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The Roots

Take Roots

今からちょうど10年ほど前、Londonのとある古着屋のお話です。

ロンドンの9月頃というと季節の変わり目で湿度も無くからっとした夏の陽気から少し肌寒くなる頃、街は少しグレーがかったレイヤーに覆われ、とても神秘的な雰囲気。この頃はロンドンファッションウィークも行われ、仕事や課題に追われる日々ではあったが、当時は高揚感に胸をどきどきさせていたのを今もしっかりと覚えている。

そんな街を気の向くままに散歩をするのが休日の日課であった。
少しカビ臭い匂いと、独特なお香が入り混じった匂いに誘われ、足早に住宅街を進むと、そこには大量の洋服が山積みになったお店があった。

East end thrift store

多くの服が乱雑に置かれ、当時はオープンしたてだったのか、お店のドアのみが開いており半無人状態、人の姿は見当たらないが恐る恐る中に入ってみると、辛うじて奥の部屋から工業用のミシンの慣れ親しんだ音が心地よく響いていた。

整理しきれていない大量の洋服を前に、好奇心を抑えきれず作業中のお兄さんを横目にひたすら面白い服がないか夢中に探していた。

そんな日々が何日か続くと、お店のご厚意で工業用ミシンやアイロンをその場で貸していただき、簡単な洋服の解体や、リメイクをその場の環境で行うことができ、洋服の理解を深める事ができとてもいい経験になった。

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よくお客様から何で浅草橋にアトリエを構えたのですか?
と聞かれることが多いのですが、私が洋服を学んだ土地、ロンドンで最初に住んでいたのが東の地区、Hackneyと呼ばれるところでして、帰国してから初めて上京してきた場所ということもあり土地感がわからず、とりあえず馴染みのある東側を最初に探していたというのが理由です。

そんな東の果てにできた弊社アトリエ併設のギャラリースペースですが、洋服の生産工程で聞こえるミシン音やアイロンのバキューム音がBGMとして流れる非日常的な空間が誰かの新しいルーツになるような、そんな体験を提供できるような場所にしていきたいという思いでオープン致しました。

また、前回のNoteでスタッフが述べたように、ギャラリースペースとして体一つで[洋服]を体験できる場所にしたいと思っておりますので、少しでも気になった方は是非ご足労いただければとても嬉しいです。

私も作業をしながらになってしまいますが、Hey men come in! Let me know if you need any help!と皆様に声をかける準備をしてお待ちしております。

Nobuyuki Matsui

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