組織作りの方法~Jean-Martin (JM) Fortier~
今どの業界でも人材確保は深刻な課題です。生産人口が減ってきている中でどうすれば良い人材と巡り会えるのか。そしてチームとして一致団結していく事はさらに難しい問題です。この課題についてカナダの農家で長年農場のチームマネジメントをしてきたJM Fortier流のチームマネジメント方法を紹介します。
1、採用時のポイント
①何を提供出来るのか?そしてどんな人材を探しているのか?を明確にする
まず前提として雇用される人々はあくまでも自分達の為に働きに来ている事を心にとめておく。その事をふまえて、雇用した農業会社はどういったことが提供出来るのかを明確にしておく必要がある。
例えば
・スタッフは働く事で何を学べるのか?
→慣行農法、有機栽培、自然栽培、パーマカルチャーなど
・長期間安定して、わくわくする仕事を続けられる仕組みがあるか?
・旅行者の為のユースホステルがあるのか?
・キッズスペースや障害者スペースが完備されているか?
・癒やしの場所があるか?
②農園の掲げる使命や職務内容と期待事項を具体的に説明
まずは自分の農園の使命を明確にする。
例えばJMが農場のマネジメントをしているFermes des Quatrre-Tempsのミッションは若手農家にプロのノウハウを実践的に学んでもらう場所で、様々な経験と資源を使った革新的な若手農家育成プロジェクトをする事になっている。
次の例としてSierra Harvest`s Food love farmでは
食料安全についての人々への啓蒙が使命に置かれる。収穫して、調理して食事をして新鮮な野菜を楽しむ。
このように自分達の農園の使命を明確にすることで、自分達の使命に共感してくれる人材とマッチングすることが出来る。
因みに私たちアースカラーガーデンは
環境に配慮し、地域環境を活かす循環型で持続可能な農業生産事業とし、
栄養価も食味も高いPREMIUMな食材を提供していく事を目指します。
としています。
次に事務的な職務内容、給料、必要な資格などを明確にしておく。
③まずは知り合いに紹介してもらう
農業の人材を確保するときに一番オススメしているのは知り合いの農家から推薦してもらうことである。例えば季節限定でアルバイトしていた人で長期的に農業をしたいと思っている人が良い人材であれば農家から農家に紹介してもらう事がミスマッチが少なくなる。
その際に
・履歴書、推薦書と連絡先。
・動機は何なのか?そしてどのくらいの期間原良きたいのか?
・季節限定の農家からの推薦書など。
があれば採用がスムーズである。
④段階的に採用条件を考える
すぐに雇用主と雇用された側の相性の良さは判断出来ないので、一週間の研修期間などを設けながら中期的に採用していく。
働く人のモチベーションは良いマッチングの結果保たれる。雇用側の要求と従業員が何をしたいのかを明確にしてマッチングさせる事が重要である。
⑤採用に躊躇う時は採用しない
最後はシンプルに雇用したくないと感じればきっぱりと採用せず他を探した方が良い。
2、生産性の高いチーム作りの方法
次にチーム作りについて紹介します。
今は「生産性を上げるためには?」という議論が盛んです。解決策として個人のレベルでいえば、「退社時間を決める」や「to do リスト」を作るなどがよく見られます。企業でいえばアウトソーシングしたりデジタル化したり移民を受け入れたりといった事が行われています。
しかし、これらは「短期的視点」で生産性を上げる方法です。
これから紹介するチーム作りとは「長期的視点」で生産性を高める事が出来る物です。 それでは集団の生産性を上げていく5つのポイントを紹介してきます。
①シーズンの最初にチーム作りの為の日を設ける
JMはシーズン最初の18日間はチームビルディングに使います。この期間にミニゴルフやスポーツ、コミュニケーションのレクリエーションや飲み会などをチーム全員で行いお互いがどんな人物なのかを知る機会を作っています。この時に大切にする5つのポイントは下の5つになります。
・お互いを知る
・メンバーにチームの価値を感じさせる
・楽しい慣習を作っていく。
・チームワークを奨励する。
・コミュニケーションを発展させ協力させる。
この機会を作るからこそ前よりもお互いを信用する潤滑油が出来、仕事の生産性も上がる事につながっていくのです。
②具体的な計画を図でチームメンバーに伝える
毎週月曜日に1週間に行う作業や理由、チーム全体の動きなどの計画をプロジェクターなどを使って示す事により、全員の理解度を上げる。そして、ホワイトボードに各エリア、作物などに分けて整理していく。チーム全員がホワイトボードを使って自分の担当する仕事を書き出して整理していくことで作業効率も向上しチーム全体での自分の役割も確認出来る。
③問題が発生していないかチェックするタイミングを設ける
会議を開けばコミュニケーションが取れているわけはありません。それぞれの会議に目的を持ちスピーディーにミーティングを行う事でチーム全体のトラブルを防ぎ且つ時間をうまく活用したミーティング3つを紹介します。
1.朝のミーティング(10分以内)目的
毎朝チーム全員の体調と作業スケジュール確認。
・挨拶をしてみんなの体調などを確認する。
・一日の作業計画をホワイトボードなどで確認してから仕事する。
・決して遅れない!全員の作業がストップするから。
2.週一のミーティング(一人5分以内)
目的
問題や改善点、ひらめいた事などを一人一人が5分以内にまとめて発表する場。
このミーティングでは3つのカテゴリーに分けられている。
①Rose
良かった点や成果
②Thorn
チャレンジした事、や問題点やサポートが必要な事
③Bub
思いついた事やもっと知りたいと思っている事
この3つの質問について一人5分以内に共有して、日々のストレスやアイディアを共有することによってチーム全体での作業改善を行いストレスを出来るだけなくして効率を上げます。
3.1対1のミーティング(30分以内)
目的
1体1のミーティングを設ける事によって個々人が抱える問題が大きくなる前に解決する。
・チームメンバーにフィードバックさせる機会を設ける
・問題が大きくなる前に現在抱える問題やストレスを聞き出す
・チームメンバーに日々の業務等について感謝する
このミーティングは100%プライベート空間で、話した内容は他言しない事やメンバーの意見(それが聞きたくないような話でも)を傾聴して、30分以内に終わらす事がポイントになります。
④良かった事を褒めて同じ行動を繰り返させる
メンバーの誰かが良い仕事をした時は、本人に直接どんなところが良かったのか具体的に褒めるもしくは感謝していきましょう。そしてその仕事ぶりをミーティングでシェアする事で褒められた本人も他のメンバーも同じようにしていく、もしくはさらに改善されるかもしれません。
逆に失敗をした時は、なぜその失敗が起きたのかを冷静に本人と確認して、チームメンバーと共有して同じ失敗が起こらないようにしましょう。
⑤顔を合わせる
現場で会った時は出来るだけ顔を合わせて会話することでお互いの体調や、ちょっとした変化に気づけるようにする事が大きいトラブルを少なくしていく重要なポイントです。そして当たり前ですが仕事終わりには常に挨拶を忘れずしていく事も重要になります。
3、解雇
シンプルにもしチームに必要でないと思ったら出来るだけすぐに解雇する必要があります。
そうしないとチームがその人物の為に腐敗していく事につながる為です。
良いチームは美しいハーモニーのようなものでチューニングが必要になります。それは反対意見をいう人物や違う思想の人を排除していくのではなく、集合時間や機械の扱い方などの約束を守れない人物は必要ではないということです。
そして最後にチームのメンバーには常に感謝やポジティブな意見を伝える努力は惜しんではいけないません。その言動がチームのメンバーの原動力に繋がっていき、逆にそれがないとどんどん腐敗してしまうからです。
※アースカラーガーデンの方針としては解雇の無いようお互いの信頼の上で採用するし、個々の多様性が同じベクトルに対して良い方向に作用するような組織を目指しています。
最後に
まず良い人材を見つけるためにはまず自分達の農場のスタイルやミッションを明確にして伝えていきその思いに共感出来る人たちに見つけてもらう事が長期的に良い人材と巡り合うポイントになります。
次に生産性を上げるポイントはミーティングを細かく分割してそれぞれの目的をしっかり持ち、長すぎず短すぎない時間で確認していき、出来るだけ顔を合わせてお互いに良かった所は認めて快適な仕事環境作りをする事がチームの生産性を上げるうえで重要になります。
最後の解雇についてはチームのハーモニーが乱れるような事があればそこは躊躇せずに解雇して行く事もチームにとって必要な判断だという事でした。
チームマネジメントの方法で何か参考になれば幸いです。
ありがとうございました。