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【シカトリス クリア感想】試行錯誤に心躍る、育成&スキルビルドRPG

 刺さる人には刺さるゲームの致命傷を食らいました。

◆公式サイト

はじめに


 シカトリスは日本一ソフトウェアから2023年6月29日に発売された家庭用ゲームソフトです。ジャンルは「異能×学園RPG」。
 気になるところ、要改善点は他の方が触れてると思うので、基本良い所しか言いません。また、公式に書いてある要素をあえて説明しません。
 クリア直後の正気でない状態の感想のため、その辺覚悟して読んでください。

 ※ネタバレ注意
 ※プレイ時間30時間以上、ハードでストーリークリア済み

シカトリスの魅力

◆考えただけ結果に反映されるスキルビルド


 あなたはパッシブスキルが好きですか?

 僕は大好きです。確率で手数を増やせたり、毎ターンごとに強化されたりするのが大好きです。シカトリスの総スキル数は約300あり、アクティブスキル・パッシブスキルはそれぞれ最大12個装備できます。その一例を紹介します。

 「静かに熱く」というスキルは「毎ターン開始時に攻撃力・命中率+10%。自分の攻撃がヒットしたらリセット」という効果を持ちます。これをアタッカーに装備することで、命令を与えなかった場合でも自分にバフをかけ続けることができます。
 そして、このアタッカーとは別に「攻撃回数ごとにバフがかかる2人目のアタッカー」を用意することで、片方は高火力の一撃に備え力を貯めながら、片方は攻撃を重ね自分を強化していくという戦法が取れるようになります。

 このようなスキル構築を繰り返していくゲームです。これを読んで「面白そう」と思った方は買ってよしです。続きを読んでください。「めんどくさそう」と思った方はちょっと雲行きが怪しいです。身構えてください。

 さらに大事なのは、考えただけ結果がついてくる構造になっているシステムです。先ほどの攻撃力アップスキルは強力ですが、スキル枠は限られています。初期のうちはスキル枠が少ないこともあり、豊富な選択肢の前に悩まされます。火力は最大限に発揮したいけど、今回の敵は火属性の攻撃を使ってくるから火耐性を入れたい……そんな悩みはこのゲームに常に付きまといます。

 そして考えた分だけ、敵との戦闘が楽になります。火力を追い求めたばかりに、防御がおろそかになったから、今回は防御面にも気を使ってみよう。結果、ダメージが減り犠牲者が出なくなった。この過程を楽しめるかがキモです。

 ※敵の情報は戦闘前に調べることができます。
 ※付け外しが面倒な方はスキルセットが用意されています。

◆バトルの戦略性と嚙み合った時の気持ち良さ

 シカトリスの戦闘では7人の生徒から4人パーティーを組むことができますが、1ターンに一人にしか命令を出すことができません。クリミナルガールズをプレイ済みの方は想像しやすいかと思います。
 例えば、2人が攻撃スキルを提案、一人が強化スキルを提案、一人が回復を提案した場合、回復を選んだら他の提案は選べないということになります。
 
 ものすごくテンポが悪そうだ、と思ったかもしれません。しかし、実際のところ、このシステムは他のシステムと上手く嚙み合っています。

 ※入れ替えがあるので実質7人パーティー。

①    緊張感のあるバトル
 
シカトリスでは1ターンに命令を出せるのが1回だけとなり、常に4択を迫られます。では強い攻撃だけ選べばいいのかというと違い、状況に合わせた選択をする必要があったり、後述のオーダースキルのポイントを貯めたりする必要が出てきます。
 このまま攻撃を続けるべきか、敵の強化を解除するべきか、はたまたいったん回復するべきか、プレイヤーは常に決断を迫られるのです。

②    オーダースキルとの相性
 主人公(先生)の扱うことができる特殊なコマンド、オーダースキル。生徒の一人の攻撃力を上げたり、1ターンに1回しか使えないアイテムを2回使えたり、中には全員の受けるダメージを無効化するような強力なものも存在します。
 オーダースキルは強力であり、戦況を左右しますが、ポイントを貯めるにはターン経過や特定の命令を選ぶなどが必要になります。生徒の命令とは別に使えるオーダースキルによって、戦略の幅は広がっていきます。火力役のダメージを底上げする裏で、タンク役の防御を底上げする。あなたの戦略が戦場を支配します。

  ③ 豊富なスキル選択との相乗効果
 約300種のスキルによって、1ターンに1回しか動けないという制限を突破することができます。スキルの中には確率でスキルを発動するものがあり、パッシブを組み合わせることで何通りもの戦略を生み出すことができます。
 状態異常で敵をハメるのが快感だ、という属性持ちにはたまらないスキルもあります。あるいは堅実な方なら、敵の攻撃をすべて凌いで力の差を見せつけるのが好きという方も満足できるでしょう。自分だけの構成を見つけ、1ターンに1回という制限を味方につけるのです。

 そして、待ち受けるのは強大な敵です。初見ハードモードでクリアした経験から言うと、敵の攻撃は容赦がありません。
 いくら作戦を練っても、叩きつける相手がいなければ無用の長物です。バフを盛って致命的な一撃を繰り出してくる敵、状態異常をばらまき行動を束縛してくる敵、特殊なギミックを持つ敵。安心してください、います。

 自分の考えた戦略を、全力の敵に叩きつける。自分の考えた戦術が、カチッとハマる。コマンドRPGでこれ以上の快感を僕は知りません。

◆ADV+RPG、自分で方針が決められる育成要素

 シカトリスの特徴的な要素としては、学校生活により行われる育成システムです。生徒たちを導く教師として、週の授業方針を決めながら生徒たちの育成をしていきます。

 ──この生徒は攻撃が得意だから、攻撃に影響する基礎ステータスを集中的に伸ばそう。
 ──この生徒にはこのスキルを覚えさせたいからこの授業を受けさせよう。

 弱点を克服させよう。集中的に能力を伸ばそう。様々な方針を自分で決めることができます。無論、その育成の結果が戦闘の結果という形で現れるのは言うまでもないことです。

 さらに、生徒にはそれぞれ専攻というものがあり、これは他のゲームにおいてのジョブシステムのようなものです。ジョブシステムでありながら、習得したスキルは覚えたまま他の専攻に変えることができます。これにより多くのスキルを習得でき、覚えた大量のスキルをシナジーを考えながら付け替える瞬間が至福の時です。

 この専攻ですが、生徒によって得意不得意(基礎力)があるため、万能超人にするというよりは、生徒の特性を見極めて長所や短所を考慮する、という塩梅です。なんだか本当の教師みたいで、楽しいんですこれが。

◆心の闇を扱いながらも、絶望と希望の程よい調和

 さて、いよいよストーリーにも触れていきます。
 シカトリスの主人公は特殊な過去を持つ教師であり、異能を持った生徒たち7人のクラスを受け持つことになります。

 この7人の生徒はそれぞれ心の傷を抱えていて、異能を持っています。ストーリー中、生徒たちは有事に対応する最中でも、特殊な装置で自分の心の傷と向き合っていきます。ドッペルと呼ばれる心の暗部を擬人化した存在に出会い、生徒は悩み、苦しみ、暴走してしまうこともあります。

 ストーリーのネタバレになるので多くは触れませんが、生徒の一人は心臓に障害を持ち、異能によって健康な体を手に入れました。すなわち、異能は彼女にとって自由の象徴なわけです。それが、異能による過去に苦しんでいる他の生徒に出会ってしまったら、どうなるか……ぜひ、その目で確かめてください。

 シカトリスというタイトルの通り、シリアスな展開や、バッドエンドを迎えることもあります。しかし、それだけではなく、生徒たちは心の傷に立ち向かうことで成長していきます。青少年であることの不安定さの中で、同じくらい素直な資質を持っている生徒たちに、教師の立場として勇気づけられます。
 
 個人的に評価の高い点で、シカトリスの大人たちは、大人として振舞ってくれます。主人公は生徒が悩んだら親身に話を聞こうとし、見守るべき時は下手に手を出さず、帰る場所、居場所になってくれます。それが裏目に出ることもありますが、その事態にもできる限り対処しようとします。
 安心してストーリーを読み進められた大きな要因です。(勿論、悪い大人もいますが、彼らには彼らなりの考えや信念があります)

 絶望と希望の程よいバランスで、まさに求めていたストーリーでした。

最後に

 考え抜いただけ結果が良くなる。これはRPGの醍醐味です。シカトリスはゲームの根底にある面白さを思い出させてくれました。
 中ボスに苦戦して、今ある装備で必死にどうにかできないか考えていた子供の頃。どれだけワクワクして、頭を悩ませて、ゲームに対して真剣だったでしょうか。

 シカトリスのスキルを付け替えていると、そんな記憶が蘇ってきます。人は選びますが、選ばれた人には間違いなく刺さる、そんな名作でした。
 体験版が配信されているので、気になった方はまず体験版をどうぞ。

 最後に。
 これだけは言わせてください。


 性能的には朝日が好きだけど性格的には篠森が一番すき

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