
【試合評】改めて考えさせられた『小兵遊撃手NPB限界説』~4/27△楽天3-3ロッテ
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パリーグ2番目のロングゲーム
今季4度目の延長戦になったが、12回まで戦ったケースは今季初。
4時間7分の試合時間は、このカード2回戦で田中和のサヨナラ打で勝利を収めた3/27○E6-5Mの4時間17分に続く、今季パリーグで2番目のロングゲームになった。
楽天側からすれば、先発・岸が3回に鴎の主将・中村奨に1号3ランを被弾し、1-3と逆転を許していた。2点を追いかける展開で7回にマルモレホスの3号2ランで同点に追いつくというゲーム展開。
6回終了時には負けているチームが勝利を手繰り寄せる作業は難しい。そういう野球の構造上のことを鑑みれば、負けを引分にできたのだから、御の字の一戦になったと思う。

楽天=1番・西川(左)、2番・小深田(遊)、3番・浅村(二)、4番・島内(右)、5番・マルモレホス(一)、6番・岩見(指)、7番・黒川(三)、8番・辰己(中)、9番・炭谷(捕)、先発・岸(右投)
ロッテ=1番・髙部(左)、2番・マーティン(右)、3番・中村奨(二)、4番・レアード(指)、5番・佐藤都(捕)、6番・山口(一)、7番・エチェバリア(三)、8番・岡(中)、9番・小川(遊)、先発・本前(左投)
西口直人の火消し
同点に追いついた後、7回裏以降の6イニングをゼロに抑えた投手陣の奮闘が光った。
なかでも、延長11回である。
回頭から津留崎が五番手で登板するも、先頭の和田にいきなりツーベース。送りバントで1死3塁。4番・レアードを申告敬遠で1塁に歩かせた後、楽天ベンチは西口にスイッチした。
昨年12月、スポニチが主催したプロ野球最強将棋王決定戦でみごと準優勝を飾った25歳右腕が、この重要どころでみごとな火消しをみせた。
とくに1死3,1塁、この日5番に入った佐藤都との対決だ。
昨年はわずか155打席で6発を放った強打の捕手は、この試合でも1打席目に痛烈な一直、2打席目は二遊間を破るセンター返しのヒットで出塁していた。いずれも岸のストレートに強さをみせていた。
それだけに固唾を飲むシーンになったが、2-2からの5球勝負は真っ直ぐを打たせて内野前進守備網にかかる遊ゴ。ゴロゴーで本塁に突っ込んできた三走・和田を、途中出場して遊撃の守備位置に就いていた山﨑剛のバックホームで刺した。
結果球も真っ直ぐなら、追い込んだ2つのストライクも真っ直ぐで獲得。岸のストレートに好対応をみせていた鴎の24番を、西口のファストボールが凌駕する対決になった。
また、1死3,1塁のような場面は「最低限、犠牲フライなどで3塁走者をホームに呼び込んでくれよ!」というシーンでもある。
このような無死または1死で3塁に走者を置いたとき、どんなかたちであれ三走を生還させたパリーグ各球団の最低限力は、試合前の時点で以下になっていた。
日本ハム 61.3%
ロッテ 60.6%
オリックス 60.0%
ソフトバンク 59.6%
楽天 51.1%
西武 47.4%
どの球団も約50%以上である。ロッテに至ってはパリーグ2位を記録する60.6%の好値を叩き出していた。それだけに、西口による火消しの重要性を再確認することができる。
そこに山﨑剛がいて良かった!
また、Twitterにも書いたが、代走で出場した山﨑剛がこの回の守備からショートに就き、スタメンの小深田は二塁にまわっていた。この抜かりない采配もポイントだ。
延長11回、ショートに山﨑剛を据えた楽天ベンチの抜かりない采配に拍手。これが送球に難のあるコブだったら・・・と思うと、バックホームはどうなってたか?!
— eagleしばかわ🦅 (@eagleshibakawa) April 27, 2022
小深田はショートそのままで山﨑剛をセカンドに入れる選択肢もあったのに、楽天ベンチは山﨑剛をショートに入れたわけだ。
結果、1死3,1塁で佐藤都の打球はショートに飛び、山﨑剛が冷静に処理してバックホーム。三走・和田を憤死させることに成功した。
これが小深田のままだったら・・・
昨年は1塁送球の16.0%でワンバンまたはツーバン送球になり、送球難を露呈。この影響で遊撃UZRも-17.7と看過できないレベルを記録したコブ。
この試合でも、3回1死1塁で髙部の遊安、4回2死3塁で岡の遊ゴ時に1塁送球がワンバンしていた。三遊間深くで逆シングル処理してノーステップで投げたわけではないのに、「え?あの距離でワンバンするの?」というシーンだった。
このように送球がただでさえバウンドするケースが多いのに、解説・里崎智也さんが指摘したように「小深田は捕ってからステップが長いですよね。余計なステップを踏んで(以下略)」とステップにも難があるわけだ。
やはり168cmの小兵に遊撃守備は任務が重すぎるのか。
独立リーグ時代は名遊撃手で鳴らした内村(163cm)が結局プロではショート定着できずセカンドにまわりその後DeNAにトレードで放出されたように、
高校時代は遊撃守備力を評価されていた西巻(167cm)も結局プロでは通用せず(二軍でこんな打球でもグラブ弾かれちゃうのか、とか、取れないのかというシーンが続出した)、高卒2年目に育成打診されたように、
小兵のショートは無理ゲーなのか。
プロ野球選手の平均身長と比べると上背は10cm以上短い。そのぶんリーチも短く、他の遊撃手なら届く打球も届かないケースも出てくるだろう。
小兵は俊敏性に長けるが、143試合の長丁場で守備負担大のショートだとガス欠するリスクも秘める。
改めて『170cm未満の小兵遊撃手NPB限界説』について考えさせられる場面だった。【終】
・・・というようなデータをまじえた試合評やコラムを『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2022』で綴っています。
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