Contemporary Thought×Newest Technology:新しいカタチを創造し、体験を進化させ、手にした人の心を動かす「もの」の価値
今回は、伝統と先端を掛け合わせてデザインしていくことについて、独自の道を歩まれている secca代表の上町達也氏にお話を伺った。
上町さんは、金沢美術工芸大学卒業後、「ニコン」のデザイン部を経て、上町達也・柳井友一・宮田人司の3名が中心となり活動するアーティスト集団、「secca inc(株式会社雪花)」を設立、代表取締役に就任した。先端3Dデジタル技術を基盤に、伝統技術を掛け合わせた独自のものづくりを展開されている。
新しいカタチを創造し、体験を進化させ、手にした人の心を動かす
1)「もの」の価値は、手にした人が心を動かされた瞬間に生まれる
まず、上町さんは、「もの」の価値について、自社のストーリーを引用しながら話してくださった。イメージが素敵なので、以下に絵を引用させていただく。このメッセージが素敵だと思った。
- 「もの」の価値は、手にした人が心を動かされた瞬間に生まれる -
たしかに私たちは、「モノ」が存在していたらもう既に価値があるような感覚になるかもしれない。でも、本当はそうでないことに、ふと気づかされる。
2)メーカー(ものづくり)であることにこだわる
上町さんは、単に「ものづくりをする」というだけでなく、"「もの」の価値" を考えたいという。いかに、「心を動かすようなデザインを作れるか」ということを大切にしているそうだ。
ご自身が経営される会社について、「 secca is Innovative Artisan. 」と呼んでいる。伝統工芸から最新のテクノロジーまで、様々な技能を持つ「職人」。考え抜かれた美しさを創り出す「アーティスト」。過去の歴史から学び、未来へと求められるカタチに、アップデートする「デザイナー」。
食と工芸の街、金沢を拠点に、さまざまな視点からそれぞれの長所を活かし、ものづくりをするクリエイター集団。そんな意味を込めて、雪花と言うそうだ。
そして、ものづくりは目的でなく、手段だと言い切る。
ものづくりは目的でなく、手段
3)「伝統」と「先端」の掛け合わせ
上町さんが手がけていらっしゃるデザインは、伝統と先端を掛け合わせたものだという。それらが、スキルと経験と結びついて、新しいスキルとなるそうだ。こういったデザインに対する考え方を大切に持っていらっしゃる。
DESIGN SKILL
= Contemporary Thought × Newest Technology
KOGEI SKLL
= Technology × Material × Experience × Sensitivity
4)大切にしているデザインの考え方
seccaが大切にしているデザインへの考え方「と、」。上町さんのお話は、一貫して自分の中にものづくりへの哲学、自らの世界観を表現者として表現していかれようとしていることを感じる。
「と、」
その昔、美術や音楽、工芸などの文化は
クライアントとクリエイターの信頼関係のもと、共同で生み出されてきた。
私たちも同じく、クライアントの「ために」ではなく、
クライアントと様々なプロフェッショナルと一緒に創作を行い、
今までになく、そして本当に価値のあるものを生み出したい。
こういった考えをもとに、
「secca、と、料理人」
「secca、と、ミュージシャン」
「secca、と、伝統工芸」
こういった風に数々のコラボレーションをされた。そのうちの「secca、と、伝統工芸」で生まれた作品が下記。
▶︎「secca、と、伝統工芸」
『 japan? ×漆』
他には、金沢の「食」「茶」の文化を支えている、「水」に着目した作品が美しい。その水は、白山から流れてくる。
『白山喜雨』
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5)「本物と感じるのも人間」
上町さんは最後に、ビジネスのビの字も知らない職人として生きてきた自分が、seccaを設立した背景を語ってくださった。
「ただデザインをするのでなく、衣食住の根っこにあるものに、人が関わるのはどうか?」と思い立ち、ものづくりの視点から、食に関わることを決めた。そして、デザインだけでなく、学生時代を過ごした金沢が、過去の文化の継承も含めて、適しているのではないかと思い、金沢に移住し、seccaを設立したそうだ。
「本物と感じるのも人間」
そして、プラスチックなど、資源は資源でしかないこと、そこに様々なイデオロギーがつきすぎてしまっていることに懸念を感じ、そういったものへの考え方について、考え直すきっかけを作っていきたいと語った。
「宇宙レベルから見ると、良い悪いはない。人間が生きている過程の中で、倫理的に良いもの悪いものというのが生じてきただけ。例えば、プラスチックもよく悪いように言われるが、良くないものとして体験することが積み重なっただけ。ただの資源でしかないと思う。」
私自身も、自分の周りの価値観やその言葉に宿りやすいイデオロギーをまとったまま受け取るのでなく、メタ的に見直して、その意味やメッセージを受け取り直したいと思う。
情報元:
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第12回 上町達也氏 2020/08/03