見出し画像

分人主義

 物書きにはもしかしたらお馴染みの考え方になっているのかもしれないが、平野啓一郎の思想に「分人主義」というものがある。曰く、人は相手に合わせて相手用の人格を作っているという説である。

 フォロワーさんとの会話に分人主義が出たので、おぼろげな記憶を引っ張り出していたのだけれど、四年ほど前に分人主義の本を読んだ時は、ペルソナという考え方よりも納得感があったのに、今は少し違うのではないかと思うようになった。

 たしかに相対する人によって少し違う自分になっていることを感じることはある。しかし、人によって私像が異なって見えているとして、私側が能動的にその人にうつる自分をコントロールしている度合いはかなり低いのではないだろうか。それよりは、相手にどのようなバックグラウンドがあるのか、相手にどの程度人間を見るための視力、人間理解能力があるかの方が大きいのではないか。

 そして他者のそのようなレンズは、私とその人との人間関係によって容易に歪みうるのではないか。私が見せている分人そのものが、その人との人間関係によって容易に歪みうるように。

いいなと思ったら応援しよう!

紅茶と蜂蜜
サポートいただけたら飛んで喜びます。本を買ったり講習に参加したりするのに使わせて頂きます。