#25 宝石の「自色性」と「他色性」に思うこと
私たちの目に見えている、宝石の「色」については何度か書いてきました。
今回は、その中で「自色性の宝石」と「他色性の宝石」について思ったことを綴っていきたいと思います。
この「自色性」と「他色性」という言葉は、聞いたことがある方はいらっしゃるでしょうか?
○「自色性」の宝石→自分の体を構成している組成成分の中に、色の原因となる元素が含まれている。(要は"自分の色")
○「他色性」の宝石→自分の体を構成している組成成分の中に色の原因となる元素は無い。色がつくには、微量の色の原因となる不純物元素が必要。(要は"他人の色")
簡単にいうと、上記のようになります。
私が前回や前々回で宝石について書いたときに、「不純物のない純粋な結晶には"色がない”。無色透明である。」と綴っていましたが、この「無色透明な変種(?)」が存在するのが「他色性の宝石」である事が多いです。
(いや、例外もありますね・・・。あくまで参考)
それぞれにどんな宝石があるのか、例を挙げます。
<自色性の宝石>
・ペリドット・・・自身を構成する「Fe(鉄)」によるオリーブグリーン。
・アルマンディンガーネット・・・自身を構成する「Fe(鉄)」によるレッド。
・トルコ石(ターコイズ)・・・自身を構成する「Cu(銅)」によるスカイブルー。
うーん・・・意外と思い浮かばないですね。ほとんどの宝石が「他色性の宝石」である事が伺えます。
<他色性の宝石>
・ルビー・・・不純物である「Cr(クロム)」が赤色の原因。
・ブルーサファイア・・・不純物である「Fe(鉄)」と「Ti(チタン)」が青色の原因。
・エメラルド・・・不純物である「Cr(クロム)」が緑色の原因。
・アレキサンドライト・・・不純物である「Cr(クロム)」がカラーチェンジの原因。
・アクアマリン・・・不純物である「Fe(鉄)」が水色の原因。
・トルマリン・・・成長する過程で周りの環境が変化するにつれて取り込まれる不純物が変化し、一つの結晶内で複数の色を持つ(ウォーターメロン・トルマリンなど)
などなど・・・。
他色性の宝石がほとんどです。
そして上記のように、同じ化学元素でも"結晶構造の違い”によって、現れる色はまったく異なります。
念のため、ご興味がある方にこの「着色元素」と呼ばれる"色の原因となる元素”を以下に記しておきます。
<色の原因となる着色元素>
○チタン(Ti)
○バナジウム(V)・・・エメラルド、パープルサファイアなど
○クロム(Cr)
○マンガン(Mn)・・・ロードクロサイト、スペサルティンガーネットなど
○鉄(Fe)・・・アメシスト、シトリンなど
○コバルト(Co)・・・コバルトスピネルなど
○ニッケル(Ni)・・・クリソプレーズ
○銅(Cu)・・・パライバトルマリン、マラカイトなど
以上が主な着色元素ですが、例えばクンツァイトの「リチウム(Li)」など、上記以外にも存在します。
「自色性の宝石」と「他色性の宝石」の一番の違いとしては、"色が安定しているか、そうではないか”という点だと思います。
「自色性の宝石」は、そもそも自分の体を構成している成分の中に着色元素があるので、大体どの個体も同じような色合いを期待できます。ただこれも人間の身長と同じようなもので若干の個体差はありますが、「見た目の色合いで何の宝石か大体分かる」というイメージです。場合によっては、一つのジュエリーを仕立てるときに同じ色合いの宝石を複数個そろえることが比較的容易ということになります(実際はそんなに簡単ではないですが・・・イメージです(笑))
一方、「他色性の宝石」は、個々でその宝石に含まれる不純物の量が異なることで、だいぶそれぞれの個体の色合いが異なります。その最たる物は、ルビーとピンクサファイアの「Cr(クロム)の量によって宝石名すら変わってしまう」という事象ではないでしょうか。
この話は、どちらの宝石がより良いということではありません。
ただ、宝石選びの時に知っておくと、妥協せずに自分自身の好みの色を探すのにちょっとだけ役に立つかも知れません。
色や輝きの原因である光学特性などを知っていても、鮮やかなとりどりの色や輝きの宝石と対峙すると、「どうしてこんなに鮮やかで美しい色と輝きが生まれるのだろう」といつも新鮮な感動を覚えます。
人間も遡れば同じ"地球”から生まれた生物。
DNAレベルで、何かが共鳴しあっているのかも知れないですね(^^)
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