#19 「合成宝石」に思うこと

皆さんが持っている宝石は、「天然」の宝石ですか?

ほとんどの方が持っているジュエリーに使用されている宝石は、よほどのことがない限り「天然」のものだと思います。

天然の化学組成と全く同じで、構造も同じ、ただ造り上げられる過程だけが異なるものがあります。

「地球が創り出したもの」が「天然の宝石」

「人間が人工的に作ったもの」が「合成の宝石」

です。
化学組成も構造も全く同じなので、通常の光学的な検査(光の屈折の値や比重値)では、天然と合成の宝石は識別することは出来ません。

それではどこで天然か合成かを見破るかというと、宝石の内部「内包物(インクルージョン・不純物)」に天然の痕跡があるかないか、子細に調べていきます。

現代はレーザー走査などの技術により、インクルージョンなどが目に見えない場合でもかなり精密な識別が出来るようになっていますが、多くの場合はプロが使用している"10倍ルーペ"を使用して、石の内部を子細に観察することで検査石が「天然の宝石」か「合成の宝石」かを見極めることができます。

<ポイント1>

・天然の結晶や液体などのインクルージョンがある
→合成でも結晶のインクルージョンが内包されることがありますが、合成石を作る際に生じる結晶と、天然で内包された結晶は明らかに異なる。(色、形など)
逆に、合成石にしか内包されない特徴的なインクルージョンが存在することもあり、その場合はそれが看破の決め手となる。

<ポイント2>

・成長線が異なる
→天然の宝石は、何万年・何億年と長い年月を成長していきます。その間に周りの環境が変わることで、木の年輪のように、宝石にも「成長の跡」が見られることがあります。これは短期間で生成する「合成宝石の成長の痕跡」とは全く異なるので、色斑やインクルージョンの入っている方向から見極めることが可能です。(インクルージョンは、成長方向に沿って並んでいることが多い)

大きく分けると上記の2点が見分けるポイントかと思います。

皆さんは、「天然の宝石」と「合成の宝石」だったらどちらが良いですか?

「天然の宝石」は唯一無二だし、地球が悠久の時間を経て私たちの元へ届けてくれる神秘性もあり、やっぱり何にも代え難い価値があります。

しかし、「合成の宝石」にもメリットはあります。

<合成石のメリット>
・天然の宝石と組成、構造が同じだから耐久性や美しさに問題はない。
・むしろ、インクルージョンなどの不純物や色合いもコントロールできるので、天然の同じ宝石種のものよりも見た目が上質なものが出来る。
・作成期間も短期間だし、天然のものよりも安価で購入できる。

天然の宝石を"善”とすると、合成宝石は人を騙すために作られた"悪”のものだという印象をもっていらっしゃる方も多いと思いますが、全く用途を別物としてとらえると、合成宝石はかなり優秀です。

例えば、時計の軸受けのルビーやサファイア、クォーツ時計に使用される水晶、宝石を始め、あらゆるものの高度な研磨に使用されるダイヤモンドパウダーなど、合成宝石が活躍している場は今は非常に多くなりました。

最初は、人間がその美しい宝石を人工的に作れないかとチャレンジして、その過程でそれぞれの宝石の特性を知るところとなり、私たちの生活に応用されていくという流れ・・・人間の柔軟さと探求心には驚かされますね。

ジュエリー業界においての問題は、天然か合成かの「情報の開示」がしっかりなされているかどうかという点です。天然の宝石には天然の価値に見合った価格、合成宝石には合成石の価値に見合った価格で販売されているかどうかが大事です。

昔は、旅先にジュエリーを持って行くときには本物ではなく、全く同じに見えるイミテーションを作らせて旅先で身に付けていた時代があったそうです。これは、強盗や不意な事故などで財産を失うことに備えた方法です。この場合は、「用途に応じた合成宝石のジュエリー」なので、理にかなった良い方法だと思います。

昨今でも、注目を集めている「ラボグロウン・ダイヤモンド(研究所で作られたダイヤモンドという意味)」などは、独自に需要を確保してそのカテゴリを確立しつつあり、きちんと天然ダイヤモンドとの棲み分けをして、これから市場で活躍しそうな気配を感じさせています。

しかし、まだまだ「人を偽る目的で作られる合成宝石」がたくさん存在していることも事実。

全てに・・・とは言いませんが、宝石やジュエリーを購入する際に心配な場合は、第三の鑑定機関による「宝石鑑別書」を付けてもらうことをお勧めします。小売店さんによって方針が違うので一概には言えないのですが、自社鑑別書ではなく、第三の鑑定機関のものという点が大事です。

合成の宝石は、1900年代の始めにすでに存在していました。しかし2024年の今でも、試行錯誤を重ねて、宝石の研究所とそれを欺こうとする合成宝石を作る技術者との能力の追いかけっこはまだまだ続いています。

私たち消費者が知っておかなくてはいけないことは、「合成宝石が存在する」ということ。宝石の人為的な処理もそうですが、その存在を知っているのと知らないのとでは、購入の際に大きな失敗をするかしないか大きな差があります。

その存在を知った上で、天然と合成の宝石それぞれをうまく生活に組み込んでいけると、より彩り豊かで、楽しい毎日が過ごせそうですね(^^)

<募集>

宝石・ジュエリーの疑問やリフォームの不安な点、疑問点、ご質問などがございましたら記事にしてお答えいたします。お気軽にコメントで残していってください(^^)


いいなと思ったら応援しよう!