#31 「トルマリン 10月の誕生石」に思うこと
10月の誕生石と言えば、先日書いた「オパール」が有名ですが、実はもう一つ、多彩な色で人気のある「トルマリン」も10月の誕生石です。
まずは簡単に、主要なトルマリンの色と変種名をお伝えします。
<トルマリン変種>
○パライバトルマリン→ネオンブルー、ネオングリーン
○ルベライト→レッド、ピンキッシュレッド
○インディコライト・トルマリン→ブルー
○ウォーターメロン・トルマリン→グリーンとピンク系のバイカラー
○ベルデライト→グリーン
○ドライバイト→ブラウン
○ショール→不透明のブラック
○シベライト→パープル~バイオレット
○アクロアイト→無色透明
ざっとメインどころはこのようなものでしょうか。
でも実際は、イエロー・トルマリンやピンク・トルマリン、バイカラーどころかトリプルカラーなど、もっとたくさんの色が存在します。トルマリンは恐らく宝石の中で一番カラーが豊富な宝石です。
しかもその色が、中間色のような不思議な色合いのものも多く、一つの結晶の中に混在していることも多い。個性が爆発している宝石です。
ちなみにトルマリンは「他色性」の宝石なので上記の色は成長段階で微量に取り込まれる不純物が原因になります。長い年月をかけて結晶する間に周りの環境が変わり、土壌に含まれる不純物も変化することで、一つの結晶内で複数の色が現れることがあると言われています。
<色の原因>
○パライバトルマリン→「Cu(銅)=青色の原因」「Mn(マンガン)=緑色の原因」。それぞれの成分量によって色合いが変わる。
改めて調べてみたのですが、トルマリンの各色の色の原因がはっきりとされているのはこのパライバトルマリンのみだと感じます。
他の変種は、ちょっと諸説あるというか・・・断言するのがはばかられる感じなのでここには書きません。
本当だったら語ることも多い石なのですが、なにせトルマリンは化学式も複雑で、いくつかの成分違いのグループに分かれていてなかなか難しい・・・。
個人的な苦手科目として「九九」で例えるのであれば、
○トルマリン→九九で言うと九の段
○ガーネット→九九で言うと四の段
○コランダム→九九で言うと七の段
といった難しさです。
(個人的なイメージです。九九が得意な方には分かりにくく、すいません)
まあそれはさておき、それぞれの変種は「結晶構造が同じであるが形成している化学成分が異なる」ということで、「異質同像(いしつどうぞう)」の存在として複数の「トルマリン・グループ」に分かれています。
その中でも、今人気が爆発しているのはやはり「パライバ・トルマリン」ですね。漫画家のさくらももこさんが好きだった宝石としても有名です。
発見された当初(1980代初頭)はまだ認知度も低く、美しく珍しいネオンカラーでありながら比較的入手しやすいお値段だったようです。
それが今や、良質のブラジル産のものが入手困難(鉱山の閉山や枯渇が原因)になってからというもの、宝飾業界の私たちでさえ二度聞きしてしまう高値で取り引きされていることもしばしば。
特にネオン感が強く、色も濃いめでいかにも「パライバ・カラー」というものはそう多くはありません。色が豊富な宝石種だからこそ、「どちらにも行けない微妙な色合い」のものも少なくないのです。
理想は、きちんと「Cu(銅)」と「Mn(マンガン)」の含有率が載っている"分析報告書”付きの鑑別書が付いているものが安心ですね。
ただ、明らかなパライバカラーのものは鑑別書を付けずに取り扱っているところも多いので、一概にどちらが良いかは断言できません。(分析報告書付きの鑑別書は15,000~20,000円ほどかかり、その分、商品代金も高くなる)
もうここは、信用できる販売店かどうかと、そのお店さんに質問して相談しながら購入するしかないです。
どうしてもダントツでパライバトルマリンの人気が高いのでパライバトルマリンの話になってしまいましたが、ピンキッシュレッドの「ルベライト」と、サファイアとはまた違った神秘的な青色をたたえる「インディコライト・トルマリン」の2つも人気があります。この二つは、同じ宝石とは思えないほどの主張の違いが面白いです。
ルベライトは
「私を見て!!ほら、美しいでしょう!?」と自信満々の声が聞こえてきそうな元気いっぱいの色と輝きですし、
インディコライト(インディゴライトと濁る場合もあり)は、
「そんなに主張しなくても、分かる人には分かるんだよ、この美しさは。」
という冷静な声が聞こえてきそうな、"沈着冷静”を結晶にしたような静謐な美しさです。
それぞれの個性が、見ていて楽しい宝石たちですね。
トルマリンは一部のカラーを除き、
○産出量が豊富できれいな結晶も多い。
○手頃なお値段のものも多い。
○入手するのが比較的容易。
という私たちに身近な宝石です。
カラー・バリエーションが豊富な分、自分にあった宝石を選ぶのも楽しいですし、季節や装いによっても変えられるのでコレクターとしては見逃せない宝石種だと思います。
ご興味が出た方は、「トルマリン」でネット検索してみてください(^^)
想像を超えた、カラフルで表情豊かな結晶たちが、あなたを迎えてくれます。
<トルマリンの注意事項>
・硬度:7 (水晶と同じくらいか、ちょっと強い)
・洗剤、薬品に比較的強い。よほど乱暴に扱わなければ、日常使いに適している。
<募集>
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