こんなともだちはいらない
かけがえのないの存在といえば、家族と友人だろう。
特に友人は家族と違い、血縁関係を超越した特別な存在といえよう。
個人に置き換えて、果たして友人と呼べる特別な存在はどれだけいるのだろうか…
正直、五本の指で足りる程度である。
いや、本音をいえば、五本もいらない。
五本以上となると、それはもはや特別ではないのだから。
で、今回はこの様な作品を紹介したい。
「Dogman」カタカナで訳すと「ドッグマン」
この作品を語る上で事細かに説明するよりも、概要を語る方が手っ取り早いだろう。
個人的な感想を述べるならば、暴力を交えたおとぎ話だ。
もっと率直にいうと、ジャイアントのび太くんの屈折した友情物語でもある。
主人公のマルチェロは温厚な性格で、周囲からも好かれる存在だ。
苦労をして「ドッグマン」という犬のトリミングサロンを経営している。
一見すると、ここまで語るとマルチェロは器用に思えるだろうが、実際は不器用で離婚歴がある孤独な男である。
しかし、不器用ながらも何事にも真面目に取り組み、何よりもかけがえのない娘がいる。
前妻とは離婚をしたとはいえ、普段娘は前妻と暮らすのだが、定期的に父親であるマルチェロと生活を共にする事もある。
ここまで話すとマルチェロの生活は純分満帆といっても過言ではないだろう。
なぜならば離婚した場合、殆どのケースは親権を争い泥沼化する事が多いからだ。
しかし、マルチェロを悩ます種は他にある。
それは街で嫌われ者で横柄な性格であり、気に入らないとやたらと暴力を振るうシモーネの存在だ。
荒くれ者のシモーネは、欲望に任せるがまま自由奔放に街で大きな顔で我が道を歩む。
この様なわがままな人間は間違いなく誰もが嫌って当然だ。
ある日、マルチェロの友人の店でゲーム機で遊んでいたシモーネは負け続きだった。
その腹いせにゲーム機を壊そうとした。
店の主人は穏便に済まそうとシモーネが使った代金を返金するも、内心は腹立たしく思い怒りに満ちていた。
数日後、またもマルチェロの友人と口論の末、シモーネはその友人に大きな怪我を加える。
流石に周囲はシモーネに対し不満を漏らす。
ある一人が外部の人間を雇いシモーネの後始末を頼もうと述べる。
もう一人は、そこまですると仕返しが怖いから、警察に通報したほうがいいのでは?などと答える。
かと思えば、もう一人は警察に通報しても二ヶ月後に戻り、さらに倍返しを食うのは目に見えていると言いつつ、会話は袋小路へと追いやられる。
いつもの様にマルチェロは仕事を済ませ店じまいをしようとした時の事。
突然シモーネがやって来て、隣に通じる壁は薄いよな?とマルチェロに尋ねる。
シモーネが言いたい内容を把握できないマルチェロは再度シモーネに尋ねると、隣はマルチェロの友人が営む金の買取店であった。
シモーネは大胆にも壁を壊し店を襲うとマルチェロに告げる。
それはできないとマルチェロはシモーネを説得する。
だが、シモーネは言い出したら相手の声に耳を貸さないタイプだ。
するとシモーネは力づくでマルチェロを脅し店の鍵を奪われ、単独の犯行と見せかけ店を襲うのだ。
次の日、マルチェロはいつもの様に店に向かうと、多くの警察官と野次馬が店の周囲を取り囲んでいた。
内心、マルチェロはシモーネが強盗をした事を知りつつ、警察に事情聴取を受けると何も知らないと突き返す。
マルチェロを怪しんだ警察官は警察署に連行し事件の真相を探ろうとする。
警察官はおおよその予想は付いていた。
事件の背景にシモーネがいる事を。
そこで警察官は、マルチェロに自白をすれば執行猶予を付けるからシモーネの犯行だと自白しろと迫る。
一瞬マルチェロはためらうも、シモーネの仕返しを恐れていてか、自白する事なく一年間刑務所で過ごす事となる。
出所後のマルチェロを向かい入れる者は誰一人いなかった。
今まで慕っていた周囲の友人さえもマルチェロに対し裏切り者扱いだ。
孤独を感じたマルチェロはシモーネの元に歩み寄る。
お前のために自白を拒んだのだから、それなりの代償を払ってくれと。
だがシモーネは代償を払うどころか力づくでマルチェロを追い出す。
心身共に傷を負ったマルチェロはシモーネに裏切られたと悟る。
力では到底シモーネに敵わないマルチェロは周囲の信頼を戻す行動に打って出る。
ドラえもんで例えるならば、のび太くんはどう足掻こうとジャイアンには決して勝てない。
ドラえもんもいなければ、四次元ポケットもないのだから。
では、マルチェロが出した答えとは…
後は観てのお楽しみですね♪
お話はここまでにしておき、この作品を監督したマッテオ・ガローネ氏は以前に「ゴモラ」という犯罪組織を描いた映画を発表している。
因みにこの作品はかなり骨太でハードな内容だ。
組織間の抗争を軸に血で覆う事実に基づいた内容だ。
今回紹介した「ドッグマン」も暴力描写が容赦ない。
いずれも実際にあった事件を題材している様だ。
気になる方は是非ともチェケナウってな具合で♪
わーお!