尻がすぼむ。
次の日の夕方ごろにでメールで「面接のときに聞けなかったけど結局去年の実績は何か月分なん?」と聞いた。わざと就業時間ギリギリに送って週明けに返事をもらうつもりだった。
ところが驚くべきことに返事は次の日の土曜日に来た。「あれ?土日祝の休みと違うのん」とちょっと嫌な予感がした。賞与についての具体的な答えとしては去年の実績は具体的に書くのは控えようとは思うが、「確かにそれを記載したところで応募数は見込めるような実績ではないわな」という数字である。では昇給率の方はどうだろう。そういえば聞いていなかった。そこで希望が持てる額なら内定には応えられるかもしれない。
快諾への道のりがまた一歩、正直三歩ぐらい遠のく。考えあぐねているとと電話がかかってきた。社長からだ。ゲッとなり、出なかった。しばらくしてから考えをまとめて電話をかけなおす。
社長は電話でのほうがほかにも質問があればすぐに答えられるからかけてきたという。誠実な会社ではないか、とも考えられるが私からすると詰められているような気分だった。
改めて質問に対して彼は答えてくれた。賞与に関しては毎年必ず出している。去年はコロナの影響でああいった結果に終わったが今年に関しては裁き切れない量の仕事が入っているとのことだ。業績によるものが大きいが去年よりかは見込めるというニュアンスは伝わってきた。
では次に昇給率について聞いてみた。「千円ほどです」と社長。「なるほど」と私。この時正直焦っていた私は聞くことを聞いてさっさと電話を切って改めて考えたかった。
最後に社長に聞いた。「今日は土曜日ですけど出勤なさってたんですか?」
「ちょっと私だけで作業することがありまして、もう終わってはいたんですけども」
そうですか~お疲れ様です、年収なども改めて計算したいのでまた週明けにかけなおします~と答えて電話を切った。
その電話から二日間悩みに悩んだが断ることにした。理由としては正直会社的にそんな安定はしてないんかなという事、「去年がこのぐらいの年収だったから、今年もこんなもんなんかな」という計画が立てずらい会社なのではないかと思った。そして昇給についてだが、一年で千円上がるのであればつまり月給を一万円上げるのに十年かかるという事だ。賞与の問題に関してもだが将来が見えにくい。社長が休日出勤しているのには好感が持てるが、結局それは人不足であるのと同じで正直不安だなとも感じた。