FIT制度でソーラーシェアリングは自家消費が免除!今後の展望も期待
株式会社アースコム 代表取締役の丸林です。
2020年度に行われた法改正によって、FIT制度 (固定価格買取制度)において「地域活用要件」が設けられました。
「地域活用要件」の設定により全量売電ができなくなる太陽光発電所が出てきましたが、ソーラーシェアリングを行う営農型の太陽光発電所は一定の条件を満たせば全量売電が可能です。
今回は、地域活用要件で重要なキーワードとなる「自家消費」について解説。
自家消費とはそもそも何なのかや、ソーラーシェアリングでは自家消費の必要がないが他に満たすべき条件に何があるのか、今後の展望についてお話します。
FIT制度でソーラーシェアリングにおいては自家消費が免除!
FIT制度は固定価格買取制度ともよばれる制度のことで、一定の期間、決まった価格で発電した電気を電力会社が買い取ってくれることを確約するものです。
FIT制度は制定当初からずっと同じ内容ではなく、太陽光発電やその他の再生可能エネルギーの普及状況などに合わせ、改正が加えられています。
2020年度の法改正によってFIT制度に加えられたのが「地域活用要件」とよばれる認定基準です。
地域活用要件を満たさない発電所はFITの認定が受けられません。
地域活用要件について簡単にまとめると以下のようになります。
【対象】
10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電所
【満たすべき要件】
発電した電力のうち30%以上を自家消費すること
災害時等に自家発電ができること(自立運転機能)
なお、ソーラーシェアリングの発電所の場合は、たとえ10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電所であっても、自家消費をする必要はありません。
自家発電さえできれば全量売電が可能です。
ソーラーシェアリングの魅力は、営農と発電を両立できるところ。
農業収入は不安定になりがちですが、太陽光発電の売電収入によって収益が増える点は大きな魅力です。
発電は日光が出ていれば1年中でき、電力の買取価格も一定期間決まっているので、将来的な収益の見通しも立てやすいというメリットがあります。
ソーラーシェアリングは全国的にはまだ取り組み数が多くはありませんが、年々右肩上がりで増加しており、実施件数が増えていく中で、育てられる作物の種類が非常に多いことも分かってきています。
ソーラーシェアリングにおいて自家消費は必要ないものの、もちろん全てを自家消費することもできます。
農機具やビニールハウスなど、農業においてもエネルギーを必要とするものは多いです。
原油価格が高騰する中、自前で発電した電力を使えるというのは経営的に見ても非常に強いと言えるでしょう。
地域活用要件おいて、ソーラーシェアリングでも要件として設定されている「災害時等に自家発電ができること」(自立運転機能)について、詳しく説明していきましょう。
ソーラーシェアリングでは免除の自家消費とは?自立運転機能も解説
地域活用要件における自家消費とは「発電した電力のうち30%以上を事業などに使うこと」を指しています。
自家消費ができるかどうかを証明するために、設備認定の際に「自家消費等計画」の策定・提出も義務付けられました。
ソーラーシェアリングでは自家消費は免除ですので、要件として満たす必要はありませんが、簡単にご説明します。
自家消費等計画には以下の内容の記載が必要です。
申請を受ける設備の発電量見込み(年間)
自家消費する電気の使用用途と電力量見込み(年間)
上記①、②を元に計算した自家消費率(年間)
ちなみに、30%という自家消費率は、住宅用太陽光発電の平均的な自家消費比率の実績がおおむね30%となっていることに起因します。
事業所の自家消費率については、資源エネルギー庁が2019年に試算した以下のモデルケースが参考になります。
24時間365日電力が必要なコンビニエンスストア…78%
平日昼間のみ大きな電力需要がある業務ビル・工場…71%
なお、既存の建造物に太陽光発電設備を設置する場合は、過去1年間の電力消費量がわかる資料も必要です。
さらに、計画に沿った自家消費が行える設備かどうか、設備構造の確認も行われます。
それに伴い、事業開始後の自家消費率についても確認がなされ、自家消費率が30%に満たない場合は認定取り消しとなるため注意しましょう。
事業開始後の状況確認については以下のような書類が必要となりますので、必ず保管をしてください。
保管・記録期間については最低3年間が望ましいです。
電気事業者との需給契約に係る電気料金請求書など・検針票
パワーコンディショナーに表示される発電電力量の画像など、発電量が確認できるもの
ソーラーシェアリングでは自家消費は免除だが自立運転機能が必要
ソーラーシェアリングでは自家消費は必要が無く全量売電が可能ですが、もう一つの地域活用要件である「災害時に自家発電ができること」は満たす必要があります。
災害時、つまり、該当の太陽光発電所を含む一帯が全域停電をした場合に、電力を他から引っ張ってくることなく自前で用意し、停電解消のための発電を行えるか、ということです。
このようなしくみを「自立運転機能」とよびます。
自立運転機能をもった発電所にするためには以下の二つの設備が必要です。
自立運転機能があるパワーコンディショナー
給電用のコンセント
太陽光発電において、パネルが日光を受けていれば発電は絶えず行われます。
しかし、それを私たちが使う「電気」として使うためには、パワーコンディショナーによるエネルギーの変換作業が必要です。
パワーコンディショナーも機械設備なので、動かすためには動力、つまり電気が必要です。
自立運転機能がないパワーコンディショナーの場合、電気をもらわなければ機械を動かすことができません。
つまり、付近一帯の電力系統がすべてダウンし、全く電気が使えない状態になっても、自力で発電し、電力を供給できる設備が求められているということです。
ソーラーシェアリングの現状と今後の展望について
今後、ソーラーシェアリングはますます日本の農業のスタンダードへとなっていくことが考えられます。
信じられないという方もいらっしゃるかもしれませんが、30年、40年前に、一般家庭の屋根にソーラーパネルがひしめく風景や、広い土地いっぱいに敷き詰められたソーラーパネルが日本各地で見られることを想像できましたか?
近年はSDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択され、世界中の国が目指すべきゴールが設定されました。
クリーンエネルギーの普及もその一つです。
太陽光発電をはじめとするクリーンエネルギーの普及は、さらに加速度的に進んでいくと予想されます。
SDGsの目標の一つに「陸の豊かさを守る」というものもある通り、農業を守ることも大切な目標なのです。
ソーラーシェアリングでは農地の一部を転用し、そこに支柱を立ててソーラーパネルを設置するというもので、一時転用許可申請は3年ごとに行うことになっていました。
現在、ソーラーシェアリングの成功事例が増えてきていることなどから、申請期間は10年に延長されています。
育てられる作物も多く、営農と発電の両立ができることを証明してくださっている先人たちの努力の結晶とも言えるでしょう。
このように、ソーラーシェアリング導入のネックの1つであった申請の回数が少なくなったことにより、ますます参入が増えていくことが予想されます。
実際に、ソーラーシェアリングの申請数・設置数は年々増加しており、ソーラーシェアリングが日本の農業のスタンダードとなる日もそう遠くないかもしれません。
ソーラーシェアリングは自家消費不要だが自立運転機能は必須要件
法改正により、FIT制度の認定要件に加えられた変更が、10kW以上50kW未満の小規模太陽光発電所における地域活用要件の設定です。
地域活用要件では、発電した電力の30%以上を自家消費することと、災害時等に電力を供給できることの二つが求められています。
ただし、ソーラーシェアリングを行う発電所では自家消費要件は免除されており、全量売電が可能です。
災害時に電力を供給できる、つまり、他から電気を供給されなくても発電所で電力がまかなえる自立運転機能が求められています。
ソーラーシェアリングは今後ますます日本で普及していくことが予想されます。
農業とクリーンなエネルギーは両立可能です。20年、30年後は、ソーラーシェアリングが見られるのが当たり前になっているかもしれません。
アースコムでは福島の耕作放棄地を利用し、ソーラーシェアリングで太陽光発電投資を行った事例もあります。
日本の農業を担う新たな取り組みとしてメディアでもご紹介いただきました。
太陽光発電投資や環境事業投資にご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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