ソーラーシェアリングの普及率は?2021年の現状や今後について解説
株式会社アースコム 代表取締役の丸林です。
農地にソーラーパネルの支柱を立て、ソーラーパネル下部で営農を行いながら、同時に発電も行う「ソーラーシェアリング」。
これからの日本の新しい農業の形として、ここ数年注目を集めています。
今、ご覧になっている方の中にもソーラーシェアリングを導入してみたいとご検討中の方もいらっしゃるかもしれませんね。
ただ、そんなときに気になるのが、ソーラーシェアリングの普及率ではないでしょうか。
新しい技術であるため、現状どのくらい活躍しているかは検討材料として知っておきたいところかと存じます。
そこで今回は、ソーラーシェアリングの普及率についてのお話です。
今のソーラーシェアリングを取り巻く状況や、今後さらに普及するために求められることについてお伝えします。
まずは「ソーラーシェアリングとは?」をおさらい
ソーラーシェアリングは「営農型太陽光発電」のことで、農地に2m以上の支柱を建ててソーラーパネルを設置し、農業を行いながら同じ土地で太陽光発電も行います。
パネルによって日陰が発生してしまうため、下部の農地への日射量不足を懸念する声もありますが、作物によっては日光が当たり過ぎないほうが生育や見た目が良くなるものもあります。
ソーラーシェアリングのメリットには以下のようなものがあります。
発電所設置に使用する土地を新たに取得する必要が無い
農業以外の収入を得ることができる
農地は一時転用扱いになるため固定資産税が上がらない
災害時に非常用電源として使用できる
発電した電力は農機具やビニルハウスなどで自家消費も可能
日光があれば毎日発電ができる
農作物は育つまで収益が発生しませんし、災害や天候不良で収穫ができなくなるリスクもあります。
ここに農業収入の不安定さがあるわけですが、太陽光発電は日が出ていれば発電します。
農地はもともと日当たりが良い場所が多いので、太陽光発電にとっても好立地なのです。
日本は、農業収入の不安定さから後継者が育ちにくいといった課題を抱えています。
アースコムでは、収入の柱を農業に付随する形で新たにつくることができるソーラーシェアリングは、これからの日本の農業においては必要な取り組みであると考えています。
ソーラーシェアリングの現状・普及率を解説!普及への問題点とは
農林水産省の統計によると、ソーラーシェアリングを行うための農地転用許可の実績は2019(令和元)年度までに累計2,653件、総面積は累計で742haです。
農地転用許可にかかわる制度が明確化された2013(平成25)年度は96件でしたが、その後は毎年右肩上がりに増えてきています。
しかしながら、農林水産省が5年ごとに行っている調査では、2020(令和2)年の農業経営体数は全国で1,076,000件。
ソーラーシェアリングの普及は好調ではないということが推察されます。
また、地域的な偏りがあるのも現状で、千葉県では自治体が積極的にソーラーシェアリング導入の取り組みを行ってきたため実施数が多く、ソーラーシェアリング先進エリアとなっています。
そんなソーラーシェアリングが積極的に導入されているエリアがある一方、全国的には普及がなかなか進まない原因はいくつか考えられます。
ソーラーシェアリングの認知度が低い
申請手続きが煩雑で難しく、認定までに時間がかかる
支柱の高さや強度アップのために設備設置にコストがかかる
初期費用が1,500万円以上と高額で、融資を受けるのが難しい農家が多い
このように、そもそもソーラーシェアリングというものが何かわからないという認知度の低さから、導入の検討すらされないといった残念な現状があります。
また、太陽光発電設備は高価なものです。
よりコストがかかる傾向にあるソーラーシェアリングでは、高額な設備費用を捻出することが難しく、潤沢な農業収入がある農家でなければ融資を受けられないという、半ば矛盾もはらんだ問題が浮かび上がってきます。
普及が進まない原因の一つと考えられる申請手続きについては「ソーラーシェアリングの申請手続きを詳しく!営農計画書の内容も」で解説しています。
あわせてご覧ください。
ソーラーシェアリングを普及させるために、今後求められること
世界的にもSDGsが目指すべき目標として定められる中、ソーラーシェアリングが日本の新しい農業の形になるのは間違いないでしょう。
では、今後ソーラーシェアリングを普及させるために、どのようなことが求められているのでしょうか。
農家主体から事業者主体へ
ソーラーシェアリングは「営農」主体であることから、農業収益も確立していることが設置の条件です。
そのため、「農業従事者」がソーラーシェアリングを導入すると考えられていました。
しかし今後は設備費用や農業にかかわる人材を豊富に確保できる「事業者」が参入することで、普及が進むと考えられます。
事業者の例としては、地元の大手企業や大手電力会社、太陽光発電設備施工会社などです。
該当の企業がない場合は、農業法人の立ち上げなども視野に入るでしょう。
若者の農業参入を促す取り組みづくり
ソーラーシェアリングの柱は農業なので、そもそも農業にかかわる人なくしては成り立ちません。
日本の農業は高齢化が深刻化しており、後継者不足が大きな問題です。
若者が農業を生業としない原因には、農業収入の不安定さ、重労働、天候不順や災害のリスクなどが挙げられます。
逆に言うと、これらの問題がカバーできれば良いのです。
農業自体に楽しさややりがいを感じてもらうことはもちろんですが、経営母体がしっかりとした「企業」の「一スタッフ」となることで、安定した収入を確保できることが重要です。
成功事例の実績を増やす
ソーラーシェアリングはそもそも認知度が低いことから、導入への不安を抱えられている方は多くおられます。
そのような方々を高額な設備費用を払ってまで参入させるためには「ソーラーシェアリングは成功する」という形を見せるのが効果的でしょう。
ソーラーシェアリング先進エリアである千葉県では、自治体が積極的にソーラーシェアリングの導入を行ったことで成功実績を着実に積み重ね、周辺のエリアにも波及していったと考えられます。
トップダウン型で積極的に取り組む
自治体や地元企業がトップダウン型でソーラーシェアリングの導入を積極的に行うことで、普及するスピードはアップします。
自治体や地元の企業が「ソーラーシェアリング」の存在自体をPRすれば、認知度はおのずと上がります。
自治体や地元の企業は情報の発信元として信用がある点も、大きなメリットです。
他には、設置に関して補助金等を出すアイディアが考えられます。
現状では補助金を実施している自治体はありませんが、2018年には秋田県南秋田郡井川町において町内の農業者がソーラーシェアリング設備を導入するとき、秋田信用金庫によるソーラーシェアリング向け融資プランを利用すれば、行政機関や自治体が一定の要件のもと利子額分を補填する利子補給が受けられる制度を開始しました。
設備費用が高額で、手続きも煩雑なソーラーシェアリング。
興味はあっても実態がよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
自治体や地元の企業が積極的に前に立ち、先導していくことで、地域を巻き込みながら取り組んでいくことも大切ではないでしょうか。
なお、ソーラーシェアリングでは3年〜10年に1度、FITの見直しがあります。
その際に下の農業が機能していないと、FITの取り消しになる仕組みです。
2018年までは、実情は指導のみで、実際に撤去に至っている事例はありませんでした。
しかし2019年の実態を発表した資料によると、8件の撤去命令が出たようです。
指導が入った際に、迅速に対応できる体制も必要とされます。
ソーラーシェアリングの普及率は上がっている!さらなる拡大に期待
農業と発電を同じ土地で同時に行うソーラーシェアリングは、年々増加しているものの、日本全体の農家数から見るとまだまだ普及率は高くありません。
ソーラーシェアリングの普及が進まない原因はいくつかありますが、申請手続きの煩雑さや設備費用が高額になることのほか、そもそもソーラーシェアリングの認知度が低いといったことが考えられます。
今後、ソーラーシェアリングを普及させるためには、自治体や地元の企業が率先して普及活動に取り組むことが大切です。
一農家に任せっきりでは波及効果は低いです。
自治体や地元の企業など、母体の大きな団体が周辺を巻き込みながら若者の参入を促し、成功実績を積み上げていくことが、ソーラーシェアリングの普及に大きな影響を与えるでしょう。
福島の太陽光発電投資物件が豊富なアースコムでは、ソーラーシェアリングへの取り組みも行っております。
太陽光発電投資や環境事業投資にご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?