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穏やかに、そうして不自然に
なんの予定もなかったはずの土曜日。
木曜日の夜、一本の電話で木っ端微塵。
母が、弟が休みになったから、天気も良いしドライブに行きたいと。
行けよ勝手に、とは思ったが、なにしろうちの大口スポンサーなので、口が裂けてもそんな事は言えない。
私だけじゃなく、北も行く予定に入ってるし、てっきりうち方面に来るんだと思っていて、いくつかあてを頭の中でピックアップしてい全くの反対方面、あっちには10年近く行ってないから行きたいと言われる。
どこか行きたい場所があるの?と聞いたら全然知らないと。
弟と相談してと言われて、LINEするも、運転するから好きに選んで、と、おい、てめー、丸投げか。
道の駅に行きたい、海が見たい、足が悪いので歩かなくて済むところがいい、ドライブを楽しみたい。
この条件で、全く土地勘のない場所をひたすら探す。
しかも、うちの反対方面に行くのに、私を迎えに来るという考えは綺麗に抜けていて、実家の方が遥かに近い北が、私を迎えに来て、2人で実家に向かうという意味のわからなさ。
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北と2人で1時間ばかし、ドライブとなる。
山陰には珍しく、綺麗な青い海。
母と弟は、なかなかハイテンションで、私はニコニコしながら憂鬱になる。
しかも、乗り換えた弟の車は新車で、新車特有の匂いが苦手な私は、乗り込んでまだ動かない状態で車酔いしてしまい、母と後部座席に乗っていた私は、助手席の北と途中変わってもらう。
後部座席は母仕様になっていて、ゆったり足を伸ばせたり、色々楽なはずなのだが、助手席に移ったら楽になった。
車酔いには助手席がいい、というより、やはり母のエナジーヴァンパイアにやられていた気もする。
目的の道の駅に着いて、ゆっくり見て回る。
漁港が近いので海産物が多いが、結局、母が買ったのは梨のジャム。
本当はそこのレストランでご飯を食べるつもりだったが、あらかた売り切れで、急遽食事する店を探す。
誰も当てにならない。
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カフェ、と名前はついていたが、港町の中の、食堂。
メニュー見て、ここなら母の気にいるだろうと思って選んだが、ピッタリだったようだ。
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煮魚に刺身にあら汁に魚のフライに、細々とした煮物などのセット。
どれもしっかりした味付けで、どこか懐かしい優しい味わいで、ホッとする。
刺身にはモサエビがついていて、もうそんな季節なんだな、と思った。
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本当に良い天気で、入江が美しい。
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こういう場所、だった。
しかし、筋トレガチ勢の弟は、現在増量期で、ご飯が足りなかったらしい。
コンビニでサラダチキンとか買う?と聞いても、そんなものは減量期に食べるから嫌だと。
ナビでなんか検索してるなー、と思ったら、パンケーキで有名な店を検索してやがる。ここから1時間くらいかかるのではないのか…
結局向かう事に。
しかし、そこは私も何回か行ったことがあるが、かなり長い階段を登る必要があり、足の悪い母には行くのは無理。
母は、車で待ってるから行っておいでというが、流石になんかね。
結局、パンケーキではなく、お土産と、弟の今食べる分のお菓子やスムージーなど買うだけに。
私も釣られて、大判焼きとハイビスカススパークリングというのを買ってもらう。
お土産は、弟がガンガン選んで買っていた。
そこに電話が入り、弟の父親が具合が悪化したので、病院に連れて行って欲しいと。
そこからまっすぐ実家に向かい、弟の父親を軽く見舞って、北と帰る。
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西に向かうので、日が眩しい。
北はサングラスかけてガラの悪い人みたいになった。
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秋の日は釣瓶落とし、というが、どんどん日は傾いていく。
今日頑張った私の為に甘やかしてと、ユニクロに寄ってもらい、家に帰る頃には完全に真っ暗だった。
ちなみに、目当てのワンピースは、私には似合わんな、と判明して買わず。
マキシ丈のスカート欲しいなー。
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帰ったら、とりあえずお茶する。
弟に、普通のプリンと普通じゃないプリン、どっちがいい?と聞かれて、普通の、と言った、普通の。
普通じゃないのは、抹茶の事だった。
カラメル別添えで、これがしっかり苦くて私好み。
甘いカラメルは許せない。
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私はこの店では、いつもハード目な食感のバームクーヘンばかり買うのだけど、こっちもうまいよと買ってくれた。
うん、私は固い方が好き。
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北が男のくせに芋栗南京好きでねー、と話してたら、ハロウィンコーナーにまさにあった。
弟がさっさと買ってくれる。
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紅芋はよくわからないが、カボチャはしっかり。
温めるとさらに美味しいとあるので温めたら、ふんわり感が増して、美味しかった。
北は好物だし、結局全部食べてくれる。
和やかに見えたろう、秋の行楽を楽しむ家族連れは、内心イライラと疲れと、それを感じる自分への腹立ちと悲しみでいっぱいの私を含んでいて、北は少し心配したようだ。
土曜日は、その後もラーメン食べたり、フライドチキン食べたり、酒を飲んだり。
北もこの日ばかりは何も言わなかった。
ラーメンもフライドチキンも、酒も、食べたいわけではなかったし、飲みたいわけでもなかった。
よい娘を演じきった自分が気持ち悪くて、ちょっと無茶苦茶したくなっただけ。
色は鮮やかに残っていようと、もう、中身はスカスカの、ドライフラワーか、造花になったみたいな気分。
来月も、こんなふうに出かけようと誘われている。
大事にされて、こんな気持ちになるなんて、やっぱりダメだな。