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ストーリーを求めて #言葉の展覧会

パッと意味が分からない言葉に惹かれる。

本を読んでいて、意味の分からない言葉に出会った時、ものぐさなので調べないことが多かった。前後の言葉から、だいたいこんな意味かなと思って読み進めてしまう。小学生や中学生の頃は特にそういう横着をしていた。ひとつの言葉の意味にひっかかるより、ストーリーの先をはやく読みたかった。

私は、国語の教科書をもらったら、授業が始まる前に全部読んでしまうタイプの子供だった。

四月に一人で読んだとき、「そこは かとなく」と読むと思っていた。音読の順番が回ってきて、そう読んだところ、教師に「そこはかとなく」と一気に読むと教えられた。

深い雪の中を、主人公と友達か妹か動物かが一緒に歩いて、どこかに行く話だったと思う。何がどう「そこはかとなく」なのか分からなかった。もし漢字が使われていたら、なにかしら意味を想像できるのに、ひらがなだけでは検討もつかない。

そこはかとなく そこはかとなく

忘れないように唱えながら家に帰って、めずらしく辞書を引いた。ぼたん雪のようにほわんとした、あのお話にはお誂え向きな、余韻のある言葉だった。


そう、「お誂え向き」という言葉も五本の指に入る好きな言葉だ。これも私は何かの児童文学で読んだ。確か、少年が草っぱらで友達とちゃんばらをするか、釣りのまねごとをするのにちょうどいい枝を探していて、「おあつらえむき」なものを見つけた、という話で出てきたと思う。

「誂え」には、百貨店の外商部がわざわざ自邸に訪れて着物なり洋服なりを仕立てるような優美さがあるのに、この本ではその辺に落ちている枝を形容するのに使われているのがなんとも魅力的だった。

私が言葉に魅せられる時、言葉そのものの意味ももちろんそうだけれど、言葉から物語が立ち上がってくるもの、言葉に隙間が沢山あるものに惹かれるみたいだ。

今回こんな企画を思い付いてみたのも、他の人が言葉にどのように親しんでいるのか、その愛し方と、言葉にまつわるストーリーを知りたいな、と思ったからだ。

と、半分自分の言葉の紹介、半分企画説明のようになったけれど、皆さんが胸のなかに持っている、お気に入りの言葉を見せてほしいなと思う。きっとそれらは私の胸の小箱の中にもコレクションされるだろうなと思うから。



↓ 募集要項を書いたnoteです。大して難しいルールにしていないので、ぜひぜひ参加していただけるとありがたいです。


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紅茶と蜂蜜
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